多摩市公契約条例の制定にあたって(コメント)
2012年1月13日
東京自治労連書記長 森田 稔
多摩市議会は2011年12月21日、第4回定例会において多摩市公契約条例を、東京で初めて採択しました。
多摩市において公契約条例が採択されたのは、長年にわたる東京土建多摩稲城支部の公契約適正化運動の取り組み、公契約条例を中心課題の1つとして取り組んできた東京春闘共闘の自治体キャラバン、多摩稲城労連、東京土建多摩稲城支部、多摩市職などが共同で行ってきた学習会やシンポジウムなどの取り組みなどが実を結んだものです。さらに公契約条例制定を公約として確認し、幅広い市民・労働組合とともに取り組んだ多摩市長選挙で、阿部裕行市長を誕生させたことが情勢を大きく動かしました。市の内部検討委員会に組合へ参加依頼があり、多摩市職も参加して検討にかかわってきました。その後「多摩市の公契約制度に関する審査委員会」での検討が進められ、最終的に条例案として結実したものです。
多摩市の条例は次のような特徴があり、高い水準を確保してきているといえます。第一に労働者等の生活の安定を図り、公共サービスの質の向上と地域経済・地域社会の活性化を図ることを目的として、多摩市が締結する請負契約に基づく業務とあわせて指定管理者による管理業務も対象としたことです。第二に受注者又は下請負者との請負契約によって業務に従事する者(いわゆる1人親方)、派遣労働者なども対象としたことです。第三に予定価格について、工事・製造が5000万円以上、請負が1000万円以上、さらに市長又は教育委員会が必要と認めたものについて対象としました。第四に受注者が遵守すべき労働法制をはじめとした各種法令を明確にしたことです。第五に努力義務とはしつつも直接業務に従事する労働者の継続雇用について明記しました。第六に労働報酬下限額について、工事・製造については農林水産省及び国土交通省の公共工事設計労務単価(基準額)を基本とし、それ以外の業務委託等については当面生活保護水準を下回らない額としました。第七に労働者の代表も構成員となっている「多摩市公契約審議会」が、賃金決定の過程で市長に意見を述べることができることです。
多摩市での公契約条例制定は、東京における公契約条例制定の流れを大きく前進させるものとして重要な成果です。現在国分寺市でも具体的な条例案が検討されており、世田谷区では「世田谷区公契約のあり方検討委員会」が設置され、足立区でも「公契約制度検討委員会」が設置されて検討が始まっています。これらの動きを促進させるとともに、その他の小金井市などのように条例制定をめざしている自治体や、それ以外の自治体についても大きな影響を及ぼし、各単組ですすめている公契約適正化運動の追い風ともなるものです。
東京自治労連はこれまで、「東京都入札契約制度改革研究会 第一次提言に対する見解と意見」(2009年3月25日付)、「公契約運動に関わる当面の取り組みについて」(2009年11月26日)を東京土建一般労働組合と共同で発表し、「東京土建との共同による公契約闘争の具体化について」(2010年2月1日)にもとづいて取り組みをすすめてきました。また、今年で8回目になる東京春闘共闘の自治体キャラバンにも積極的に取り組み、公契約適正化の運動を単組とともに取り組んできました。東京自治労連は今回の多摩市の公契約条例制定を力に、いっそう東京での公契約適正化運動と公契約条例制定に向けた取り組みを推進するものです。
以上