生活保護行政の改善と生活保護職場の大幅な増員を求める取り組みについて
2009年5月27日
東京自治労連中央執行委員会
セーフティネットとしての生活保護制度が機能することが求められている
生活保護世帯はこの10年間で約2倍に増えました。さらに、年末年始の「年越し派遣村」に象徴されるように、雇用情勢の悪化と貧困の拡大により生活困窮者からの生活相談が急増し、生活保護世帯は増える一方です。雇用保険や年金などのセーフティネットが充分機能していないため、本来は最後のセーフティネットである生活保護制度に、その重要な役割が求められています。社会問題となった「水際作戦」と称される生活保護の窓口規制をすることなく、憲法第25条の生存権を保障することが、強く求められています。
厳しい職員体制
この保護世帯の増加に対応して、本来ならそれに見合った人員増がなされてしかるべきです。ところが、各単組の精力的な人員要求にも関わらず、生活保護職場の地区担当員(ケースワーカー)や面接相談員についての人員増が不充分です。そのため、標準数の80世帯という数をはるかに超える世帯を担当している福祉事務所が都内でも数多くあります。しかも、ほとんどの地区担当員の経験年数が1〜2年程度という福祉事務所も多くあり、他法他施策や関連業務の研修等もなかなか行われていない実態があります。80世帯でも多忙であり、ただでさえ、日常業務がこなしきれないところに、急増する新規申請に追われて心身ともに疲弊している、というのが職場の実態です。
この現状に対し、東京都の指導検査や厚生労働省の監査などでも、各自治体に対して、具体的数値として何名不足していると文書で指摘されています。さらに3月18日に厚生労働省は、各都道府県・指定都市・中核市の民生主管部(局)長あてに「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」を通知し、その中で、福祉事務所の体制整備−福祉事務所の人員体制の強化を求め、ケースワーカーの増員、事務補助員、就労支援専門員の整備を求めるとともに、人員体制の整備への財政支援を国として行うとしています。
生活保護制度を正しく運用し、憲法第25条に定められた生存権を保障するためにも、生活保護現場の過重労働を改善することが必要です。生活保護職場の増員について、自治体や議会、生活保護の運動団体からも要望があがっています。
不足する社会的な資源
さらに、職員が困難を抱えるのは、路上生活者や高齢者の生活基盤となる住居や施設が著しく不足している点です。路上生活者が即日、アパート契約をできる状況にない中で、一時的に雨露をしのげる施設や公的に準備された住居が必要です。特に三多摩地域には、路上生活者に対応する公的な施設がありません。前述した厚生労働省の3月18日付の通知「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」でも、ホームレス自立支援センター、ホームレス緊急一時宿泊事業(シェルター)の実施の強化をすることを求めています。
また、高齢化の流れの中で、身寄りがなく家族介護が期待できないケースや、加齢により身体機能が低下し自力での居宅生活が困難となるケースが増えており、受入れ可能な施設や住宅の確保が急務となっています。
3月19日におきた群馬県渋川の高齢者施設「たまゆら」での火災事件もあり、施設の増設についても、自治体や議会、生活保護の運動団体や高齢者団体等から要望があがっています。たとえば、特別区区長会では5月1日に「在宅介護の困難な低所得者向け福祉施策の充実に関する緊急要望」を都知事宛に出しています。また、区議会議長会では、かねてより路上生活者(ホームレス)への住居確保支援対策の拡充を図ることを求めています(「平成21年度東京都の施策及び予算に関する要望書」平成20年8月4日付等)。
路上生活者や高齢者等が地域で安心して生活ができる受け皿づくりを早急に整備するため、各種制度の改善や財政支援の強化を図ることが求められています。
生活保護行政の改善と生活保護職場の大幅な増員を求めて
その中で墨田区職労では人員体制の確保の点で、5月15日に区長要請を行い、「職員体制の改善が必要。年度途中で、直ちに正規の配置は困難なので、当面非常勤職員等を活用してワーカーの周辺業務を分担し、少しでも軽減できるよう検討している。来年度については、人員配置についても改善できるように検討している。(法定数を守る点を)是正する方向で検討したい」との回答を引き出しています。
以上の点を踏まえ、東京自治労連として、生活保護法の適正な実施と生活保護職場の負担軽減の観点から取り組みを進めます。
獲得目標
1.来年度に向けて人員増を獲得するよう運動し、法にもとづく80世帯にひとりのケースワーカーという標準数を確保することを追求します。
2.現時点での過重労働の解消に向けて、年度途中での増員や周辺業務を分担する非常勤職員の配置等を追求します。たとえば、定額給付金や選挙管理委員会等、年度途中の業務量減少職場からの職員配置等を活用し、新年度を待たずに正規職員による応援体制の改善も追求します。
