「2016年度与党税制改正大綱」に対する見解(案)
2016年1月7日
東京自治労連中央執行委員会
政府与党は2015年12月16日に「2016年度与党税制改正大綱」(以下、大綱)を正式決定しました。法人課税制度や偏在是正の見直しより、地方法人課税にかかる税収にも大きな影響を及ぼすものです。
大綱では、2015年度税制改正で決定した2016年度の法人実効税率31.33%を、前倒しして20%台に引き下げるため、法人税率を現行23.9%から2016年度に23.4%、2018年度に23.2%に引き下げ、法人事業税における外形標準課税の割合を8分の4から2016年度に8分の5に拡大するとともに、所得割の標準税率を6.0%から3.6%にまで引き下げるとしています。この結果、法人実効税率は、2016年度に29.97%、2018年度に29.74%に引き下げられることとなります。
現行においても大企業の税負担は、試験研究費等の税額控除や租税特別措置法、連結納税制度などの優遇税制により、20%前後の企業や10%以下の企業などもあり、大企業に対して厚遇する税制となっています。そもそも法人税の基本税率は43.3%から23.9%にまで大幅に引き下げられてきましたが、労働者の実質賃金は減り続ける一方で、株主配当や内部留保が拡大するのみであり、経済の好循環にはまったくつながっていません。外形標準課税の拡大は、利益の大きい大企業ほど負担が軽減される一方で、赤字法人へはいっそう負担増を拡大するものであり、とりわけ中小企業にとって極めて深刻な状況を招くことは明らかです。そもそも税の応能負担原則という根本原則の破壊に他なりません。
現在是正の見直しについては暫定措置が廃止され、地方の独自財源として復元されることとなりましたが、法人住民税の法人税割りの一部を国税化し、交付税の原資とする「地方法人税(国税)」は、現行の4.4%から10.3%に引き上げられます。さらに「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の創設により、事業所のない地方自治体にも他の自治体の存在する事業所の法人住民税を支払う仕組みを作ろうとしています。
地方法人課税の見直しによる東京都への影響額はマイナス4600億円に上り、現行からさらに約1000億円拡大することとなります。また、区長会は23区についても1150億円もの影響を受けると試算しており、都区財政調整交付金にも大きく影響するものであり、極めて重大な問題です。
これらは本来の地方自治体固有の税を国税化し、受益と負担の関係を無視して地方自治体で課税する根拠を失わせるものであり、税制度の基本的あり方が問われるものです。
地方の財源不足は偏在是正の名のもとに与党税制調査会の「税制改正大綱」の方向で解決するべきではありません。「骨太方針2015」にある社会保障と地方財政削減方針を撤回し、大企業の優遇税制をあらため、地方自治体の住民のいのちとくらし、安全・安心を確保できる住民サービスを保障しうる財源対策を、国が責任を持って行うことこそが重要です。
東京自治労連は地方財政切り捨て、税制度の根本的破壊を許さず、民主的税制の確立を求めて一致する団体・個人とともに共同してたたかうものです。
以上