「子ども・子育て新システム」の導入を阻止し、公的保育制度を守る行動計画
東京自治労連 中央執行委員会
- この秋が正念場 〜 「子ども・子育て新システム」に対するたたかい
7月の参議院選挙で改選議席を大きく減らしたにもかかわらず民主党内閣は、「地域主権改革」を強引に進めようとしています。「地域主権改革」は、自公政権が目指した「地方分権改革」と同じ「構造改革」路線に基づくものであり、憲法上の国の責任である社会保障におけるナショナルミニマムを崩壊させ、地方に責任転嫁するものとなっています。保育への影響も強く危惧されています。
「地域主権改革」とも連動し、政府は、自公政権時代の「新たな保育のしくみ」を基本的に引き継いだ「子ども・子育て新システム」基本制度案要綱を6月に公表、来年1月にも「新システム」の法案要綱を策定し、3月に法案を提出するスケジュールを打ち出すなど、極めて緊迫した情勢となっています。この秋が「子ども・子育て新システム」に対するたたかいの正念場です。
「子ども・子育て新システム」は、公的保育制度を根底から破壊し、契約による保育サービスの提供=保育の市場化を推進するものであり、公立保育所の大規模な解体に道を開くものです。また、社会保障の市場化を一層促進するものとなります。
職場を基礎に、他の社会保障分野の運動とも連携し、組織あげたたたかいで共同を大きく広げ、「子ども・子育て新システム」の導入を阻止しましょう。 - 公的保育制度を解体する「子ども・子育て新システム」
政府が、6月25日に公表した「子ども・子育て新システム基本制度案要綱」は、学童保育や子ども手当にも関係するものですが、とりわけ公的保育制度の解体の面で次のような重大な問題点を持っています。
(1)現在の公的保育制度−@)区市町村が保育の実施義務を負うA)国の最低基準で保育水準を確保するB)最低基準を守る財源を税金で保障する−をすべて解体し、保育を市場にゆだねるものとなります。
(2)区市町村は、「保育に欠ける」子どもの保育を実施する義務がなくなり、保育の必要量の認定と利用料補助をするだけになり、待機児対策など保育所整備義務もなくなります。
(3)保育所と幼稚園がなくなり、一体化した「子ども園」となり、「保育に欠ける」要件もなくなり、入所希望による「子ども園」と保護者が直接契約する方式となります。「保育に欠ける」要件による優先順位もなくなり、保護者は「入所先探し」を強制され、施設による選別の可能性も出てきます。
(4)「子ども園」は、学校法人、社会福祉法人、株式会社、NPOなど多彩な事業主体の参入が可能であり、特に介護保険や東京の認証保育所を踏まえ、株式会社の参入による保育サービスの量的拡大がねらわれています。そのために、国の最低基準はなくなり、より低い指定基準が可能となります。人員配置や保育室の面積などは義務的基準とするとしていますが、面積基準は待機児が多い都市部は自治体が独自に緩和することが可能としています。
(5)保育料は、現行の保護者の経済力に応じた負担から、保育時間に応じた応益負担になり(利用料補助により軽減)、認定された保育を超えた部分は高額の負担となります。
(6)「子ども園」は、公費抑制の流れの中で、「保育」という商品を提供しての経営となり、経費の圧倒的部分を占める人件費の抑制に向かうことになり、保育の質の点で構造的問題を抱えることになります。
(7)「効率化」を追求する極めて安易な「幼保一元化」のため、様々な時間帯の保育が混在し、集団保育、総合的保育、発達保障に大きな困難を持ち込むことになります。
(8)国は保育所経費の1/2を負担するとの基準がなくなり、区市町村への「子ども・子育て包括交付金(仮称)」となり、区市町村は自由に使え保育の水準が確保される保障がなくなります。
このような「子ども・子育て新システム」が強行されたならば、子どもの発達を保障してきた日本の保育水準が重大な後退を余儀なくされます。さらに、保育負担金の包括化や区市町村における財政危機の進行のもとで、公立保育所が全廃されていくことが危惧され、ひいては組合組織にも重大な影響を与えることになります。また、民間保育所の経営も圧迫されることになります。
さらに、公的保育が解体・市場化されることは、公的責任による福祉提供の最後の砦が崩されることであり、福祉全般に市場化が貫かれ、憲法が保障する国・自治体の責任による社会保障が一層後退することになります。 - 春闘期の運動の発展を秋からの闘いにつなげよう
東京自治労連では、保育闘争を運動の重要な柱として位置づけ、保育闘争委員会を設置して公的保育制度の解体を許さない運動を進めてきました。
今年の春闘期では、地域での共同を広げることを基本とし、学習・宣伝を軸に、自治体・自治体議会要請に取り組み、非正規労働者の組織化を広げることをめざしました。
(1)「保育水準の低下を許さない東京の自治体保育労働者運動実行委員会」が発足
