国民・都民負担を強いる新国立競技場の建設計画は見直しを求めます
2015年7月15日
東京自治労連中央執行委員会
2020年のオリンピック・パラリンピックの新国立競技場建設について、日本スポーツ振興センター(JOC)は7日、有識者会議を開きアーチ構造の現行デザインのまま、総工費2520億円とする計画見直し案を了承しました。
2013年度予算案では総工費約1300億円と見込まれていましたが、施行予定者である大成建設と竹中工務店が積算をやり直したところ3000億円超とする見積もりを提出しています。これらの経過の中で計画見直し案を決定したものです。
2520億円という計画は開閉式屋根の設置などを大会後に先送りしたものであり、これらを含めれば2700億円を超えることも明らかになっています。一方、文科省が財源として説明しているのは、国債による392億円とスポーツ振興基金の取り崩し分125億円などを含む626億円でしかありません。これらは現在の国立競技場の解体費用にも充てられ、全額が建設工事の財源にならないことは明らかです。しかも下村文科相は「財源確保の積算根拠を申し上げることはできません」と答弁するなど、財源確保の見通しもないことを事実上認めています。
維持経費については50年間の大規模修繕費が656億円から1046億円に変更されており、政府は総工費の「約60%に相当する」としています。しかし国の建築物の保全について調査を行っている「建築保全センター」は、「すべき修繕+望ましい修繕+事後保全」は建設費の154%であるとしており、過小に見積もっていることは明らかです。
舛添都知事は当初、「私には一切情報が上がってきていない。負担するのは都民だ」と国の対応を批判していましたが、知事も参加する大会組織委員会の関係者による調整会議で総工費を了承しました。その後遠藤五輪相との会談では「できるだけ協力する」「どういう理由で都民が納得する形でやるかはまったく手が付いていない。皆で考える必要がある」とし、協力を前提とした姿勢に転換しています。
新国立競技場の無謀な計画による莫大な負担は国民に押しつけられることが明らかです。政府はこれらの一部として東京都に500億円の負担を求めており、その通り支出することとなれば、都民の税金が政府の無謀な計画に使われることとなります。
そもそも「アジェンダ21」や「アジェンダ2020」に沿って、費用を抑制し周辺環境と調和した施設となるよう努力することが求められています。建築家の槙文彦さんらのグループも巨大アーチを取りやめるよう提言しており、アーチを取りやめれば1500億円程度に圧縮でき、工期も42ヶ月程度に収まるとしています。しかもNHKの7月10日から3日間で行われた世論調査でも81%の方々が「納得できない」と回答しています。
今回の計画の見直しは莫大な国民負担、都民負担となるとともに、後年度の採算性や負担についても懸念されており、将来に負の遺産を残すこととなります。舛添都知事は都民の貴重な税金を無謀な計画に浪費することのないよう、見直しを国に対して強く求めるべきです。
これまで東京自治労連は「2020年オリンピック・パラリンピックを考える都民の会」に結集し、コンパクトな開催と都民のスポーツ環境の充実を求めて取り組みに参加してきました。私たちは新国立競技場の計画見直しを強く求め、都民のいのちと安全、都民生活の向上のために都の財政を活用することを要求し、今後とも都民や諸団体とともに闘うものです。
以上