コロナ禍で今あらためて「公衆衛生としての保健所の役割」を 11・21 公衆衛生部会学習交流会
新型コロナ感染の拡大の中、公衆衛生行政の重要性、保健所と保健師の役割などが浮き彫りになっています。東京自治労連は、11月21日(土)に学習会を開催し、この間、保健所が減らされ機能的にも後退している現状を学びあいました。当日は、リモート11人、本部会場11人 合計 22人の参加でした。
前段、江東区職労の林恵子さん(元・江東区保健師)が講師となり、戦後の新憲法の下で公衆衛生の第一線機関として設置された保健所の歴史から、保健所法の廃止・地域保健法の制定、コロナ禍に立ち上がる自治体の状況、職場実態など報告されました。
―保健所は、昔も今もまさに現場の労働者の努力で公衆衛生の第一線機関としての機能を担っている・・林恵子さん―
新憲法の下で、保健所は国民の大きな期待をギュッと詰めてあらたに設置されました。しかし国の経済成長優先政策、行政の徹底したリストラ政策により、わずか数年で保健所黄昏論を唱えられ保健所数の大幅削減・機能の縮小・専門職員の削減が行われてきました。
現在のコロナ禍で、国は対策の多くを保健所にゆだね、保健所は医療機関としても検査機関としても役割を求められ、必死に住民の健康を守ろうと対応していますが、もはや機能不全になっています。
―住民のいのちと健康に責任を持ち、保健所が役割を果たせるように体制強化を図ることは喫緊の課題―
コロナ禍に立ち上がる自治体・保健所の活躍は、新聞やTVなどで報道されています。
世田谷区では、「PCR検査センター」に大量検査が可能なオートメーションの検査機器を設置し、PCR検査の対象を社会的検査に拡大しています。
杉並区では、区立の「衛生試験所」をオープンし、そこでPCR検査を開始しました。職員は、衛生監視職や食品衛生監視から課内異動で対応していますが、来年度に向けた増員を要求しています。
墨田区では、保健所の検査室を維持してきたことから保健所自ら集団検査に取り組んでいます。約2時間で最大100検体のPCR検査ができる最新型の危機を導入し、国立感染症研究所の指導を受けて、臨床検査技師を中心に実施しています。また、検査体制が確立してきた現状においては、陽性者の早期把握のために区内のコロナ陽性者の受検動向を検証し、住民意識のゆるみ対策を検討しています。
―利益と効率を優先する新自由主義を基本とする行政から、 住民のいのちを守ることを優先する保健所・公衆衛生行政に転換するために―
東京のような大都市では、医療機関が増加した半面、保健所数は大幅に減らされており、コロナの前線を保健所に負わせてきた体制には初めから困難がありました。とりわけ東京都が問題だと思います。大学病院を含めて多くの病院がありますが、感染症の門番役を担う医療機関はありません。特別区の人口は増えているのに、保健所は各区で1つに集約されているし、人員も緊急事態に対応できない数になっています。
感染症に強い社会とは、国に依存しすぎても、医療に依存しすぎても、専門家に依存しすぎても実現できるものではありません。社会全体で立ち向かう体制を作ることにあります。それは、自治体と住民が協同の公衆衛生体制を持てるかどうかにかかっています。
参加者からは、【保健所は、個々の頑張りで保たれている様なもの】と当局から言われているが、ストレスが多く、病欠になる保健師も多い中、人員の補強、残業代を支払うなど体制づくりが急務である。区民の健康を保障することができない。有事にもすぐに対応できる余裕を持った保健師数の配置が必要だ。との発言が相次ぎました。
―住民の声を聞き、自治体の実態を理解してもらうことの重要性を再確認―
自治労連は、「【保健所】感染拡大期における職場実態に関する調査」を行い、それを基に作成した「新型コロナウイルス感染を止めるためPCR検査拡大と保健所の体制強化を「住民のいのちとくらしを守り切る」ための提言を作成しています。いま、保健所に対する住民の意見を聞く中で、自治体のおかれている実態を住民に理解してもらうことが必要。住民のために保健所の拡充のためにも急務な課題ではないかと今後の方向性を示されました。