自治研活動の取り組み方針
2015年9月9日
東京自治労連中央執行委員会
1.自治体職場をめぐる状況
自治体職場は自治体独自の業務と同時に、国の制度に伴う業務を行っています。この間、生活保護制度、医療保険制度、介護保険制度など、多くの制度改悪が国政の段階で強行され、各自治体でそれらに基づく実務を行うこととなっています。さらには内閣府の市場化路線によって、自治体職場の委託が狙われ、窓口職場もその例外ではなくなっています。とりわけ「骨太方針」などでは「公務の産業化」「公共サービスの産業化」を打ち出し、公務労働を国内産業として儲けの対象とすることが強く打ち出されており、これまでの財政等を理由とした委託・民営化から大きく踏み込んだ攻撃が始まっています。
産別選択間もない20年前とは自治体における施策が大きく変容していることは明らかです。あわせて公務員人件費削減攻撃のもとで、各自治体における人員は大幅に削減されています。国の制度改悪、財界の攻撃による労働者の生活悪化、そのもとでの自治体に対する要望の多様化、度重なる人員削減、「能力・業績」評価と上意下達の行政運営などによって、職場はますます繁忙化し、集団的な対応が薄くなり、個人責任制が強まる傾向となっています。
このようなもとで自治体労働者の働き方、仕事のやりがいへの影響は大きく、日々の目の前の業務をこなすことで精一杯という状況が蔓延しています。具体的な住民や利用者への対応についても多くの困難なケースを抱えざるを得なくなっています。
とりわけ住民の困難が自治体の具体的業務の難しさに反映する職場では、職員が定着しない傾向もあり、行政としての蓄積が難しくなる一方で、業務のマニュアルをすすめざるを得ない状況も生まれています。こうしたもとで住民の安全をまもり、健康、福祉の増進で安心をつくる本来の自治体業務からのずれが生じる事態も少なからず起こっています。
業務の繁忙化と個人責任制が浸透する中で、職場の協力・共同した運営、日々の業務のあり方についての検討・研究も難しくなっているのが現状です。
このもとで職場での不満や不平がたまり、相談し解決する方向性を見いだせない状況に追い込まれる中で、仕事のやりがい、働きがいを見失いがちとなる状況も生まれることもやむを得ざることでもあります。
2.自治体労働者の役割と働きがい
自治体労働者は「住民のためにいい仕事がしたい」という要求を基本的に持っています。東京自治労連の「要求・職場アンケート」では、「仕事のやりがい」が「ある」と答えた人は全体の7〜8割に上っています。
東日本大震災の被災地の職場で奮闘した、自治労連のなかまが記した「3・11岩手 自治体職員の証言と記録」からも自治体職員はどんな役割を持って、どのような使命感で奮闘したかがいきいきと示されています。このようなときこそ自治体の役割や自治体労働者のあり方が問われ、その重要性をあらためて認識されたことがわかります。
また、東京自治労連が行った「若手保育士の連続講座」で学んだ保育士たちの感想(別掲1)からも、自治体労働者として「よい仕事がしたい」という要求が見て取れます。
2015年6月に開催した自治体「構造改革」に反対する闘いの交流集会では、進行する業務委託や民営化のもとで自治体労働者のそれぞれの業務における専門性、住民との共同、議会勢力との連携など、この間の教訓を共有してきました。あらためて職場での自治研活動、地域で共同した自治研活動の重要性を確認しました。感想では「住民共闘の必要性が再認識された」「職場での活動なくして闘いもなく、住民への訴えもないと思いました。」などが出され、職場の自治研活動と地域での自治研活動、住民共闘の重要性を共有しています。
3.あらためて自治研活動の重要性について
政府・財界の公務部門への攻撃が新たな段階に進もうとしており、現在でも業務の困難性が増し、人員が削減され、ますます職場が繁忙化する中で、あらためて自治研活動の重要性について確認することが重要です。
