「公立保育園」の役割を明らかにし、公的保育を守る取り組み方針
2017年6月21日
東京自治労連中央執行委員会
1.はじめに
安倍政権は、「社会保障改革推進法」のもと、医療、介護などで自己負担増と給付削減を進め、社会保障の本質を「自助・互助・共助」に変質し、自己責任に矮小化して公的責任を放棄しようとしています。さらに社会保障・公的サービスの「市場化・営利化」を進め、住民生活を守るセーフティーネットとしての社会保障の役割を大きく変質させています。また、担い手不足は、「一億総活躍」という名で、安上がりに青年・女性・高齢者・外国人労働者を活用して補い、職の専門性や安全で良質なサービスの提供を脅かしています。
保育も例外ではありません。深刻な待機児童解消を中心とする保育問題は、社会の注目を集め、認可保育所と保育士を増やして、より良い保育を実現する運動が広がり、国や東京都が改善策を打ち出せざるを得ない状況を生み出しました。その結果、保育者の処遇では、一定の賃金改善が示され、人材確保のための住宅支援などが広がりました。認可保育所の増設も進みましたが、小規模保育事業や企業主導型保育事業などの基準の低い施設も増加し、配置基準の緩和や「子育て支援員」などの無資格者や非正規労働者も増加の一途をたどっています。これらにより保育環境・条件はさらに悪化しています。
また、各区市は、公立保育園の統廃合や認定こども園化・民営化がすすんでいます。さらに欠員の恒常化や事務量の増大など、組合員の健康が脅かされています。
3月末に告示された「保育所保育指針」に、「国旗・国歌に親しむ」ことが明記されるなど、保育内容への国家の介入もすすんでいます。
このような情勢のもと、公立保育園の役割を明らかにし、公的保育を守る取り組みをすすめましょう。
2.取り組みの基本
(1)公立保育園の新設、増改築、公立の小規模保育事業所の新設など、待機児童解消に公立施設の積極的な活用を求めます。
(2)必要な人員を確保して慢性的な欠員を解消し、不払い残業と長時間労働の根絶、事務量の軽減など、組合員の心身の健康を守り、よりよい保育を実現させる取り組みをすすめます。
(3)保育所保育指針の改定を理由とした保育内容への不当な国家・自治体の介入に反対し、目の前の子どもたちの姿や要求に即した自主的・主体的な保育実践を守る取り組みをすすめます。
(4)各区市の青年自治体保育労働者の交流、非正規保育労働者の組織化などをすすめ、東京自治労連の組織強化につなげます。
3.具体的な取り組み
(1)公立保育園の新設、増改築などを求める取り組み
- 1)北区での公立保育園、大阪・吹田市での公立小規模保育事業所の新設などの実態を伝え、公立の新設は可能であることを組合員に周知します。
- 2)公立保育園の新設、増改築などをすすめる要求書のひな型を作成し、当局への要請をすすめます。
(2)組合員の心身の健康を守る取り組み
- 1)直ちに欠員をなくし、十分な職員配置を要求します。
- 2)職場に再任用職員が増えています。再任用職員の実態を交流し要求の具体化を図り、各区市の取り組みにつなげます。
- 3)保育部会の幹事会や労安推進委員会などで、労働実態やその改善の運動を交流し、各区市の取り組みにつなげます。
- 4)東京自治労連が設置する不払い残業根絶対策委員会や労働安全衛生活動推進委員会の方針を踏まえた取り組みを単組とともにすすめます。
- 5)労働安全衛生活動を推進し、東京自治労連の第16回労働安全衛生活動交流集会の成功に寄与します。
- 6)国の職員配置基準の抜本的な改善を要求します。
(3)保育内容への不当な介入に反対し、自主的・主体的な保育実践を守るとりくみ
- 1)自治労連が作成した「これからの保育はどうなる?保育所保育指針改定-その問題と私たちの課題-パンフレット」などを活用し、改定保育所保育指針の学習を推進します。
- 2)各区市で守るべき「保育の質」の確保について、労使で検討し、それに基づいた保育行政を進めるよう求めます。その際世田谷区のパンフレットなどを参考にします。
(4)組織強化の取り組み
- 1)「保育をたのしもう会@Tokyo」への積極的な参加と、各区市における次世代育成の取り組みを強化します。
- 2)保育職場の非正規労働者の組織化を、保育園支部・分会・部会と公共一般・保育ユニオンとの共同ですすめます。
(5)その他
- 1)都区財政調整制度や東京都の子育て推進交付金など保育を支える財源の学習などを、東京の自治体保育労働者運動実行委員会や公的保育・福祉を守る東京実行委員会と取り組みをすすめます。
- 2)社会保障関連分野との交流、共同をすすめます。
- 3)憲法改悪を許さない取り組みをすすめます。
以上