1. |
はじめに憲法と地方自治、自治体労働者について考えてみましょう |
(1) |
憲法について、あなたはどのように受け止めていますか?
・国民が守るもの ・政府などが守るもの ・その両方
*近代憲法は、立憲主義といって「国民の国家に対する命令書」です。 |
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憲法9条の原点は? |
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憲法9条は、二度と戦争をしないことを世界に誓うとともに、「戦争・核兵器と人類は共存できない」との広島・長崎の被爆の体験が原点になっている。
(1946年11月内閣発行の「新憲法の解説」では、「原子爆弾の出現は・・・文明が戦争を抹殺しなければ、やがて戦争が文明を抹殺するであろうと真剣に憂いている」と書いている) |
(3) |
憲法が第8章地方自治を設けているのは? |
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戦争放棄(9条)、人権保障(25条など)をくらしの中で具体的に保障するため
自治労連と住民団体が作成した「地方自治憲章案」は、「憲法が保障する基本的人権保障は、地域での人びとの暮らしと営みのなかにこそ具体的に保障しなければなりません。それは、すべての人びとが、地域で生まれ、育ち、地域で人間としての営みを行い、その人生をすごすからです」として、「ここに憲法が基本原則の一つとして地方自治の保障を掲げるゆえん」としている。 |
A |
自治体は、国の政策の影響や自治体当局の政策的立場から住民の要求と対立したり、密室での官僚的対応をさせられる場合が多く、「地方自治の本旨」(住民自治・団体自治)と「国の支配機構の一つ」という二つの関係をしっかりと確認することも重要。
*沢内村の深沢村長の発言(2008年6 月7 日〜8 日に開催された「第28回自治体にはたらく青年のつどいIN 岩手」での旧沢内村健康管理課主幹の照井さんの記念講演から)
「65歳以上の老人の医療費の無料化について、県から「国民健康保険法の違反だ。そんなことはだめだから直せ」と呼びつけられた。そのことを深沢晟雄に言うと、「国民健康保険法に違反していても憲法には違反していない。国は責任を持って国民の健康を守る義務がある。法廷でたたかうことになっても私は退かない」と、断固として、村の人の病院だから村で守るんだと、そういう決意でおりました。今、深澤晟雄の政治理念が問われるような時代になりました。
●「いのちの山河」のキーワードは「行脚と対話」 |
B |
自民党新憲法草案は、前文、9条以上に第8章を大幅に「改訂」し、「住民の参画」「住民の負担の義務」「国と地方自治体の役割分担」「広域地方自治体」などを明記し、95条を削除している。
「地方分権」と言われながら、集権化がすすみ、国の政策がストレートに押し付けられてきた。民主党の「地域主権」も要注意。ナショナルミニマム保障の国の責任を放棄し、規制緩和を促進。
日本国憲法で主権を持つのは国民、住民であって「地域」「行政体」ではない。 |
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資料 1 |
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(4) |
公務員の役割は? 15条、99条はなぜ設けられたのでしょう。 |
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*国や県からの仕事や首長(上司)の指示のとおりに仕事をすることが公務員だと思っている(そう思わされている)人もいるのでは・・ マニュフエスト型の選挙で顕著に。 |
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憲法第15条(全体の奉仕者規定)、地方公務員法30条(服務の根本基準)により、地方公務員は全体の奉仕者として服務しなければならない。戦前天皇の官吏として位置づけられてきた公務員が、国民主権を明確にした憲法のもとで、国民全体のために奉仕すべき職務を担うことを意味する。 |
A |
権力を行使する側にいる公務員に対する縛りとなっているのが第99条の憲法擁護尊重義務です。
@とAを具体化したものが、宣誓書(服務の宣誓に関する条例)。
「私はここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓います。私は地方自治の本旨を体するとともに、公務を民主的且つ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、全体の奉仕者として、誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います。」 |
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資料2 |
B |
したがって自治体労働者は、憲法を守り、いかし、憲法の流れに沿わないことはチェックし、すべての国民・住民の生存権・発達権を担い、平和と核兵器廃絶のため努力し、くらし、地域を守る使命が。
しかし自治体が国の出先機関としての側面をもち、自治体労働者の労働基本権が剥脱・制限されているもとで個人的な努力には限界があり、労働組合の団結した力が必要になる。 |
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(5) |
なぜ労働組合は平和や核兵器廃絶の運動をするの? |
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よく「労働組合がなぜ平和や核兵器廃絶などの運動をするの?」「労働者の賃金や権利などの要求実現が労働組合の役割ではないの?」などの声も出される。働く者が安全に安心して働くことのできる環境をつくること、生活と雇用を守ることが労働組合の役割。人間が豊かに発達する環境を作ることとも結びついています。こうした願いは戦争のもとでは実現できない。
