公務員部長通知「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(平成26年7月4日付)への対応と活用について
2014年7月16日
東京自治労連中央執行委員会
総務省は2014年7月4日に総務省自治行政局公務員部長名で、「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(以下、「7・4公務員部長通知」という)を各地方自治体と人事委員会に通知しました。平成21年4月24日付総務省自治行政局公民部公務員課長・給与能率推進室用通知「臨時・非常勤職員及び任期付短時間勤務職員の任用等について」(以下、「21年通知」という)に基づく対応が不十分であること、裁判例や法令改正などの新たな動きもあることから、この通知に代えて「7・4公務員部長通知」を出すこととしたとしています。
この中では「常勤の職員にあたるか否か」の裁判例、「時間外勤務に対する報酬の支給」、「非常勤職員に対する通勤費」支給などが掲げられています。これらはこの間の私たちの運動、裁判での判例、国会論戦などによって出されたものであり、闘いの到達点であるといえます。その一方で、これまでの闘いの到達点による指摘を回避することを目的として、「任期付短時間勤務職員」の導入を促し、現在の臨時・非常勤職員の雇い止めにつながる内容も示されています。「7・4公務員部長通知」を活用して要求を実現するとともに、臨時・非常勤職員の雇い止めを許さないために、各単組で東京公務公共一般の各支部と密接に連携して闘いをすすめることが求められています。以下、「7・4公務員部長通知」の活用すべき内容と阻止すべき内容を明らかにし、当面の要求と闘いを提起します。
- 「7・4公務員部長通知」の留意すべき内容について
(1)「7・4公務員部長通知」を活用すべき事項(【 】内は、「7・4公務員部長通知」の項目)
@ 「臨時・非常勤職員の募集採用にあたっては」「年齢や性別にかかわりなく均等な機会を与えることに留意すべき」となっており【T−1−(2)−A】、再募集による更新をしなければならない場合にあっても、年齢、性別等の制限を設けさせず、実際の経験に基づく「能力実証」を最重視させることが重要です。 A 「常勤の職員にあたるか否か」は「地方公務員法上の任用根拠から直ちに定まるものではないとの趣旨の裁判例が存在することも併せて留意が必要である。」としており【T−2−(1)−@−ア】、この間の私たちの闘いが通知文に盛り込まれた形です。一時金・退職金などの各種手当ての要求闘争に引き続き生かせる内容です。 B 「当該所定労働時間を超える勤務を命じた場合においては、当該勤務に対し、時間外勤務手当に相当する報酬を支給すべき」であり、労働基準法第37条の規定に基づき「割り増しされた報酬を支給する」としています【T−2−(1)−A】。実際に臨時・非常勤職員が超過勤務を行っている実態があり、臨時・非常勤職員についても超過勤務命令簿などの超過勤務手続きを適応させて、正しく支払わせることが重要です。 C 「非常勤の職員に対する通勤費用相当分については費用弁償として支給することができる」ので、その場合「条例の規定を整備するなどして適切に対応すべき」となっており【T−2−(1)−B】、非常勤職員に対する交通費が支払われていない自治体においては、直ちに支払いの制度化に向けて活用することができます。 D 有給休暇の付与に係る「継続勤務」の要件については、「勤務の実態に即して判断すべきものであるので、期間の定めのある労働契約を反復して短時間労働者を使用する場合、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではない」としています【T−2−(2)−A】。有給休暇の「連続勤務」要件で通算して算定する要求に対して活用することができます。 E 「社会保険及び労働保険の適用」について、「事実上の使用関係が中断することなく存続していると、就労の実態に照らして判断される場合には、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う必要」があるとされているとしており【T−U−(3)】、被保険者資格を喪失させない根拠として活用できます。 F 「地方公務員の育児休業等に関する法律(地方公務員育児休業法)及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」は「一定の条件を満たす非常勤職員」にも適用されるとし、「介護休業、短期の介護休暇、子の看護休暇、所定外労働の免除の義務化、時間外労働の制限、深夜労働の制限」は、「勤務期間等一定の条件を満たす非常勤職員にも措置され、「育児休業や部分休業についても」「勤務時間等一定の条件を満たす非常勤職員にも適用される」としています【T−2−(4)−B】。
