東京の待機児童の解消は、公立保育園の施設の活用や人的配置を含め、公的責任で早急に行うよう求める方針
2016年5月18日
- はじめに
待機児童問題は、極めて深刻です。この間政権の緊急課題と位置づけられながら、進んだのは、保育の市場化と規制緩和、そして公立保育園の民間委託です。それでは解消していません。解消しないばかりか待機児童の解消の効果は極めて薄く、保育の質を低下させる可能性は極めて高くなっています。3月28日に公表した国の「緊急対策」も、内容は規制緩和のオンパレードです。
東京自治労連は、この「緊急対策」について、4月27日「中央執行委員会見解」を発表し、国の政策を批判しました。各単組においては、国の規制緩和による配置基準を受け入れないよう緊急の要請行動に取り組んでいます。
国が待機児童対策に有効な手立てを講じられていない理由に、保育士不足の主な要因である低すぎる処遇や過酷な労働条件を改善できていないこと、小規模保育事業所などを活用し、認可保育園の大幅な増設を行ってこなかったことなどが挙げられます。しかし、根本的には、この間保育の市場化を促進する施策として、自治体の公的責任を体現する公立保育園つぶしのために、運営費の一般財源化や施設整備費の一般財源化などで民営化を誘導し、ピーク時の3/4まで公立保育園数を減らしてきたからです。
東京の待機児童数は全国一ですが、同じく公立保育園の数も全国一です。大半の施設で老朽化が進んでいるという問題もありますが、園庭や保育室が広いところが多く、施設の改修で定員を増やせる可能性があります。
また、公立保育園には専門性豊かな経験を有する保育労働者がおり、少なくとも民間に比べて公的保育を守る基盤があります。私たちは、公立保育園を活用すれば、待機児童の解消に活路が見いだせると考えます。ここでは、それを可能にするために必要取り組みを提起します。 - 東京の待機児童と公立保育園の現状
国の「緊急対策」では、2015年4月現在の待機児童数が50人以上または、2015年度の受け皿拡大量の計画が150人以上の自治体が対象自治体として上げられています。東京都は23区16市が対象となっており、これは、ほとんどの区市に相当数の待機児童が存在している証です。また、東京都の保育所普及率(保育所入所児童数÷当該人口×100)は31.2%(2013年度)で、全国平均の36.2%を5ポイントも下回っており、認可保育園が足りないのは明らかです。
他方、都内の認可保育園における公立保育園の比率は、全国と比べて高くなっています。70年代「ポストの数ほど保育所を」という住民運動が広がり、美濃部革新都政を誕生させた結果、公立保育園がたくさん作られたからです。そのため、数は多いものの老朽化が深刻です。さらに、国は「公共施設等総合管理計画」を打ち出し、自治体に老朽化した施設の廃止や統廃合を迫っており、子ども・子育て支援新制度でも公立保育園を民営化しやすくする新たな制度(公私連携保育所など)がつくられたことで、待機児童が解消されていないにもかかわらず、民営化を計画・推進するところもあります。 - 取り組みの基本
(1) 公立保育園の新設・増改築を積極的に進めるよう、国・都・区市町村に対する運動に取り組みます。 - 国に対して
- 新たな財政支援制度を創設し、保育所の建設や分園の設置・改修への補助、運営費の国庫負担を復活させること。
- 建設用の土地に、国有地の無償提供や、土地確保のための国庫助成制度を創設すること。
- 保育士不足に拍車をかけている保育士の処遇改善を具体的に早急に行うこと。
- 東京都に対して
- 国に、待機児童の解消に公立保育園を活用するよう東京都として別紙に基づき要望書を提出すること。
- 都有地の無償提供や、助成制度を創設すること。
- 東京都として、保育士確保のための助成制度を公立保育園にも適用すること。
- 市区町村に対して
- 公立保育園の民間委託化や認定子ども園化をやめ、公立保育園の新設・増改築を行うこと。
- 国や東京都に対して待機児童の解消に公立保育園を活用できるように財源措置の復活などの要望書を提出すること。
(2) 実施自治体として、緊急に公立保育園を活用した待機児童解消運動に取り組みます。 - 国の緊急対策が求める配置基準や面積基準の引き下げは行わないこと。
- 面積などに余裕のある施設で、一部を改修して保育室を増設したり、仮設の保育室を作るなどで定員増を行うことを求めます。
- 自治体の空き施設等で、就学までを見通した保育所利用を可能とする施設を創設すること。
- 小規模保育事業で解消を図る際は、小規模保育事業A 型で分園など公立保育園での実施を基本とすること。
- 国に対して
- 具体的な取り組み
(1) 東京自治労連の取り組み - 学習意思統一集会を下記の通り開催します。
日時:5月27日(金) 18:45〜
場所:都庁職会議室
規模:各単組 書記長、保育担当
保育部会常幹・幹事、保育園支部・分会から 計5名程度 - 対都要請を実施します。
>待機児童の解消を公立保育園の施設の活用、自治体の公的責任で行うよう求める要請書(PDF) - 対市区町村への要請書のヒナ型を作成します。
>待機児童の解消を公立保育園の施設の活用、自治体の公的責任で行うよう求める要請書(Word) - 宣伝用チラシの版下を準備します。
(2) 各単組の取り組み - 単組として、保育園支部等と協議し、取り組み方針を確認します。
- 単組、保育園支部・分会での学習と意思統一を行います。
- 自治体当局への要請行動に取り組みます。
- 地域での宣伝行動に取り組みます。
(3) 取り組み上の配慮
この取り組みを通じて、若手の保育士にも、運動の楽しさを伝え、組合活動への確信が持てるよう工夫し、次世代の担い手を育てます。 - 学習意思統一集会を下記の通り開催します。
以上