3.生存権の確保のために、住居や施設等の社会的資源の確保を求めます。
具体的な取り組み方
1.東京自治労連として、この問題について社会福祉部会とも連携し、東京都に対し6月中に要請行動を行います。
2.各単組では、福祉事務所における職員数について、標準数が確保されているか、執行体制に問題がないかを検証することとします。
3.検証結果を踏まえて、別紙の【自治体首長宛 要請書ヒナ型】を参考に当局要請を行うこととします。なお、各単組では、生活保護職場の具体的要求をもとに、ヒナ型にある要望を追加・変更することも含めて対応することとします。
4.要求実現に向けて、所属長交渉や、署名活動等も含め各単組で取り組みを進めます。
【自治体首長宛 要請書ヒナ型】市版
2009年 月 日
○○市長
○○ ○○ 様
○○市 職員組合
執行委員長○○ ○○
不況による雇用情勢の悪化等の中、本来の生活保護法の立場に立った
生活保護の適用と、生活保護職場の大幅な増員などを求める緊急要請書
日ごろより、住民福祉の増進のために奮闘されている貴職の活動に敬意を表します。
さて年末年始における日比谷公園での「年越し派遣村」に多くの被解雇者の方が集まったことに見られるように、雇用情勢の悪化により住居や生活の手段を失う人が急増しており、全国的な広がりを見せています。こうした中、各福祉事務所では、昨年12月22日に東京都が各福祉事務所に出した通知「雇用状況悪化に対する福祉事務所の相談援助体制について」に基づいて対応を行ってきました。
この通知の特長は、住居や居所の有無や稼動年齢かどうかなどに関わらず生活保護を適用すべきであり、ことに住居を失うと自立が困難になるため、その前に生活保護を適用すべきというものです。また、路上生活者に対して当面の宿代を支給できると明示するとともに、その宿代とは別に一ヶ月分の住宅扶助費を支給してよいとして、円滑に居宅生活への移行ができるように配慮した点です。
私たちの上部団体である自治労連は、この東京都の通知の水準を全国に普及させることが急務と考え、2月19日に厚生労働省交渉を行いました。生活保護の適正な運用を求めるとともに、当面する「緊急雇用対策」の改善、また、生活保護職場の業務の激増に対応するための福祉事務所の職員増員を求めたものです。
この席上、厚生労働省は「当面の宿代とは別に一か月分の住宅扶助費を計上するのは生活保護の実施要領に反する」と東京都の通知に対して疑問を呈し、そればかりか3月の全国係長会議の席で「生活保護の開始決定は定住できる住居を定めてからしかできない」との見解を表明しました。この見解は、困窮していても住居が見つからないと、いつまでも保護開始決定ができなくなり、当面の宿代・食事代が全く工面できなくなるという、現実を無視した不適切な内容と言わざるを得ません。
社会経済情勢の悪化のもと、生活困窮者から福祉事務所への相談件数が急増しています。今後も生活保護申請者は増大していく見込みです。また、高齢化の流れの中で、身寄りがなく家族介護が期待できないケースや、加齢により身体機能が低下し自力での居宅生活が困難となるケースが増え続けており、受入れ可能な施設や住宅の確保が必要となっています。
福祉事務所のケースワーカー・面接相談員等の人件費は地方交付税で保障され、しかも生活保護受給者の数に応じて人件費を増やすよう「補正」されるものです。
私たちは、今日の失業者・生活困窮者などの上記のような深刻な実態を改善し、本来の生活保護法にそった運用をめざすため、緊急に以下のことを要請します。貴職におかれましては、本来の生活保護の適用を引き続き実施していくためにも、それを支える福祉事務所の職員の配置など実施体制や労働条件改善の実現に向け、積極的に対応していただくようお願いいたします。
記
1.今回の事態に対応するため以下の対策を講ずること。
(1) 福祉事務所への生活保護ケースワーカーの配置について「80対1」の基準による適正な人員配置をすること。そのための所要の人員確保に努めること
(2) ケースワーカー等の専門性の確保、新任研修・専門研修の実施、異動期間などを労働組合と協議すること。経験と熟練に配慮した職員配置を行うこと
(3) 「解雇等により住居の退去を余儀なくされる者の公営住宅への入居について」(平成20年12月18日付国土交通省住宅局長通知)などを活用した公営住宅の空き家の整備や、一時的な受け入れ施設の整備など、生活保護利用者の生活基盤の確立を行うこと
(4) 自治体自身が、新たな仕事と雇用の創設をはかり、失業者の受け入れを率先して行うこと
2.東京都に対して下記のことを要望すること
(1) 公的住宅や社員寮等の空き部屋を緊急対策として確保するよう努めること
(2) ホームレス自立支援事業について、都が主体として広域的な事業展開を図ること
(3) 在宅介護の困難な低所得者向け福祉施策を充実すること
