自治体業務へのAI・IoT・RPAなど新技術の導入への対応の基本点について
2019年7月31日
東京自治労連中央執行委員会
政府は6月21日に「成長戦略実行計画案」「成長戦略フォローアップ案」「骨太方針2019」を閣議決定し、AI、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ビッグデータの活用などを産業界はもちろんのこと、国や自治体業務にも全面的に導入することを明記しています。
また総務省の「自治体戦略2040構想研究会」報告、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会」(スマート自治体研究会)報告で、自治体業務への全面的な活用について示されています。
さらに東京都は戦略政策情報推進本部のもとに、坂村健・東洋大学情報連携学部長を座長とした「Society5.0」社会実装モデルのあり方検討会(以下、東京版Society5.0検討会)を設置し、5月9日に第1回検討会を開催しています。
特別区においても港区、渋谷区などで具体的にAIなどの導入を行っており、目黒区においてもOCR-AIの実証実験が行われています。各区の2019年度予算の検討事業などをみても、今後Society5.0にかかわる検討が行われることがわかります。
これらの新技術は科学技術開発の到達点であり、一律に否定するものではありません。が、なんの検討もされないまま、職場の人員不足を補うことになるなどの名目のみで安易に導入することによって、住民自治の増進に反し、自治体業務が大幅に変質する事態も起こりかねません。同時にさらなる人員削減をすすめ、自治体全体の縮小につながりかねません。
自治体の役割は住民の基本的人権を守り、福祉の増進に努めることであり、自治体労働者はそれを保障するために多くの経験をふまえてそれぞれの業務に携わることで住民生活の向上に寄与しています。住民は1人ひとり違うとともに、自治体も一つひとつ違うからこそ、それぞれの自治体がそこで生活する住民の1人ひとりをふまえて、自治体の施策を充実させることが求められています。
AI・RPAなどの新技術の活用は、誤りが起こる可能性を否定できないもとで、誤りを正すことができるのは経験と知識を兼ね備えた自治体労働者です。新技術ありきで自治体業務を行えば、自治体労働者の経験と知識が蓄積されず、スキルが低下し誤りが起こっても見過ごされることにもなりかねません。
こうしたことをふまえて、自治体業務へのAI・IoT・RPAなど新技術の導入への対応についての基本点を示すものです。
1. |
新技術の導入については労働組合に提案し、十分な検討を行うことを労使合意とする。 |
2. |
労働組合への提案をふまえ、労使の検討の場を設定する。その際、利便性のみを議論するのではなく、住民生活、住民対応への影響、さらには自治体職員の経験と知識の蓄積などへの影響もふまえた検討を行う。 |
3. |
労働組合、当局との検討をふまえ、住民への広く意見を求める取り組みを行う。 |
4. |
労働組合と当局がそれぞれ住民から得た意見をあらためて労使の検討の場で議論し、導入の可否や導入の範囲について確認をする。 |
以上