第12回東京地方自治研究集会 総括
2018年12月12日
第12回東京地方自治研究集会 第7回実行委員会
はじめに
第12回東京地方自治研究集会を12月9日(日)、「憲法を守りいかし、地方自治がいきるまち東京を」をテーマに、明治大学リバティータワーで開催しました。
安倍内閣が国会も国民をもないがしろにし、まともな議論をせずに数を力に悪法を次々と強行し、憲法9条改憲に執念を燃やしており、また、都政においては小池都知事が情報公開、築地に市場機能を残すなどの公約を投げ捨て、豊洲新市場の開場と築地市場の解体を強行するもとでの開催となりました。
今集会は午前の全体会、午後の分科会・講座で延べ約800名の参加となりました。実行委員会に参加する58団体以外にも多くの団体、個人・議員のみなさんにご参加いただきました。参加者のうち20代・30代の参加が1割を超え、今後につなげる展望を切り開きました。
午前中は本集会実行委員長の黒田兼一明治大学教授のあいさつ、実行委員会事務局長による基調報告、京都大学の岡田知弘教授の記念講演を行いました。午後は8分科会と1つの講座で、活発な討論が行われ、住民のいのちやくらし、営業や労働を守りゆたかに発展させる行政のあり方などについて深めあうことができました。
今集会には多くの参加者の他、多摩市長からもメッセージをいただき、憲法をいかし地方自治を守り発展させるために開催された本集会への期待が寄せられました。
58団体による実行委員会、90名の分科会運営委員を中心に準備をすすめた集会
第12回東京地方自治研究集会は、58団体で構成する実行委員会、うち副実行委員長を選出いただいた6団体、分科会の準備にあたった90名の運営委員のみなさんによって準備されました。東京自治労連が事務局団体となり、2017年10月6日に副実行委員長6団体による打ち合わせ会議を行い、実行委員長をはじめとした役員体制、基調報告起草委員会、開催日、開催会場、さらには集会や基調報告の構想(案)について確認しました。
第1回実行委員会を2017年11月22日に開催し、実行委員会・基調報告起草委員会の体制、開催日時、開催場所、記念講演者、分科会等の開催について確認しました。その後2018年11月7日まで6回の実行委員会を開催し、集会終了後に集会総括の第7回実行委員会を12月12日に開催しました。
メインスローガンについては第1回実行委員会時から安倍9条改憲の動向が極めて不安定なため、多くの議論を要してきましたが、第5回実行委員会(7月25日)で確定しました。
基調報告の作成にあたっては、副実行委員長選出の6団体の委員で構成する基調報告起草委員会を計6回開催し、起草委員以外の実行委員のみなさんの力も借りて作成してきました。作成前の骨子(案)、及び作成途中の素案について3回、実行委員会で議論をいただき、11月7日の実行委員会で最終的に基調報告を確認しました。
同時に分科会の準備は9つの運営委員会を随時開催し、それぞれ3〜5回の運営委員会、延べで31回の運営委員会開催となり、当日の運営も含めた分科会の成功の保障を築いてきました。分科会運営委員会は当日の運営にとどまらず、各分野の実態、運動、政策について交流し深めることとなる貴重な場となっています。
2020年東京五輪・パラリンピックについては、多くの分科会にもまたがることとなるため、ひとつの分科会ではなく、プレ企画として実施することを確認し、「オリパラ都民の会」と共催で10月13日に開催しました。当日は80人が参加し、黒田東京自治研集会実行委員長の開会のあいさつ、田原淳子国士舘大学教授の講演に続いて、2つの報告の後フロアー発言4本と開場からの発言があり、大きく成功しました。
東京の各団体による運動と教訓、政策の集大成となった基調報告
基調報告の作成にあたっては、各分野の運動を専門的に担ってきている多くの団体による、情勢分析と問題点の明確化、運動の経験と教訓、これらをふまえて政策等が総結集されています。膨大な基調報告となっていますが、必要な分野の記載部分をひもとくことによって、運動の方向や取り組みのヒントになることは間違いありません。各地域での活用も含めて、運動をすすめようという住民のみなさんの参考になるものです。