ここに掲げられている「介護休業」「短期の介護休暇」「子の看護休暇」「所定外労働の免除」「時間外労働・深夜労働の制限」「育児休業」「部分休業」については、休暇制度や労働時間改善の要求に活用します。G 一般職の臨時・非常勤職員については地公法上の研修や厚生福利に関する規定が適用されるとしています【T−2−(4)−C】。専門業務に必要な研修や、福利厚生に関わる各自治体の制度について臨時・非常勤職員にも享受させるための取り組みに活用します。 H 再度の任用であっても、新たな任期と前の任期との間に一定の期間を置くことを直接求める規定は地方公務員法をはじめとした関係法令において存在しないとしています。そして募集にあたって、任用の回数や年数が一定数に足していることのみを捉えて、一律に応募要件に制限を設けることは、平等取り扱いの原則や成績主義の観点から避けるべきと述べています【T−4―(2)】。雇用中断期間をもうけるなどが不当であり、直ちに是正を求めます。 I 任期付職員の給与について、「公的な資格を有するものなど一定の専門的な知識経験を有する人材の確保のため特に必要な事情が認められる場合については」、「号給の増設又は同種の業務に従事する常勤職員が用いる給料表の使用を条例に規定することにより、昇給や過去の経験を踏まえた号給の決定を行うことも否定されないものである。」としています【U−1−(2)−C】。任期付き短時間勤務職員を導入している自治体では、給与制度改善に活用します。
(2)「21年通知」同様に引き続き活用できるもの
@ 「労働安全衛生法、男女雇用機会均等法等の労働関係法令は」、「臨時・非常勤職員についても適用がある」としており、労働関係法令について十分に活用することは従来通りです。とりわけ労働安全衛生管理の自治体の要綱で、管理対象が「正規職員」に限っているところがあります。これらについては明らかに間違いであることを明確にした取り組みに活用することができます。 A 労働安全衛生法に基づく健康診断は、労働安全衛生規則の「常時使用する労働者」に該当する場合には、健康診断を行わなければならないとなっています。労働安全衛生規則の「常時使用する労働者」は1週間の勤務時間等にかかわらず、定期的に使用する労働者を意味しており、これらを明らかにしながら取り組みに活用します。 B 女性労働者について母子保健法の規定による「保健指導又は健康検査を受けるために必要な時間の確保が定められている」としており、制度の不十分な自治体での活用が求められます。 C 同一人が同一の職種の職に再度任用される場合であっても、職務内容や責任の度合い等が変更される場合には、異なる職への任用であることから、報酬額を変更することはあり得るものであるとしており、給与の経験加算制度の確立に向けて引き続き活用します。
(3)臨時・非常勤職員の雇い止めにつながる可能性のあるもの
「7・4公務員部長通知」では、本格的な業務に従事することができ、かつ、複数年にわたる任期設定が可能である場合には、「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」(以下、任期付法)に基づく「任期付き職員制度の積極的な活用」について検討するように求め、住民サービスの提供時間の延長や繁忙期に対して、「従来の常勤職員に加え、臨時・非常勤職員を配置して対応していた場合に、当該臨時・非常勤職員に替えて任期付き短時間勤務職員を任用することも可能である。」としています。
これらの文書を出した背景には消費生活相談員の団交権確立に向けた闘いで、東京都が団交に応ずる義務があるとした最高裁の判断が下されたことが大きく影響しています。この判断を受けて臨時・非常勤職員の権利拡大に危機意識を持った総務省が、任期付短時間勤務職員を活用し、臨時・非常勤職員の雇い止め、さらには任期で入れ替えられるよう労働者を便利に使うための仕組みの拡大を狙ったものです。
不当な身分の切り替えに対しては、これまでの身分での実績、経験による専門性の蓄積、恒常的業務であることを明らかにしながら、雇い止めへの道を断固阻止するために闘うことが求められます。 - 具体的な取り組み
(1)以下の要求を単組の到達点に併せて整理し、早急に要求提出・交渉を行い、実現に向けて取り組みます。
1)「7・4公務員部長通知」で新たに明確にされた点での要求
@ 臨時・非常勤職員の募集採用・再募集にあたって年齢、性別等の制限を設けさせず、実際の経験に基づく「能力実証」を最重視すること。 A 「常勤の職員にあたるか否か」は「地方公務員法上の認容根拠」ではなく、実態を踏まえて判断するものであり、一時金・退職金などの各種手当を支給すること。 B 臨時・非常勤職員についても超勤務命令簿などの超過勤務手続きを正規職員同様に適用し、超過勤務手当を正規職員同様に支給すること。 C 非常勤の職員に対する通勤費用相当分を支給すること。 D 「介護休業」「短期の介護休暇」「子の看護休暇」「所定外労働の免除」「時間外労働・深夜労働の制限」「育児休業」「部分休業」を臨時・非常勤職員についても保障すること。 E 恒常的・本格的業務に従事する臨時・非常勤職員の専門業務に必要な研修を受けさせ、福利厚生に関わる各制度を正規職員同様に臨時・非常勤職員にも適用すること。 F 再度の任用について、新たな任期と前の任期との間に一定の期間を置くことを直接求める規定は地方公務員法をはじめとした関係法令において存在せず、任用の回数や年数を理由に応募要件に制限を設けることは認められません。1ヶ月等の雇用中断期間を直ちにやめること。また、任用期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いても「連続勤務」として、有給休暇、年休の繰り越し、「社会保険及び労働保険の適用」について連続した扱いとすること。 G 任期付職員の給与について、号給の増設又は同種の業務に従事する常勤職員が用いる給料表をしようするなど、昇級の実施、過去の経験を踏まえた号給の決定を行うこと。
2)「21年通知」からの引き続きの要求