先輩たちは第二次世界大戦を通じて苦い経験をしている。ですから、教職員組合は「教え子を再び戦場に送らない」、自治体労働組合は「二度と赤紙は配らない」をスローガンとしているように、「平和なくして労働運動はない」「平和があるからこそ雇用もくらしも労働運動もある」と考え、核兵器廃絶と平和で公正な社会を求めるとりくみを労働組合運動の中心的な課題としているのです。 |
2. |
次に、核兵器廃絶の運動とNPТの課題などを考えてみましょう。 |
(1) |
人びとの行動と審判で、世界は大きく変わりつつある |
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この一年間の決定的な変化は、「核兵器は安全の保障。必要なのは核不拡散」から、「武力や脅しではダメ。核兵器をなくすことが真の安全保障」ということが国際的な合意となったこと。 |
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「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として米国には行動する道義的責任があります」
昨年4月5日にオバマ大統領のプラハ演説は、核兵器の問題をめぐる世界の雰囲気を大きく変えた。
世界はこの演説を歓迎。ロシアも「核兵器のない世界」をめざす態度を確認。 |
A |
変化を作りだしたのは、人びとの行動と選挙での国民の審判。ブッシュ政権が強引にすすめた「力の政策」、とりわけイラク戦争の破たんと反戦運動とも結んだ世論の力。
また、キッシンジャーら4人の米国元高官は、「核兵器がますます広範囲に入手可能となるなかで、核抑止力の有効性はますます低下する一方で、危険性が増大している」と認識し、「世界の脅威である核兵器を最終的になくすための全地球的な努力」を呼びかけたこと。 |
B |
イラク反戦で世界が燃えた2003年2月15日から7年目の2月15日、世界250の反核平和団体は、オバマ大統領と世界の指導者に、核兵器廃絶のためにただちに交渉を開始するよう求め、世界キャンペーンの開始を宣言。スローガンは「平和と人間のニーズのために、今こそ廃絶を!」 |
C |
日本国内でも署名が約550万筆に。全労連100万筆、新婦人100万筆を達成。なかでも自治体首長や議長の賛同(750人の首長と515人の議長)と自治体ぐるみの署名運動の広がりが特徴。
(3月16日400万筆の署名を船便でニューヨークに送りました。) |
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(2) |
しかし現実は、「核抑止力」への固執が核兵器禁止・廃絶を妨げている
核兵器禁止・廃絶を妨げているのは、核兵器こそが「敵の攻撃を思い止まらせる」「安全を保障する」という「核抑止力」信仰。脅された側も核を保有する歯止めのない拡散につながる。普天間基地問題や核密約問題でも「抑止力」の呪縛が背景にある。 |
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@ |
昨年の国連ではアメリカは核兵器の使用禁止を求める決議に反対。オバマ大統領も昨年11月、日本での演説で世界に核兵器がある限りアメリカは「強力で効果的な核抑止力を維持する」と明言した。
オバマの優先課題は不拡散であり廃絶ではない。 |
A |
また9月15日安保理で鳩山首相は、(ア)核兵器を使われた側の道義的責任として非核の道を選んだこと、(イ)核兵器廃絶の先頭に立つこと。(ウ)非核三原則を堅持することを明言。しかし日本政府が提出した決議案「核兵器全面廃絶の新たな決意」では、核兵器禁止の必要性についての言及を避けた。 |
B |
今年1月19日には、キシンジャー氏ら4人が「核抑止力の維持」を強調し、核兵器開発施設への予算配分と核兵器近代化措置への支援を呼びかけ、オバマ大統領も、社会福祉予算を凍結する一方で、核兵器の「信頼性」確保の予算増10%を提案し、核兵器インフラの近代化と拡張のため20億ドルの追加予算を要求した。核が「テロリストの手に落ちる」危険があるなら、なおさら「核兵器全面禁止」だ! |
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(3) |
世界の大勢は、「核兵器禁止・廃絶条約」の制定 |
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核の拡散を防ぎ、テロなどに悪用されないためなら、なおさら核兵器を全ての国の合意として禁止し廃絶すべきだ。世界の大勢はすべての国に等しく適用される「核兵器禁止・廃絶条約」の制定。 |
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2008年10月、国連の潘基文事務総長は「すべてのNPT締結国、とりわけ核保有国に、核軍縮・廃絶にいたる効果的措置についての交渉を行うという条約上の義務を果たすよう求める」と演説。 |
A |
09年9月メキシコでの国連NGО会合(55カ国340のNGО代表の集い)でも、「核兵器(禁止)条約の交渉開始を求める決議」を採択。 |
B |
09年国連総会での「核兵器禁止廃絶条約の交渉開始」を求めるマレーシア案への賛成は124カ国。しかし表決には重要な特徴=核保有国の中国に加えて、インド、パキスタン、北朝鮮、イランなど核拡散問題に直接関わる国々が賛成票を投じたこと。日本は棄権。
これは、現在の核不拡散体制を不満とする国も、核兵器禁止なら一致できることを示している。 |
C |
アメリカの同盟国のノルウエーは、「次回5月のNPT再検討会議が逆転することのできない、いかなる曖昧さのない核兵器廃絶に向かって明確な道筋を描くべきだ」と国連総会で演説。
NATО内部でも、ドイツ、ベルギー、オランダなども米軍の核兵器撤去を求める動きが強まる。 |
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世界的な動員を! そしてNPT再検討会議最終日までとりくみを |
