小池都政の「待機児童解消に向けた緊急対策」に対する見解
2016年9月21日
東京自治労連中央執行委員会
2016年4月時点の東京都の待機児童は前年より652人増の8,466人で、認証保育所など自治体が補助する認可外保育施設を利用しているなどの潜在的待機児童は18,719人、合わせて27,185人が認可保育所に入れていません。この数値は全国の待機児童の約3割に達しています。
小池都知事は選挙中に待機児童問題の解決を公約し、9月9日に記者会見で補正予算126億円の投入と「待機児童解消に向けた緊急対策」を公表するとともに、同日に開催された「国家戦略特別区域諮問会議」において、政府に対して待機児童対策に関するさらなる規制緩和を求めました。
「待機児童解消に向けた緊急対策」では2016年度内に17,000人分の保育サービスを整備するとして「保育所等の整備促進」「人材の確保・定着の支援」「利用者支援の充実」を3つの柱に掲げています。その内容は、
- 「保育所等の整備促進」では、保育所などの整備費補助や一時預かり保育の保護者負担軽減としての、都独自補助の上乗せ、最長3時間の延長ができる延長保育加算の創設。
- 「人材の確保・定着の支援」では、常勤保育士の住まい確保のための事業者に対する支援対象期間を拡大し対象となる保育士の採用後の期間要件をなくす。
- 「利用者支援の充実」では、認可外保育施設の利用者負担軽減、保護者に情報提供や相談・助言を行う保育コンシェルジュの増員、さらに認可外保育施設の質の向上を図るために、巡回指導チームを編成して指導体制を強化。
これらの内容は、東京都としてすでに実施している施策を拡充するもので、待機児童解消のための緊急の対応としてただちに実施することを求めます。同時に緊急政策といえでも、多くの保護者が望む認可保育所中心の施策へ切り替えるべきです。
また、「緊急対策」では「子育て支援員の増員」が打ち出されています。待機児童解消のためには、施設増だけでなく保育士の増員が必要です。しかし「補助的業務」とはいえ一定の研修のみで保育現場に無資格者である子育て支援員が増えることは、保育の質の維持という点で大きな問題があります。増員の基本は、資格を持った保育士です。保育士の待遇の悪さはこの間明らかになってきました。その処遇改善のための予算措置を東京都が独自に行うことが必要です。
また保育の質を保ちながら待機児童の解消を緊急に行うためには、公立保育所を積極的に改修すれば、ただちに相当数の定員増を確保することが可能です。そのために東京都が財政的措置を緊急に行うことが重要です。同時に国に対しても公立保育所の整備費、運営費への補助を求めることが必要です。
国家戦略特区諮問会議で東京都が要望した内容もきわめて問題です。
第1に「保育所の規制改革、税制改正」として、認証保育所の制度化や小規模保育の年齢制限(2歳まで)の撤廃、家庭的保育の調理員配置義務の撤廃など、設備運営基準を弾力的化できる地方自治体の裁量権を拡大するよう求めています。
第2に既存建築物を保育所に用途変更する際の建築基準法等の緩和、有効採光率や有効採光面積算出方法の緩和を求めています。
第3に保育所整備促進のための税制改正、民有地活用のための相続税・贈与税の非課税措置、事業所内保育事業の固定資産税と非課税措置の拡大も求めています。
これらは保育の質の拡充という点ではきわめて問題です。認可保育所の基準に満たない認証保育所や小規模保育を拡大し、有効採光率の緩和で日が当たらない地下室で保育を可能にするなど、子どもの豊かな発達を保障することとは相反すると言わざるを得ません。保育にかかわる規制のほとんどは、子どものすこやかな成長を保障するためのものです。居室面積や人員配置などの最低基準は先進国の中でも劣悪である、現行の国の制度を改善することこそ求めるべきです。
保育は、第一義的に乳幼児期の子どものすこやか発達を保障する営みだからこそ、子どもが最適な環境の中で生活する条件を整える努力をすることが行政の役割ですが、これが完全に欠落しています。都民ファーストを標榜するなら、都民である子どもたちを大切にするべきで、乳幼児期の子どもたちが育つ環境を整えるために、量の確保と質の向上を両立できる緊急対策こそ求められています。
また、抜本的な解決のためには公立をはじめとした認可保育園の拡充が欠かせません。東京都が、認可保育所中心の政策に転換し、保育に財源を振り向けることこそが必要です。
すでに存在している認証保育所や小規模保育、認可外保育施設についても、東京都の責任で基準を引き上げることが求められています。
東京自治労連は、子ども本位の保育施策を求め、都民とともに運動を広げるものです。
以上