2014年東京都および特別区人事委員会勧告について(声明)
2014年10月15日
東京自治労連中央執行委員会
(1)2014年10月8日に特別区、9日に東京都の人事委員会がそれぞれ「職員の給与に関する報告と勧告」を行いました。
その内容は、東京都が521円・0.13%、特別区が809円・0.20%のプラス改定となり、15年ぶりの引き上げ勧告となりました。一時金は都区ともに、0.25月引き上げ、年間4.2月と、7年ぶりの引き上げとなりました。その一方で、国や他団体との均衡を理由にして、国の「給与制度の総合的見直し」に関わる地域手当の引き上げや給与水準の大幅引き下げを勧告しました。
さらに東京都においては現在の3級・係長職級と4級・課長補佐級を統合して「課長代理級職」とし、その「新たな監督職の給与」として新3級を設置することとしました。また、「昇給制度の見直し」として能力・業績をよりきめ細かく給与に反映する観点から、昇給区分を見直すことに言及しました。
特別区においては、勤務成績を一時金により反映させる成績率の一律拠出割合の見直し、昇給制度への勤務成績・業績評価の反映と降給制度の検討に言及しました。
(2)私たちは春闘期から全労連・自治労連に結集し、官民一体で労働者の賃金大幅引き上げと、最低賃金引き上げの闘いに全力をあげる中でプラス改定の人事院勧告を引き出しました。東京においては、東京地評・東京自治労連と民間労働組合の闘いが民間賃金と最低賃金を引き上げ、東京の賃金相場を構築し、今時人事委員会勧告につながりました。また、国においては50歳代後半の職員と再任用職員の給与改定が行われない中でも、都区においては給与のプラス改定を行うこととしたことも、私たちの闘いの成果です。
しかし2015年4月からの大幅な給料表の引き下げと、根拠が希薄な地域手当をさらに引き上げることは、年金や退職金の削減などによる生涯賃金の大幅な削減となり、断じて容認できません。また、多摩の市町村職員の地域手当は東京都の水準を大きく下回っており、引き下げられた都の給料表の横引きとなれば、直ちに市町村職員の賃金引き下げにつながります。これは島嶼や都外公署においても同様です。賃金の引き下げは断じて認められません。
(3)今年の勧告では官民調査企業のうち100人未満事業所の割合は東京都が13.3%(2006年は5.5%)、特別区は13.5%(同年5.07%)です。企業規模別の民間賃金の状況をみると、民間の事務主任の所定内給与は1000人以上事業所に比べ50人以上100人未満事業所は東京都で9万556円、特別区で8万2,686円も低くなっています。公民比較企業規模を「50人以上」に引き下げたことが、大幅な賃金引き上げを押さえ込む役割を果たしたことは明らかです。
さらに東京都人事委員会が示した「東京都と全国の給与水準比較」では国家公務員100に対する指数は東京都職員が102.7に対し、「民間賃金の地域差」では全国100に対し東京都の民間賃金は123.3です。民間賃金は全国平均に比べて東京が大幅に上回っており、今年の引き上げとの矛盾を感じざるを得ません。しかも消費税増税による物価上昇と支出増をふまえれば、都区の公務労働者の生活を改善できる賃上げにはほど遠い水準といわざるを得ません。
(4)東京都の人事委員会報告は、「新たな監督職の設置」、「昇給区分の見直し」などについて言及しました。これらは現在、都側と交渉中である事項について報告で打ち出すという極めて不当なものです。人事委員会の第三者機関の役割を放棄するものといわざるを得ず、断固抗議するものです。
年金支給開始年齢の繰り延べによって、2015年4月から1年間無年金となる再任用職員の給与水準については、今年も改定を見送り引き続き検討するとしました。再任用職員の生活を守るべき東京都や特別区の人事委員会がその責任を先延ばしすることは許されません。
職務環境整備等について、能力・業績にもとづく人事管理制度の強化については熱心に述べているものの、育児・介護などを含めた家庭生活との両立、超過勤務の縮減、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス・パワーハラスメント・セクシャルハラスメントなどへの対応については具体的な打ち出しがなく、極めて不十分となっています。これらの方策を打ち出すことこそ人事委員会が行うべき職務です。
(5)今年の勧告を受け、本格的に賃金確定闘争が始まります。東京自治労連は職場組合員の団結を基礎に、交渉組織の都労連・都庁職・特区連の闘いに各単組・局支部が主体的に結集します。
公務公共関係労働組合及び三多摩の単組では、月例給・一時金の引き上げ早期実施に向けて統一的に取り組みを強化します。一方、給料表の都並引き下げや地域手当の改悪には断固として反対し、総務省や都の不当な干渉を許さず、自主解決を基本に賃金・労働条件改善に向けて全力で闘うものです。また、地域の住民福祉の切り下げを許さず、住民生活を守る執行体制を確保する予算人員要求闘争を一体のものとして闘い、消費税再増税阻止、労働者派遣法・労働法制改悪に反対し、社会保障と憲法の改悪を阻止し、集団的自衛権の具体化、特定秘密保護法の実施を許さない闘いなど、秋季年末闘争の前進をめざして闘いを強化するものです。
以上