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NPT再検討会議最終日の2010年5月28日までの約3ヵ月間、世界中でピープルズ・パワー(国民の力)を実践し、核兵器のない世界が可能であり、核保有国に対し、NPТ条約第6条の義務を履行し、核兵器廃絶条約の交渉を開始するよう要求しましょう。
2000年の時も激論が続き、最後には決裂寸前となり、1日延ばし、ついに核兵器国側が妥協して「核軍縮に通じる、自国の核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束」の1行が最終文書に入れられた。 |
A |
ニューヨークの国際行動(4月30日〜5月2日)は、「核兵器廃絶」と合わせて、イラク・アフガン反戦、地球環境、新自由主義からくらしと雇用を守ることなどを合流させる。5月2日には数千人の人々がマンハッタンを国連に向かって行進します。唯一の被爆国日本の動きは世界を動かす。国連の前を署名、タペストリー、折鶴などで埋め尽くそう。ニューヨーク市民にも署名を広げよう。 |
B |
日本国内でも5月6日から国民平和大行進が夢の島をスタートする。5月28日まで国内でも署名を広げましょう。
核拡散防止条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty、略称:NPT)とは、1970年に発効。 |
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核拡散防止条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty、略称:NPT)とは、1970年に発効。核兵器独占条約。米、ロ、英、仏、中の5カ国を「核兵器国」と規定し、世界を「核兵器国」と「非核兵器国」に二分。国連加盟国の内、イスラエル、インド、パキスタンと脱退を宣言した北朝鮮の4カ国を除き全ての国が参加(189カ国)している。その大多数は核兵器国が6条の核軍縮義務を40年間努力してこなかったことが核の拡散をまねいていると核兵器廃絶を要求している。(不平等条約だが核兵器国を縛る部分もある) |
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C |
歴史を作るのは人々の意志=署名は一人ひとり対話して取り組まれる草の根の力 |
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(ア) |
ストックホルムアピール(1950年3月19日 朝鮮戦争前夜「核兵器の完全禁止」を求める署名。6392805筆の力。キッシンジャー氏は「あの広がりのため原爆は使用できなかった」) |
(イ) |
1954年3月1日アメリカのビキニ水爆実験に抗議する草の根の署名(1955年8月15日までに、当時の有権者過半数の3200万筆が集まり、1955年8月の原水禁世界大会の開催、9月の原水爆禁止日本協議会の結成につながる。)*核密約問題=国民の反核感情よりも米国を優先した結果(有識者委員会報告) |
(ウ) |
1985年2月「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名(7万発の核兵器の存在の中で、核兵器廃絶は現実的でないという世論の中での署名。2000年国連総会に提出。国連事務次長の短いスピーチ「50名の代表が来ているが、その背後には6千万人の署名がある。あなた方の決断を求める」があり、国連総会として「核兵器廃絶」が決議された。) |
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3. |
自治体労働者、労働組合の出番。学習し、対話と共同を広げて |
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だれもが共感し、だれもがとりくめる署名。職場・地域に広げよう! |
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@ |
「核兵器のない世界」署名は、だれもが共感でき、だれもがとりくめる国民的な署名。とりくみの幅を広げ、発想を転換して多数派の時代にふさわしい新しい取り組みを。
3人の組合員の鹿児島公務公共一般出水分会は、要求の実現と仲間を増やしたいとの思いから、人口5万人の市で5千に目標を掲げて署名運動を始め、地域公民館や自治労職場にも訴えて現在2000筆に。
上部団体の違いを超えて呼びかけること、管理職なども含めた職員に訴えることが重要。 |
A |
すでに740を超える自治体首長も署名(東京は豊島区・千代田区、武蔵野・西東京・清瀬・狛江・国立・東久留米・小平・稲毛・多摩・羽村・東大和・東村山市、日の出町、桧原村)。「住民の安全」を守るということから、 |
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(2) |
自治体・地域ぐるみのとりくみも |
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宮崎県都城市、千葉県四街道市、岡山県笠岡市では、自治体・地域ぐるみのとりくみが進んでいる。都城市では地域公民館単位に自治会の役員さんともよく相談する中で、数千人の班長さんが行動し人口17万の町ですでに8万筆の署名が寄せられた。首長とともに、地域ぐるみのとりくみも進めよう。 |
おわりに |
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唯一の被爆国日本の動きは世界を動かす。ニューヨークへ署名やメッセージを持って行こう。代表団の方々と送り出す組織では、ニューヨークでのパフオーマンスなども工夫しましょう。
日本で1200万を超える署名が集まり、世論が高まれば、日本の政治、経済、暮らしでも大きな変化につながる。7月の参議院選挙は、新政権の動向(民主党が圧勝すれば改憲と道州制が一挙に進む危険)ともかかわり大変大事な選挙。
国連は「戦争の惨害から将来の世代を救う」ことを創立の目的にしている。特に青年は「将来の世代」の代表として署名などのとりくみを大きく広げよう。 |