東京都の「重点政策方針2019」について(見解)
2019年7月31日
東京自治労連中央執行委員会
東京都は「未来への投資〜人がかがやく東京に向けて〜重点政策方針2019」(以下、「重点政策方針2019」)を7月19日に発表しました。予算編成方針を示した副知事依命通達でも「重点政策方針2019」を2020年度予算編成の基本とするよう強調されています。さらに年末を目途に「長期戦略ビジョン(仮称)」を公表するとしました。
ここでは「戦略的視点〜7C TOKYO」として次の7つを掲げました。@「オリパラを好機とした未来への投資 Chance」、A「時代を先取りした意識改革 Change」、B「新たな時代への挑戦 Challenge」、C「東京大改革をすすめる Check」、D「みんなが集い、暮らす Community」、E「未来を担う子供を育む Children」、F「人生100年時代を元気に Choju」です。
また「3つの柱」を掲げました。
第一の柱は「東京2020大会を成功に導き、レガシーを創り上げる」です。東京オリンピック・パラリンピック大会については、すでに2019年度の東京都予算分析(東京自治労連作成)で明らかなように、つぎ込まれる予算の多くが大型開発型のものであり、大会後のレガシーも大企業の儲けのために活用できるよう遺産として残すものであることは明らかです。これまでの大型開発優先の都政の延長線上の政策です。
第二の柱は「最先端技術を活用し、Society5.0の実現に向けた施策を具体化」です。Society5.0の実現は、財界がねらっている戦略的政策です。すでに6月21日に発表されている「成長戦略実行計画案」「成長戦略フォローアップ案」「骨太方針2019」で、AI、IoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ビッグデータの活用などを産業界はもちろんのこと、国や自治体業務にも全面的に導入することを明記しています。
また総務省の「自治体戦略2040構想研究会」報告、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会」(スマート自治体研究会)報告で、自治体業務への全面的な活用について示されています。
さらに東京都は戦略政策情報推進本部のもとに、坂村健東洋大学情報連携学部長を座長とした「Society5.0」社会実装モデルのあり方検討会(以下、東京版Society5.0検討会)を設置し、5月9日に第1回検討会を開催しています。あいさつで小池都知事は、東京は日本の経済を「牽引していく役割を担っている」とし、そのために「新たな取り組みを積極的に展開」「施策をバージョンアップ」して「世界をリード」すると述べ、Society5.0で、「ビッグデータやAIの活用で経済発展と社会的な問題の解決、これを両立させる可能性を秘めている」とし、「生産性を劇的に改善していくという点でも非常に有効なツール」であるとして、「東京の稼ぐ力につながるようにしていきたい」と期待を表明しました。
坂村座長は、「東京都5.0化の哲学と方法論」と題してプレゼンテーションをしています。その中でSociety5.0の実現には、あらゆるデータ、アプリケーションなどのオープン化が必要だとして、「誰でもが、何時でも、何処でも、何にでも」使える用にする必要があるとしています。行政が行うべきは「API(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)やフォーマットの標準化と関連する制度の再構築」であると述べています。また、「制度設計や政策協調で国と連携、具体的に進めるには?間の力を」使い、「行政がやるべきは連携のためのプラットホーム整備」だと説明しました。「オープンデータ化の推進」には「オープンデータベースの関係者全員の参加型行政」にする必要があるとしました。
以上を見ただけでも東京都が財界のねらっている新たな技術を行政で導入し、行政データのオープン化とそのシステムや利用の民間活用で、「稼ぐ力」を強化して莫大な利潤を上げようという戦略を率先してすすめるものです。
第三の柱は「東京の喫緊の課題に対し、『都市力の強化』『人と人をつなぐ』『稼ぐ東京』それぞれについて、スピード感を持って政策を展開」です。この中で子育てや高齢者施策に言及していますが、これまで行ってきた子育て・高齢者などの都民向け施策も東京都の制度として確立されたものではありません。今回についても都民世論を背景にして打ち出さざるを得ないものです。同時に「都市力の強化」「稼ぐ力」などが強調されており、その基本は東京の従来からある町場の中小・零細企業の活性化ではなく、「国際金融都市」の前進、新規開拓や先端事業を進める「稼ぐ力」を持った中小企業の育成です。
今、最も必要な政策は、東京に働くものの所得を大幅に引き上げること、保育・介護・医療をはじめとした社会保障の水準の引き上げ、安心して子育てでき学習に励める条件の整備など、都民生活全体の底上げを行うことです。東京自治労連はすべての組合員と団結し、都内の労働組合・民主団体と協力共同し、来年の都知事選挙も展望しながら都政の民主化に向けて奮闘する決意です。
以上