@ 労働安全衛生法等の労働関係法令は、臨時・非常勤職員についても適用されるものであり、労働安全衛生管理対象は正規職員に限られず、臨時・非常勤職員を対象とした取り組みを行うこと。 A 労働安全衛生規則の「常時使用する労働者」とは1週間の勤務時間等にかかわらず、定期的に使用する労働者を意味しており、これに該当するすべての臨時・非常勤職員の健康診断を実施すること。 B 母子保健法に規定されている「保健指導又は健康検査を受けるために必要な時間の確保」を臨時・非常勤職員についても正規職員同様に適用すること。 C 非常勤職員の報酬の経験加算制度を確立すること。 (2)臨時・非常勤職員の任期付短時間職員への切り替えに対して
「7・4公務員部長通知」では特別職非常勤職員について、「主に特定の学識・経験を必要とする職」であり、「非専務的に公務に参画する労働者性の低い勤務様態」であり「地公法の適用が除外されている」としています。その上で「職務の内容が補助的・定型的」「一般職の職員と同一と認められるような職」「労働者性の高い職」については、「本来一般職として任用されるべき」として、一般職である地公法17条の非常勤職員への切り替えの可能性も示唆しています。しかし、特別職非常勤の「留意点」を正確に判断すれば、現在の本格的・恒常的業務に従事する特別職非常勤職員については、一般職の正規職員として任用するべき性格であり、勤務時間がフルタイムを要しない場合には任期の定めのない短時間勤務職員が適切であることを示しています。
一方、一般職非常勤職員(地公法17条)については、「任期を限った任用を繰り返すことで事実上任期の定めのない常勤職員と同様の勤務形態を適用させるようなことは避けるべきである。」と明言しています。すでに「地方公務員の短時間勤務のあり方に関する研究会報告書」(平成21年1月23日付)で、@地公法第17条は必ずしも非常勤職員の任用根拠として明確に規定されていない、A任期を限る特段の必要がある、B任期の定めのない常勤職員による公務の運営の基本に反しない限り許されると明確に述べています。さらに説明の中では「凡例・行政実例上、任期の定めのない常勤職員の採用の原則に対する例外として労働法制との整合性も考慮しつつ認められてきた類型」であり、「第17条を根拠として任期を限った任用を漫然と繰り返すことで事実上任期の定めのない常勤職員と同様の勤務形態を適用させるようなことは、臨時的任用の場合と同様、厳に避けるべき」と明言しています。これらの点から見ても、本格的・恒常的業務に従事している特別職非常勤職員を17条の一般職非常勤に切り替えることは認められません。
それが故に「任期付職員制度の活用について」の項で、「最適と考える任用・勤務形態の人員構成を実現するための手段」で、「『本格的業務に従事するもの』と位置づけられ、相応の給与や休暇等の勤務条件が適用される」として、現在臨時・非常勤職員で対応している事例について「本格的な業務に従事することができ、かつ複数年にわたる任期設定が可能である場合には、任期付職員制度の積極的な活用について検討されたい」としているのです。
これらは現に存在する臨時・非常勤職員について、とりわけ繰り返し更新している職を対象に、3年、または5年の任期で任用が終了する任期付短時間勤務職員へと切り替えようとするものです。
しかし「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」では、任用の条件として第五条第1項において「一定の期間内に終了することが見込まれる業務」、「一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務」としています。あわせて同条第2項で「サービスについて、その提供時間を延長し、若しくは繁忙時における提供体制を充実し、又はその延長した提供時間若しくは充実した提供体制を維持する必要がある場合」とし、第3項で「育児休業」「介護休業」などに伴う場合に任用できるとしています。
「任期付法」の趣旨から任期付短時間職員の採用については、「一定の期間内」、サービスの「提供時間の延長に関わる場合、育児・介護休業などの場合に限られており、その他の場合については認めていません。なぜならば常勤の正規公務員で業務を遂行することが基本だからです。
もともと労働者性の極めて高い特別職非常勤職員を不正常な形で業務に従事させてきたことに誤りの根幹がありますが、これらの職員を「7・4公務員部長通知」の趣旨に沿って対応するとすれば、これまで述べてきたように正規公務員へ採用をするか、均等待遇による任期の定めのない短時間勤務の公務員制度での対応しかありません。ですから「7・4公務員部長通知」は労働基本権を行使して闘う労働者・労働組合の排除を狙ったものであることは明らかです。合理性のある制度的保証、及び雇用の確たる保証のない中では、現に労働基本権を持った労働者としての権利行使を行っており、公共業務を十分に果たしている特別職非常勤職員が公務に従事している以上、現在の状態を変えることは労働法上認められません。
【対応の基本と当面の取り組みについて】
1)対応の基本
現在の非常勤職員のほとんどが恒常的・本格的業務に従事していることを明らかにして、任期付職員ではなく常勤の正規職員を要求することが基本となります。かりに恒常的な職でありフルタイム勤務の必要が求められない場合には、均等待遇による任期の定めのない短時間勤務職員を要求することが基本です。
2)当面の取り組み@ 提案された際には、労使協議と労使合意が前提であることを明確にします。 A 特別区については特区連としての合意がされていない中での協議自体が認められないことを明確にします。 B 東京都や市町村においては、上記の内容を明らかにしながら不当な切り替えに反対して闘います。
以上