2019年東京都および特別区人事委員会勧告について(声明)
2019年10月30日
東京自治労連中央執行委員会
1)2019年10月16日に東京都、21日に特別区の人事委員会がそれぞれ「職員の給与に関する報告と勧告」を行いました。
その内容は公民較差については、東京都が47円・0.01%、特別区がマイナス2,235円・0.58%となり、東京都は較差が少ないため月例給の改定は見送りとなり、特別区は昨年より格差が少ないとはいえ大幅なマイナス勧告となりました。一時金は東京都が0.05月の引き上げ、特別区が0.15月の引き上げとなりました。
「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」(東京都)、「人事・給与制度、勤務環境の整備等に関する意見」(特別区)(以下、ともに「意見」)については東京都も特別区も「人材の確保」について、「AI等を活用できるIT人材」(東京都)、「AI、RPAの技術革新等(中略)を見据え」「それにふさわしい職員像や試験・選考方法を研究」(特別区)などと打ち出しました。東京都人事委員会は長時間是正についてもこれらの新技術の活用にふれました。
2)特別区人事委員会の勧告は各級の最高号給の金額を超えて差額を支給している職員を公民比較から除外して算出したとしていますが、そもそも行政系人事制度の改定に伴って生じた職層構成の違いをふまえた公民比較を行わなかったことに原因があります。
「意見」の中でも職層構成の割合について「制度改正前とほぼ同水準」とした上で、「引き続き中長期的な視野」で計画的に増やすとしていますが、「本年の公民較差算出とその経緯」の中で、「抜本的な制度改正の過渡期に生じた一過性の歪み」が主な要因としているもとで、「一過性のゆがみ」であればこそ早期に解消しなければならず、「中長期的」課題ではなく緊急性を帯びた課題であり、人事委員会が強力なイニシアティブをとるべきです。
3)19春闘の結果、国民春闘共闘や連合、日本経団連の春闘結果も2%前後の賃上げとなっているにもかかわらず、東京都の公民較差がわずかに0.01%という結果は、あまりにも整合性がないと言えます。
東京都の人事委員会勧告は、三多摩の市町村に直接影響します。給料表額の改定がなかったことにより、日の出町、奥多摩町、檜原村は2020年4月1日段階で、地域手当を含めて高卒初任給の時間単価が東京都の最低賃金1013円を下回ることになります。東京地評公務部会・東京春闘共闘の東京都人事委員会要請で指摘した際に、東京都人事委員会は「都知事に対して勧告する」とした上で、「扱いは各自治体の判断」と回答しています。地方公務員に最低賃金法が適用されないのは、最低賃金を下回ることを想定していないからに他なりません。今日の事態を受けて3つの町村は独自の対応をとらざるを得ず、今回の東京都の勧告は重大な事態を招いたことが明らかです。
4)東京都も特別区も地域手当は国と同じ20%としていますが、高卒初任給にあたる給料表額は国の150,800円に対して、東京都がマイナス5,200円の145,600円、特別区がマイナス3,700円の147,100円となっています。初任給において大幅な格差が存在していることについて、なんの考慮もないことは問題です。
さらに民間賃金の全国平均100に対し東京は124.5であるにもかかわらず、国家公務員100に対し都職員が101.4となっています。この調査結果を見ても東京都・特別区人事委員会の調査結果は納得できるものではありません。
5)各人事委員会が示した標準生計費の一人世帯は東京都が135,850円。特別区が142,510円です。この額を厚生労働省の主張する1ヶ月21日、1日8時間で割り返すと、東京都809円、特別区848円と東京都の最低賃金1013円を下回ります。仮に標準生計費が2割程度の税金や厚生福利費を差し引いた結果だとすれば、一月の総支給額は東京都169,813円、特別区178,138円となり、時給は東京都1,011円、特別区1,060円であり、東京都は最低賃金以下、特別区は最低賃金にかなり接近しています。標準生計費が最低賃金を下回ること自体が、標準生計費の合理性を欠いているといわざるを得ません。
6)東京都・特別区人事委員会の「意見」では、東京都も特別区も「人材の確保」について、日本経団連の推進するSociety5.0に関する戦略を推進するための人材の確保、試験制度・昇任制度などについて検討することを明記しています。さらに東京都人事委員会は長時間労働の是正についても、新技術の導入で実践するよう求めています。
私たちは一律に導入を否定するものではありませんが、新技術の活用で住民の基本的人権を守り、住民福祉の増進につながるのか、さらに私たち自治体労働者の権利が守られ、より住民のための仕事につながるのか、自治体と自治体職員の専門性、公正性、公平性が確保されるのかを十分に吟味しなければならないと考えます。ましてや職員削減につながることは絶対に認められません。
7)今年の勧告を受け、本格的に賃金確定闘争が始まります。東京自治労連は職場組合員の団結を基礎に、交渉組織の都労連・特区連のたたかいに各単組・局支部が主体的に結集します。
三多摩の各単組では、月例給・一時期の引き上げに向けて統一的に取り組みを強化します。総務省や東京都の不当な干渉を許さず、自主解決を基本に賃金・労働条件改善に向けて全力でたたかうものです。
また、地域住民の福祉の増進、基本的人権を守るために、住民生活の砦としての自治体の役割を発揮する執行体制の確立に向け、予算人員要求闘争を一体のものとしてたたかい、同時に社会保障制度の拡充、憲法改悪阻止のたたかいなどを前進させ、秋の拡大月間で組合加入と次世代育成の取り組みに結合させてたたかいを強化するものです。
以上