保育士の「パート化」を進め、保育の質の低下を招く「短時間勤務保育士の規制緩和」を阻止するための取り組み方針
2021年3月31日
東京自治労連中央執行委員会
1.はじめに
新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、収束の目途がたたない状況が続く中、公立保育園をはじめとする保育施設は、感染症対策を徹底しながら、子どもの命と健康を守り、すこやかな発達を保障するために奮闘しつつ、保護者の就労もしっかり支えています。コロナ禍が保育施設を社会に必要不可欠な資源であることを改めて示すとともに、非常事態下に十分な保育を行うには保育士の数が足りないこと、保育室が狭すぎること、保育予算が少なすぎることなども浮き彫りにしました。さらに、最低基準の引き上げなど保育政策の抜本的な改善が喫緊の課題であり、それを抜きに待機児童問題や保育士不足問題は解決できないことも明らかになりました。
このような状況の中、政府は、2020年12月に新たな待機児童対策として「新子育て安心プラン」(以下、新プラン)を閣議決定しました。新プランは、「2021〜2024年度までの4年間で14万人分の保育の受け皿を整備する」としています。しかし保育士の確保策として「保育士配置に関する規制緩和」が示され、パート保育士しか配置しないクラス(グループ)が存在することとなり、保育の質の低下を招きかねません。
厚生労働省は、3月19日に「保育所等における短時間勤務の保育士の取扱いについて」を発出しました。この通達を各自治体で実施させない緊急の取り組みが必要になります。以下「短時間勤務保育士の規制緩和」の問題点と緊急の取り組みについて提起するものです。
2.「新子育て安心プラン」の概要
新プランは、12月15日に行われた「全世代型社会保障検討会議」の最終報告で「年末までに取りまとめる」として示されたものです。その内容は、@地域の特性に応じた支援、A魅力向上を通じた保育士の確保、B地域のあらゆる子育て資源の活用、の三点を柱とする待機児童対策が示され、「ニーズが増加する自治体に対して整備費の補助率を上げるなどの支援」、「短時間勤務の保育士や保育の補助を行う人材の確保」、「幼稚園と併設する小規模保育の利用定員の上限の弾力化(3人増から6人増へ)」などの具体策が掲げられています。
待機児童対策として「新プラン」では、保育補助者の「勤務時間30時間以下」との補助要件を撤廃するとともに保育士の配置基準の規制緩和を盛り込みました。また、待機児童解消の財源として、年収1200万円以上の世帯に給付する児童手当の特例給付を見直して充当するとしています。2015年の「子ども・子育て支援新制度」の施行に伴い、子育て関係の財源は消費税となり、予算の増額と消費税の増税がリンクするしくみになっていますが、その見直しには、一切手を付けず、不足分は先の特例給付の見直しと事業主拠出金をあてるとしています。
3.短時間保育士の配置基準の緩和について
厚生労働省は、「保育所等における短時間勤務の保育士の取扱いについて」を、3月19日に発出しました。
この通知では、「最低基準上の保育士定数は常勤の保育士をもって確保することが原則であり、望ましいという前提の下で、常勤の保育士の確保が困難であることにより、保育所等に空き定員があるにもかかわらず待機児童が発生している場合に限り、暫定的な措置として短時間勤務の保育士が従事する業務に関する特例的な対応を取っても差し支えないこととするなど短時間勤務の保育士に関する取扱いを改めて整理し、令和3年4月1日から適用することとしました」としています。
さらに「令和2年以降の各年4月1日時点のいずれかの待機児童数が1人以上であり、かつ、その要因が、管内の保育所等において定員に空きがあるにもかかわらず、常勤の保育士の確保が困難であることにより、当該保育所等の利用を希望する子どもを受け入れることができないためであることと判断している市町村(特別区を含む)において、待機児童解消のために当該市町村がやむを得ないと認める場合に限り、当該保育所等の利用を希望する子どもを受け入れるのに不足する常勤の保育士数の限りにおいて、1名の常勤保育士に代えて2名の短時間勤務の保育士を充てても差し支えないものであること。」と記しています。
つまり、最低基準上の保育士定数は常勤が原則ですが、保育士が確保できないために待機児童が発生する場合に限り、「暫定的な措置」として常勤保育士1名以上のところ、短時間保育士2名で対応してもよいとしています。それを行うかどうかはあくまで自治体の判断となります。
待機児童ゼロが実現できない背景には、深刻な保育士不足問題があり、その根本的な解決が不可欠です。保育士を増やし、離職率を低下させる施策が必要であり、長時間過密労働と低賃金の改善を行うなど、働く環境の改善こそが真の解決策といえます。ところが、「新プラン」は、無資格者や短時間勤務などの「非正規保育士の活用」というその場しのぎの規制緩和で乗り切ろうしています。公立保育園においては、会計年度任用職員のさらなる活用による正規職員の削減につながりかねない問題をはらんでいます。
こうしたことをふまえ、以下の取り組みを早急に行うことが求められます。
4.具体的な取り組み
各自治体当局に対して、短時間保育士に関わる基準の緩和を行わせない取り組みを行います。
(1)「新子育て安心プラン」の内容の理解やこの取り組みの重要性を組合員に周知します。
(2)各単組は、東京自治労連が作成した「ひな型」を活用し、自治体当局に対する要請行動を4月中に取り組みます。
(3)地域の保育関係者や保育団体と共同して、学習や自治体への要請などに取り組みます。
以 上