自治体の基本的な2つの性格−「国の出先機関として住民支配の業務を執行する」という側面と「住民の安全を守り、健康、福祉の増進など住民生活に不可欠の共同の業務を執行する」という側面−を自治体労働組合としてあらためてふまえ、自治体労働者としてのすすむべき立場を確認することが重要です。
「やりがいのある仕事をしたい」、「住民のためによい仕事がしたい」という要求を持ちながらも、業務の困難性の増大と人員削減によって不満や不平が高まっており、この解決に向けた取り組みは職場活動の重要な課題です。グチを出し合い困難の原因と解決の方向を見いだすことが職場活性化の鍵になることは明白です。
このために私たちは財界・政府の攻撃である委託・民営化をはじめとした自治体「構造改革」との闘いをすすめていますが、その闘いの基本は、自治体労働者の要求と住民の要求を統一して闘うことです。そのためには「住民の安全を守り、健康、福祉の増進など住民生活に不可欠の共同の業務」を推進する立場で、従事している業務を見直し、分析し、住民と共有することが重要です。
このことは自治体労働者の要求実現に結びつき、民主的自治体建設に欠かせないもので、まさに自治体労働組合の役割の根幹と言えるものです。
あらためて自治研活動は何かを整理すると以下のようになります。
(1)第一に自治体労働者と住民の要求を疎外している原因とその打開の方向を明らかにする活動であり、自治体労働者だからこそ自らの業務に基づく活動です。この取り組みが職場自治研活動として重要な点です。このことが職場の切実な要求に応える重要な職場活動でもあります。
(2)第二に自治体労働者の働きがいを取り戻す活動です。本来住民を守るべき制度が制度改悪によって、住民を苦しめる業務に携わらなければならないこともあります。職場自治研活動で明らかにした原因と打開の方向を住民とともに考え共有化し、改善をめざす運動の方向性を明らかにして確認することが重要です。この取り組みが地域自治研活動であり、住民とともに自治体労働者の働きがいを取り戻す運動をすすめる基本となります。
自治研活動をすすめ、住民共闘が発展することによって、住民本位の行政に向けた闘いが発展します。そのことは自治体の予算を民主的に変革することにつながります。さらにその行政を保障する執行体制の確立が欠かせないことも明らかであり、住民本位の行政を求める闘いが執行体制の確立を求める運動と結合します。戸籍窓口委託の一部直営化によって、人員を戻さざるを得なくなったことは、端緒的ではありますが、具体的な現れです。自治研活動を単組の運動の基本に据えることが重要です。
4.すべての単組で自治研活動の具体化を
自治研活動をすべての単組ですすめるために以下の取り組みを行います。
(1)今の職場の状況、仕事のあり方、自治体行政のあり方について執行委員会で議論を
あらためて各職場の状況や仕事のあり方、さらには自らの自治体行政のあり方について執行委員会で議論し、変革の方向性について確認をします。それぞれの職場の現状を出し合いながら具体的に議論を行います。
(2)予算人員、委託民営化阻止、住民施策の充実の観点から自治研活動の必要性を学び議論を
予算人員闘争、委託民営化阻止、住民施策の拡充をめざす自治体労働組合として、自治研活動がいかに重要であるかを学び、議論し、意思統一することが重要です。自治労連都職労が1995年に発行した「自治研活動の手引き」、自治労連の「初めての『自治研』」を学習し、それぞれの単組、支部、職場にあわせた議論をすすめます。
(3)職場活動の重要分野としての位置づけの議論を
業務の困難性や不平・不満、時間内に終わらない業務の状態、職員の異動希望が多く定着しない職場状況などは、その職場では働きがいが疎外されていることを示しており、強い要求が存在していることを示します。