3.国に対して下記のことを要望すること
(1) 増大する自治体負担に対し、国の財政保障を要求すること。ケースワーカー等の人件費については国庫負担金で支出し、国の負担について75%を85%に引き上げること
(2) 東京都の通知に問題があるとする厚生労働省に対し、現実を直視して、路上生活者を救済できるように解釈運用を改めること
(3) 大企業への指導を含め、雇用確保策を強めるとともに、雇用保険を含めた社会保障制度の拡
充によりセーフティネットの整備を図ること
【自治体首長宛 要請書ヒナ型】区版
2009年 月 日
○○区長
○○ ○○ 様
○○区 職員労働組合
執行委員長○○ ○○
不況による雇用情勢の悪化等の中、本来の生活保護法の立場に立った
生活保護の適用と、生活保護職場の大幅な増員などを求める緊急要請書
日ごろより、住民福祉の増進のために奮闘されている貴職の活動に敬意を表します。
さて年末年始における日比谷公園での「年越し派遣村」に多くの被解雇者の方が集まったことに見られるように、雇用情勢の悪化により住居や生活の手段を失う人が急増しており、全国的な広がりを見せています。こうした中、各福祉事務所では、昨年12月22日に東京都が各福祉事務所に出した通知「雇用状況悪化に対する福祉事務所の相談援助体制について」に基づいて対応を行ってきました。
この通知の特長は、住居や居所の有無や稼動年齢かどうかなどに関わらず生活保護を適用すべきであり、ことに住居を失うと自立が困難になるため、その前に生活保護を適用すべきというものです。また、路上生活者に対して当面の宿代を支給できると明示するとともに、その宿代とは別に一ヶ月分の住宅扶助費を支給してよいとして、円滑に居宅生活への移行ができるように配慮した点です。
私たちの上部団体である自治労連は、この東京都の通知の水準を全国に普及させることが急務と考え、2月19日に厚生労働省交渉を行いました。生活保護の適正な運用を求めるとともに、当面する「緊急雇用対策」の改善、また、生活保護職場の業務の激増に対応するための福祉事務所の職員増員を求めたものです。
この席上、厚生労働省は「当面の宿代とは別に一か月分の住宅扶助費を計上するのは生活保護の実施要領に反する」と東京都の通知に対して疑問を呈し、そればかりか3月の全国係長会議の席で「生活保護の開始決定は定住できる住居を定めてからしかできない」との見解を表明しました。この見解は、困窮していても住居が見つからないと、いつまでも保護開始決定ができなくなり、当面の宿代・食事代が全く工面できなくなるという、現実を無視した不適切な内容と言わざるを得ません。
社会経済情勢の悪化のもと、生活困窮者から福祉事務所への相談件数が急増しています。今後も生活保護申請者は増大していく見込みです。また、高齢化の流れの中で、身寄りがなく家族介護が期待できないケースや、加齢により身体機能が低下し自力での居宅生活が困難となるケースが増え続けており、受入れ可能な施設や住宅の確保が必要となっています。
私たちは、今日の失業者・生活困窮者などの上記のような深刻な実態を改善し、本来の生活保護法にそった運用をめざすため、緊急に以下のことを要請します。貴職におかれましては、本来の生活保護の適用を引き続き実施していくためにも、それを支える福祉事務所の職員の配置など実施体制や労働条件改善の実現に向け、積極的に対応していただくようお願いいたします。
記
1.今回の事態に対応するため以下の対策を講ずること。
(1) 福祉事務所への生活保護ケースワーカーの配置について「80対1」の基準による適正な人員配置をすること。そのための所要の人員確保に努めること
(2) ケースワーカー等の専門性の確保、新任研修・専門研修の実施、異動期間などを労働組合と協議すること。経験と熟練に配慮した職員配置を行うこと
(3) 「解雇等により住居の退去を余儀なくされる者の公営住宅への入居について」(平成20年12月18日付国土交通省住宅局長通知)などを活用した公営住宅の空き家の整備や、一時的な受け入れ施設の整備など、生活保護利用者の生活基盤の確立を行うこと
(4) 自治体自身が、新たな仕事と雇用の創設をはかり、失業者の受け入れを率先して行うこと
2.東京都に対して下記のことを要望すること
(1) 公的住宅や社員寮等の空き部屋を緊急対策として確保するよう努めること
(2) ホームレス自立支援事業について、都が主体として広域的な事業展開を図ること
3.国に対して下記のことを要望すること
(1) 増大する自治体負担に対し、国の財政保障を要求すること。ケースワーカー等の人件費については国庫負担金で支出し、国の負担について75%を85%に引き上げること
(2) 東京都の通知に問題があるとする厚生労働省に対し、現実を直視して、路上生活者を救済できるように解釈運用を改めること
(3) 大企業への指導を含め、雇用確保策を強めるとともに、雇用保険を含めた社会保障制度の拡充によりセーフティネットの整備を図ること