産別を超えて東京の保育を守る自治体保育労働者の運動体として「保育水準の低下を許さない東京の自治体保育労働者運動実行委員会」を結成しました。その初めての大きな取り組みとして、2月11日午前に自治体保育労働者を対象とした「公立保育園を守る大決起集会」を開催し、三多摩地域を含め248名の参加で運動の重要性を意思統一、東京における自治体保育労働運動をさらに前進させる重要な一歩となりました。その後、実行委員会として、「新システム」批判のチラシを6月に作成し、保護者・住民宣伝に取り組みました。
(2)「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」としての運動
東京都保育問題協議会や福祉保育労東京地方本部とともに構成する「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」では、2月11日午後、私立保育所の労働者、保護者も含む保育関係者を対象とした「東京の子どもと保育を守る大決起集会」を開催し、465名の参加で成功させました。
保育全国署名は、東京で約19万筆、全国で292万筆を集約し、公的保育の拡充と直接契約・応益負担導入をやめること等を求める請願が、改選前と改選後の参議院本会議で採択される貴重な到達を築いています(衆議院は審議未了)。また、「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」として取り組んだ都議会請願署名は16万余を集約する大きな運動となりました。しかし、残念ながら、都議会厚生委員会での請願が不採択となっています。
(3) 学習活動、自治体要請
すべての保育関係の単組で学習会が旺盛に展開されました。制度改悪を中心とした情勢と保育内容に関わる学習を表裏一体のものとして取り組んだ単組が多かったことが大きな特徴です。
自治体当局への要請や区・市議会における意見書採択の取り組みについては、ほとんどの単組で実施されず、課題が残りました。保育を守り拡充する上でも重要な取り組みであり、すべての単組での実施が求められます。
(4)保育・子育て政策づくり
墨田・目黒・江東の3区職労に続き、足立区職労でも、保育・子育て政策づくりに取り組んでいます。墨田区では区議会自民党から懇談の申し入れを受ける、江東区では保育園の民営化担当部署が3月末で廃止となる、など行政や議会にも影響を及ぼしています。これらの到達点をもとに、全国的な保育制度の改悪を許さない運動と連携し、この秋、取り組みを一気に発展させることが求められています。
- 公的保育制度の充実を求める世論や動きを確信に
東京の2010年4月の待機児童数は8,435人で、前年より496人増加し、この3年間で1.8倍となっています。待機児童の解消は都民の切実な願いであり、認可保育園の大幅な増設が求められています。
私たちの運動もあり、江東区長が東京都の推進している認証保育所は「一時的な避難」であり、認可保育所の増設が求められていると明言するなど、公的保育制度を守り、保育所を増設すべきとの世論が次第に強まっています。
特別区議会議長会は8月末に東京都に保育所待機児の解消を要望しました。この中で「国が進めようとしている規制緩和による詰め込みでは、真の待機児童解消にはならない」とし、保育所増設が急務だと強調。都有地・都施設の提供や都営住宅への保育所の併設、公立保育所整備の土地代補助などの支援を求めています。また同時に、国に対して「国が公立保育所運営費補助を一般財源化したことにより、自治体財政が厳しいもとで多くの自治体が保育予算を減らさざるを得ない状況」と指摘し、公立保育所整備のための土地取得費への補助制度の創設及び一般財源化された公立保育所の運営費、建設費への国庫負担の復活を求めています。また私立保育園に対する運営費補助の拡充や、保育士等職員の確保・定着を促進するための人件費補助等、保育に関わる予算を大幅に増額することも要望しています。全国では、「子ども・子育て新システム」を批判し公的保育の拡充を求める意見書が、栃木県議会、福岡市議会、富山市議会、市川市議会などで採択されています。
待機児童解消のために認可保育所の増設をという攻勢的な運動が、行政や議会等にも理解を得られる客観的情勢があります。公的保育の重要性と「子ども・子育て新システム」の危険性を広め、認可保育所の増設等、公的保育の拡充を求める運動を展開することが求められています。 - 運動の基本
(1)公的保育制度を解体し、保育の市場化・産業化をすすめる「子ども・子育て新システム」阻止を東京自治労連の重要課題として職場のすみずみに周知し、組合員の総決起と共同の運動の前進で導入を阻止します。
(2)全国的な運動の重要な一翼を担い、保護者・幼稚園の利用者、福保労・保育労働者、民間保育園、地域住民を含めた大きな共同したたたかいを発展させ、自治体・議会に向けた取り組みを強化します。
(3)東京の保育を守り待機児童の解消を進める運動、最低基準の引き下げを阻止する運動、保育・子育て政策づくり、保育の質向上の取り組み、労働安全衛生活動の推進、自治体保育労働者の全国集会の開催など、すべての取り組みを「新システム」の導入阻止のたたかいにつなげながら進めます。