職場要求の基本は安全・健康に働ける職場、安心してくらせる賃金、そしてとりわけ自治体労働者が求める住民のための仕事のやりがいです。自治研活動は、この要求に応える職場活動の重要な柱、むしろ根幹とも言える活動であることについて、単組執行委員会をはじめ各級機関会議で十分に位置づけ議論します。
(4)執行委員会のもとに自治研活動を推進する体制(ex.自治研推進委員会)の確立を
単組として自治研活動を推進するためには、この活動に責任を持ち、推進する具体的な体制が必要です。予算人員要求闘争は、自治研活動によって解明された改善に向けた具体的な取り組みの一つであり、この責任者が自治研活動の責任者になることが適任といえます。責任者のもとに支部や分会など職場組織からの自治研活動の担当者を集めた自治研推進委員会を確立し、以下の具体的な取り組みについて意思統一と活動の交流をすすめます。
- 1)各級執行部、職場の自覚的な組合員との議論と意思統一を
日常業務における職場の状況、組合員の不満や要望をそれぞれの機関会議で議論し、職場の自覚的な組合員と十分に共有化し、自治研活動の重要性について十分な意思統一を行います。とりわけ職場の経験ある自覚的で職場をリードする組合員と十分に意思統一して取り組むことが重要です。 - 2)職場の不平・不満などグチを聞き合い、その原因を話し合う職場自治研から
職場での取り組みのきっかけは日常業務にかかわる不平・不満などのグチを出し合うことから始まります。このことは職場のコミュニケーションを取る上でも重要です。この取り組みは職場の自覚的な組合員や経験豊富な組合員のリードが重要で、グチの出し合いからその原因を話し合い、調べる活動へ、つまり自治研活動にすすめていく取り組みを行います。 - 3)自治研推進委員会で、取り組みの交流を
自治研推進委員会を定期的に開催し、各支部・分会、職場の自治研活動をすすめている自覚的な組合員の取り組みを交流し、経験と教訓を共有化します。 - 4)単組、支部、分会としての地域自治研の検討と具体化を
各職場の業務ごとに住民施策は具体化されており、地域住民と問題点やその原因を共有化し方向性を話し合う地域自治研活動は、職場や分会ごとに取り組むことが重要です。現在、焦点となっている住民施策を扱う職場や、職場自治研活動が進み始めている職場を中心に、地域自治研活動の具体化を行います。
地域自治研活動で話された内容については、職場自治研活動での議論の重要な素材となり、さらには住民の切実な要求として予算人員闘争で当局に実現を迫る重要な根拠として活用することも可能であり、十分に整理します。
5.東京自治労連自治研推進委員会での取り組み
(1)東京自治労連の自治研推進委員会で、自治研活動の取り組み方針について意思統一します。その際「自治研活動の手引き」「初めての『自治研』」を使った学習を行います。
(2)各単組に「自治研活動の手引き」「初めての『自治研』」をあらためて一定部数配布します。各単組で学習に活用することとし、東京自治労連から講師を派遣します。
(3)各単組での具体化について、到達点の確認、悩みや疑問についての議論、各単組の取り組みの交流を行います。
(4)各単組での自治研活動の取り組みを前進させ、第11回東京自治研集会の分科会等への反映をめざします。
以上
<別掲1>
−「若手保育士の連続講座」感想より−
- 保護者との関係づくりがとても難しく悩むこともたくさんありました。親と私の関係を大切にしていこうと思いました。
- 自分の成長が大事なんだとあらためて知らされました。
- ゆとりを持って保育し、子どもたちが安心して過ごせるようにしていきたい。同時に保護者の笑顔も作り出せるように考え方を見直して保育者としてがんばっていきたいと思う。
- グループ交流では若手からベテランまで区や公立・私立の壁を越えていろいろな話ができ有意義な時間だった。
- 発達障害やグレーゾーンの子が多いクラス、集団をどうやってつくればいいかを知りたい。
- 保育者対応、特にカウンセリング技法などについて学習したい。
- 子どもが「揺れる」時について学習したい。