自治体をめぐる状況については「骨太方針2015」から強く打ち出されている「公的サービスの産業化」路線に引き続き、「自治体戦略2040構想研究会」第二次報告によって、自治体の機能の縮小と圏域行政の拡大、2層制の変質、そして道州制を視野に入れ、事務事業の徹底したAI化、IoT化、ロボット化、さらには産業化をすすめ、自治体の役割を劇的に変質させるねらいについて示すこととなりました。
また都政のこの間の動向、築地市場や東京五輪・パラリンピック問題での公約違反と横暴な小池都政の動向についても示しました。それにとどまらず日本経済のエンジンとして国家戦略上の東京の位置づけについても、小池都政が打ち出している政策、計画にもとづいて明らかにしました。
安倍政権のねらいと自治体戦略について明らかにした記念講演
岡田知弘京都大学教授の記念講演は、「地方自治・地域再生をめぐる対抗軸と展望―東京都政を住民の手に取り戻すためにー」と題してお話しいただきました。
はじめに安倍政権のねらいと矛盾、運動の前進と展望について明らかにし、次いで安倍政権下の地方制度改革の流れを明らかにされました。究極の「構造改革」としての道州制のねらい、自治体消滅論を基本とした増田レポートに基づく地方制度改革と地方創生、その中における国家戦略特区の焦点である東京圏の位置付け、「骨太2015」で突き出された「公共サービスの産業化」政策と「公共サービスの私物化」、さらに根本的に自治体の変質へと突き進む「自治体戦略2040構想」について明らかにしました。
こうしたもとで地方制度改革をめぐって新たな対立軸が生まれていること、住民が主体となる基本的人権と福祉の向上をめざす自治体や地域の再生の方向などについても示されました。
全体として現在の地方自治をめぐる状況が理論的にも整理されて、安倍政権のねらいが全体のものとなり、寄せられたアンケートではほとんどが「大変良い」「良い」という感想でした。
活発に議論された8つの分科会、自治体のあり方について学んだ講座
今集会の分科会は、第1分科会「地域医療構想と公的医療の役割」44名、第2分科会「我がこと丸ごと共生社会のねらいと課題」23名、第3分科会「セーフティーネットのあるべき姿」31名、第4分科会「保育・子育て」〜基準緩和で東京の“保育の質”を守れるのか〜95名、第5分科会「中小企業・中小商工業、地域経済」24名、第6分科会「いつまでも住み続けられる私たちのまち東京」58名、第7分科会「どうなる!憲法の行方―平和憲法をいかす自治体の役割―」48名、第8分科会「子どもたちの生活と発達を保障するために、学童保育・小学校の連携など最善の居場所づくりを」38名、講座「公共サービスの産業化で問われる自治体のあり方」50名となりました。
各分科会・講座とも運営委員のみなさんの努力と参加者の積極的な参加により成功を収めることができました。
都政・自治体の民主化に向けた私たちの課題
私たちが日常生活や労働の中でも矛盾を感じていることが、都政や市区町村行政の中で解決すべきこと、国政を大きく変革しなければならないことなどが明確になりました。この点をふまえれば、2019年はいっせい地方選挙、参議院選挙が行われることとなっており、これらの選挙の争点に第12回東京地方自治研究集会で明らかになった点を争点化することが重要です。
第11回東京地方自治研究集会から今集会までの2年間で、野党共闘、市民と野党の共闘、市民連合の拡大など運動の大きな前進がありました。ますます立憲主義に基づき民主主義と地方自治の前進をつくる展望が広がっています。
市区町村の民主化にあたっては、それぞれの自治体の予算分析などを欠かすことができません。自治体の予算は当該自治体の政策によって大きく変わることは自明のことであり、予算を見て、日常の行政の政策を見れば、民主化の方向性は自ずと見えてきます。
今集会で得た多くのものを、それぞれの地域に持ち帰って共有化するとともに、分野ごとの運動をつないで大きな共同の輪をつくることが必要です。こうした中で自治体民主化、都政民主化、そして国政民主化へとつなげていこうではありませんか。
第13回東京地方自治研究集会に向けて
私たち実行委員会は、第12回東京地方自治研究集会の成果をふまえ、地域・職場で運動と共同を広げ、具体的な前進も築きあげながら、オリンピックが開催される2020年開催予定の第13回東京地方自治研究集会の成功につなげていきます。
このため、集会実行委委員会は継続することとし、第13回東京地方自治研究集会に向けた第1回実行委員会開催までの間、休会することとします。
以上