(4)このたたかいを通じて、組合組織の強化、非正規保育労働者の組織化、共同の拡大をめざします。 - 具体的な運動
(1)学習、集会、署名・宣伝活動の推進
1.学習の重視- 自治労連作成の「子ども・子育て新システム」批判リーフ(10月16日完成)、「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」作成ビラ等を活用し、保育職場での全組合員学習を徹底するとともに、単組段階の学習会の開催、庁内世論の喚起、保護者・地域住民・保育関係者も視野に入れた学習活動を推進します。
- 2の決起集会等を学習の場としても重視して成功させます。
2.節目となる集会を確実に成功させる- 「保育水準の低下を許さない東京の保育労働者運動実行委員会」による10月23日の学習決起集会(全体規模600人)を当面の重点として成功させ、11月14日の全国集会への最大限の参加と運動の発展につなげます。
- 政府に向けた最大の決起の場である「こわすな保育制度、つくろう保育所−すべての子どもによりよい保育を!大集会」(11月14日、保育制度の解体を許さず保育の公的保障の拡充を求める大運動実行委員会)に東京自治労連、単組をあげて1000人の参加をめざします。
- 「東京地方自治研究集会」等を意思統一と学習の場と位置づけ参加を組織します。
- 来年2月5〜6日開催の「自治体保育労働者の全国集会」を「新システム」導入阻止の重要な節目として成功のために全力を尽くすとともに、取り組みを通じて次世代を担う役員の育成と自治体保育労働者の共同を広げます。
- 東京自治労連として国会請願保育署名と都議会請願保育署名を20万筆を目標に取り組みます。
第一次集約11月10日 第二次集約12月10日 - 保育職場のある単組では、以下の取り組みをめざします。保護者、保育・福祉関係団体、地域の労組、広範な住民との対話を進め、署名への協力を要請します。また、各地域で福祉保育労などと協力しながら、全ての保育所への訪問や、関係資料の郵送などに取り組みます。
- 「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」のチラシを活用し、保育所門前、駅頭、商店街などで、宣伝署名活動に取り組みます。
- 地元選出の国会議員・都議会議員と懇談し、請願署名の紹介議員になってもらうよう要請します。自治労連等の提起の対政府行動、国会行動・議員要請に取り組みます。
- 保育関係者の中に共同を思い切って広げることをめざします。自治労連の提起を受け、新システム反対の広範な共同を追求し、アピール運動や新聞意見広告運動を進めます。
- 東京地評、地域労連、東京社保協、地域社保協等に「子ども・子育て新システム」とのたたかいの位置づけの強化を求めるとともに、後期高齢者医療制度、介護保険、障害者自立支援法などの社会保障の他の課題との連携をめざします。
(2)東京都と区市に対する取り組み
- 東京都に対して、待機児童の早期解消のために、公立保育園の新設、増改築を促進するよう、公立保育園建設補助制度など新たな制度の創設を求めます。
- 各区市当局、区市議会に対しては、「子ども・子育て新システム」・最低基準引き下げ反対で、国に対する要望・意見書を出すように要請・請願を11月めどに一斉に実施します。
ヒナ形は別紙参照。
(3)待機児解消の取り組みと「子ども・子育て新システム」反対のたたかいの結合
保育に対する要求が切実さを増し、社会的広がりをもってきているもとで、認可保育園の増設による待機児解消の攻勢的運動を区市、都、国に向けて展開し、保護者の保育要求と「子ども・子育て新システム」反対の要求の結合を重視して取り組みを進めます。
(4)保育・子育て政策づくり
地域の実態に即し、子ども保護者の要求に応える自治体保育・子育て施策の拡充を進めるために、保護者・保育関係者とともに保育・子育て施策づくりを重視して進めます。 - 体制
1.東京自治労連として、保育闘争委員会で闘争の到達点を確認し、課題の整理を行うとともに、毎月の拡大中央執行委員会で意思統一を行います。
2.各単組では、保育闘争委員会を設置するなど、単組あげた闘争推進を追求します。 - 主な日程
9月17日 「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」の署名スタート集会(済み)
10月15日 10・15都庁前総決起集会
10月23日 「保育水準の低下を許さない東京の保育労働者運動実行委員会」の決起集会
11月 3日 「第8回東京地方自治研究集会」
11月14日 「こわすな保育制度、つくろう保育所−すべての子どもによりよい保育を!大集会」(「保育制度の解体を許さず保育の公的保障の拡充を求める大運動実行委員会」)
11月14日 自治労連保育意思統一集会
11月15日 「全国 大運動実行委員会」国会議員・省庁要請行動
2月5〜6日 「自治体保育労働者の全国集会in東京」
以上