小池知事の「都立病院及び東京都保健医療公社病院・14病院の地方独立行政法人への移行準備を開始する」との表明に抗議し、移行に向けた準備の中止を求めます。
2019年12月11日
東京自治労連中央執行委員会
小池都知事は、12月3日の都議会第4回定例会の所信表明で「都立病院及び東京都保健医療公社病院(以下公社病院)14病院を一体的に地方独立行政法人へ移行すべく、準備を開始する」と表明しました。
都立病院の経営形態については、18年1月に都立病院経営委員会から「今後の都立病院のあり方について〜東京の医療を支え、地域で安心して暮らせるために〜」(以下「報告」)が報告され、この中で、一般会計から毎年400億円の繰り入れをしており、赤字だからとこの解消を求め、「地方独立行政法人がふさわしい経営形態」だと報告されました。しかし、この400億円のほとんどは、島しょ医療、高度な精神科医療、特殊救急医療、災害医療や民間では採算がとれない医療など「行政的医療」に使われており、東京都が都民の命と健康に責任を持つ事業の費用であり、赤字との表現は誤りです。しかも、「報告」を受けて作成された「都立病院新改革実行プラン2018」(18年3月)では、第7次東京都保健医療計画の期間中(2023年度まで)に検討を進めるとなっており、あまりにも唐突な表明です。
この間の都議会でも、採算重視は公共医療の切り捨てにつながるとして、独法化に反対する意見も出されており、小池知事も「丁寧に検討する」としていました。加えて、公社病院については、これまで一度も、地方独立行政法人化の検討はされていません。
地方独立行政法人は、民営化への手法の一つです。すでに、全国で地方独立行政法人化された病院では、「独立採算」が強く求められ、経費節減のための人員削減、給与削減、各種業務の外注化、非正規職員化が行われ、増収のために、保険外の患者負担(紹介状なしの初診料、文書料、差額ベッド料など)の増額、不採算部門の切り捨て、必要な入院期間の短縮などが行われています。先に地方独立行政法人化された「東京都健康長寿医療センター」では、病床が削減され、有料個室が増え、最高で26,000円の差額ベッドや、入院時には10万円の保証金が必要と、患者・利用者の負担増を招いています。
都立病院や公社病院では、先の「行政的医療」と呼ばれる不採算医療や災害時の対応など、公立・公的病院だからこそできる医療を提供しています。近年大きな災害が頻発する中、災害時の拠点となる病院は欠かせません。災害拠点病院には、高度な耐震性能、非常用電源、給水能力が求められます。災害時には多数の被災者を収容する能力、対応する人材、各種の備蓄も必要です。また、都立病院には、高度な技術や設備を必要とする検査や治療を行って、地域の医療レベルを向上させる仕事もあります。自治体内の医療関係者の指導や住民への教育を行うことも必要です。このように、都立病院が担ってきた活動には行政の力が必要であり、採算性が最優先されればできることではありません。
地方独立行政法人化されると、7,000人の職員が公務員の身分を剥奪されます。このようなことは、絶対許すことはできません。また、病院の運営に都議会の関与が出来なくなれば、都民要求の反映もされず、行政との連携が失われ、地域医療連携などに公共性が失われます。不採算の診療科が切り捨てられれば、受診困難者が生まれることも明らかで、都民の医療要求の実現はますます遠くなり、都民の命と健康が守れません。
小池知事が、これまでの経過を無視し、該当する職員や関係者への告知もなく、一方的に地方独立行政法人化を発表したことは許されません。東京自治労連は、強く抗議し、移行に向けた準備の中止を求めます。都立病院の直営堅持、公社病院の拡充で都民の命と健康をまもるために、関係単組・局支部、広範な都民とともに奮闘します。