都立・公社病院の地方独立行政法人化強行に抗議するとともに、今後東京都が、都民への医療提供後退をさせない事を求めます
<声明>
小池都知事はコロナ禍渦中に「都立病院廃止条例」などを提案し、都議会は、自民党・公明党・都民ファースト・日本維新の会の賛成多数でこれを認め、7月から都立・公社病院の「地方独立行政法人東京都立病院機構」への移行が強行されます。
このことは、1889年に養育院が東京府に移管されて以来、133年続いてきた公設直営病院の経験と蓄積がこれで途切れるばかりか東京都として都民への医療提供の責任が大きく後退することになりかねない、歴史的な転換といっても過言ではありません。
私たちは、「職員の技量と経験が蓄積でき、緊急時にも対応できる医療提供体制」「特に採算の取りにくい行政的医療の継続的提供」といった都直営病院ならではの役割が、地方独立行政法人となれば大きく失われると危惧してきました。さらに地方独立行政法人では、都民関与が間接的となるとともに採算を重視せざるを得ず、都直営時に比べて差額ベッド料など保険外での収入増、人件費などの経費減に拍車がかかり、患者の費用負担が増えることも懸念してきました。こうした観点から私たちは「独法化中止」を求め、昨年以来知事要請やパブリックコメントへの意見提出、都議会へも4回延べ18万筆超の請願署名を提出してきました。署名はその後も寄せられて約21万筆となっています。
コロナ禍において都立・公社病院は、全国トップレベルで病床を確保してきたばかりか、精神・小児といった民間では困難な患者対応も行うとともに、職員を技術的指導も含めて支援派遣するなど、迅速で柔軟な対応により大きな役割を担ってきたことでも都直営の利点が実証されました。また平時においても、無保険患者をはじめ、様々な事情や背景で民間医療機関では対応困難な患者を受け入れ、行政的医療の提供も含めて患者治療や命の最後の砦となってきたのは、医療提供の責任を東京都自ら自覚し、都民の信頼に応えようとする姿勢の現われに他なりません。こうした都自らの責任と役割を果たしていく上で、都立・公社病院を地方独立行政法人にしなければならない根拠はどこにあるのか、知事も議会審議でも合理的な根拠が示されることはありませんでした。
小池都知事や独法化を追認した都議は、コロナ禍の実践経験に学び、検証することもなく、コロナ禍前に策定された計画にしがみつき、運営形態の変更という歴史的転換を強行しました。その名が将来、東京の医療行政、医療提供体制に大きな禍根を残した者として刻まれる事がないよう、「『東京都立病院機構』の病院において、従来の都立病院・公社病院と同等以上の医療提供をする」と繰り返し述べてきた「公約」通りの運営が成されるよう、自らの責任として力を傾注することを望むものです。
私たちも、今後の運営状況をしっかりと監視し、必要な意見を述べていく所存です。
2022年6月30日
人権としての医療・介護東京実行委員会