法人事業税「暫定措置」継続と法人住民税法人税割を一部国税化について
2013年12月4日
東京自治労連 書記長 森田 稔
政府・与党は11月28日、都市と地方の税収格差を是正するためと称して、地方税である法人住民税の一部を国税にし、地方交付税の税源に回す方針を固めた。
これは11月6日、総務省の地方財政審議会の「地方法人課税のあり方等に関する検討会」が、平成20年度から「抜本的税制改正(消費税引き上げ時)までの暫定的措置」として実施された「地方法人特別税」の継続を求めるとともに、新たに、法人住民税法人税割を一部国税化し、地方交付税の原資とするよう提言したことに基づくものである。
法人住民税法人税割とは、法人税額を課税標準とし、都道府県民税は法人税額の5%、市町村民税は、法人税額の12.3%となっており、その税収は、平成23年度決算分で都道府県6391億円、市町村1兆5978億円となっている。
提言は容認できない重大な問題を持つものである。第一に、現在の地方自治体の財政難をもたらしたのは、「三位一体改革」により地方交付税等総額5兆円を大幅に削減し、さらに法人税減税などにより地方交付税の原資を縮小させてきたことにある。政府が財政政策を誤ったにもかかわらず、自らの責任は免罪している。
第二に、地方税を国税化することは地方の財政自主権を切り崩すことであり、政府が主張する地方分権の流れに逆行しているという点である。
第三に、法人住民税は、法人の「受益」に着目して課税される税であり、国税化は「受益と負担」の一致という「地方税の原則」に反し、課税の根拠そのものを失うものである。
第四に、法人住民税は区市町村の基幹税の一つであり、区市町村財政に対して重大な影響を与えるという点である。特別区区長会の試算では、国税化される額は1400億円に上り、地方消費税増収分と差引しても400億円の減収が見込まれるなど、東京都内の区市町村に大きな打撃を与える点である。
さらに、法人住民税法人税割を地方交付税原資として国税化しても、現行の地方交付税制度の中では、全体としての地方交付税が増額される保証は全くない。基準財政需要額と基準財政収入額の差が地方交付税交付金となるので、財政力の弱い自治体にこれまで以上に交付される保証はなく、地方財源が国の財政赤字の解消に用いられるだけとなる恐れすらある。
また、全国知事会の反対を押し切り、平成20年度から実施された「地方法人特別税」は、「三位一体改革」によって削減された地方交付税等の穴埋めとして、「抜本的税制改正(消費税引き上げ時)までの暫定的措置」として導入されたものであり、当然のこととして廃止されるべきものである。
この間の地方財政をめぐる動きは、道州制をめざす一部の知事が、地方財政不足を地方間の「水平的調整」によって解消するとの主張に通ずる動きであり、国の責任をないがしろにするだけでなく、道州制導入にもつながりかねない危険な動きである。
東京自治労連は、都民と自治体労働者の生活と権利を守る立場から、このような地方全体の財源不足を地方間の財政調整で措置しようとする方策に反対し、国の責任で地方財政の確立を行うよう強く求める。