08年3月末に向けた「現業職員等の給与見直し計画」
策定と公表に対する対応方針
2008年3月12日
東京自治労連中央執行委員会
1.不当な総務省通知と自治体の状況
 政府・総務省は、都道府県・政令指定都市に対して、現業職場の実態を無視し、国の現業職とのラスパイレス比較や民間類似職場賃金による一面的な比較の攻撃を強めています。
 総務省は、昨年7月6日「技能労務職員等の給与等の総合的な点検の実施について」を自治体等に通知し、「技能労務職員等の給与等について、総合的な点検を実施し、適切に対処すること」を指示しました。
 さらに、昨年12月27日、総務省自治行政局公務員部から都道府県総務部(局)長宛に、「技能労務職員等の給与等の点検に係る調査およびヒアリング実施について」の事務連絡を出しました。昨年7月6日の通知について、進捗状況の調査とヒアリングが2008年1月末から2月上旬にかけておこなわれ、さらに強く推し進めようとしています。すでに1月から2月にかけて、一部の自治体ではすでにホームページ上に通知に基づく「取組方針」を掲載する動きが始まっており、全ての自治体において、08年3月末日までに「取組方針」の策定・公表を、と指示を強めています。
 自治労連は、総務省が現業賃金の地方民間準拠押しつけや乱暴な民間賃金比較をもとに、「計画策定と公表」の指導を強めていることに対して、労使自治を尊重し、現業賃金削減を許さない、機械的な「計画策定と公表」をやめるよう求めた団体署名を総務省へ提出しました。
 各自治体においても、具体的な削減攻撃が始まっていますが、すべての単組で要求書を提出・交渉し、民間部門との不当な比較資料の公表を阻止し、計画策定・見直しについて労使合意を基本に取組みを進めることが現時点での重要課題となっています。
 07年確定闘争において、特別区では現業労働者に対する賃金攻撃が行われました。特別区長会は、総務省「指導」のみを根拠として、合理性ある説明さえ無いままに、11月21日の団体交渉で、唐突に最大10.8%もの大幅な賃金削減となる「業務職給料表」改悪提案を行い、使用者としての誠意ある協議も行わず、11月中の決着を求めるなど極めて不当な姿勢に終始しました。最終的に、今後5年間程度の給与水準確保を前提に、業務職給料表の9%削減改悪を受け入れざるをえませんでしたが、23区統一交渉と23区職労の団結を守り、退職手当支給率での経過措置、昇格メリットの拡大へ向けた協議の確認、特別昇格率拡大など一定の要求の前進を導きだしました。
 東京都は、現業賃金問題については、確定闘争での奮闘により昨年も継続協議となりましたが、今年の確定闘争では重要な課題となることは必至です。
 三多摩の自治体においても、国や都・区の動向をみて、現業賃金・労働条件改悪の動きが始まっています。
 東京都は2月13日、総務省通知の実践として「技能労務職員に関する総務省からの助言について」を通知しました。通知内容は、1.「取組方針の策定」として、08年3月末までに策定、公表すること。2.「技能労務職の新たな採用」では、退職不補充を基本とし安易に採用しないこと。さらに、業務が増え増員が必要な場合は民間事業者を活用すること。3.「技能労務職の給与水準」では、取組方針に「同一又は類似職種の給与等の考慮」を明記した上で、現行の技能労務職の給与水準を見直すこと。さらに、技能労務職の給料表については、民間事業者の給料とも比較し適正な水準となるよう不断の見直しを行うこと、としています。
 
2.総務省通知の真の狙いと背景
@ 「公務員制度改革」の一環として、退職・欠員不補充と新規採用の徹底した抑制、民間委託化、指定管理者制度や独立行政法人化によって現業職場を縮小し直営から切り離すことを最終目的にしています。
A 国並み行政(二)水準への引き下げを経過的に進めながら、行政職との賃金格差を拡大し、民間市場の競争導入を自治体職場に持ち込み、公務員の賃金決定原則や人勧体制からも切り離し、不当な賃金削減をすすめるものです。
B 民間との不当な比較資料により、住民に対して公務の非効率性を強調することによって自治体リストラを推進する契機とするものです。
C 労働基本権回復の運動を先送りし、協約締結権を持つ現業・企業職場に働く自治体労働者を弱体化・縮小させることを狙うものです。

3.総務省による、「調査・ヒアリング・ホームページ掲載」の不当性を明らかにする
1) 調査票の問題点
 総務省は、総合的な取組み状況を調査するとし、「取組方針」の進捗状況を第一の項目で必ず回答をする様求めています。現業職員数については、職員数の今後の見込み・新規採用予定数を記入させ、新規採用を抑制させる圧力をかけています。地域手当については、国並への引き下げを迫っています。さらに給料表については、国公行(二)水準への引き下げを迫っています。昇格・昇給・退職時昇給についても見直しの有無を調査しています。
2) 調査票をもとにしたヒアリング
 調査票をもとに行われたヒアリングは、都道府県や政令市に直接行い、都市職については市町村課に行われています。きわめて少数となった新規採用を行っている政令市などでは、新規採用を、具体的に何も決まっていない状態で継続することは問題があると指摘し、新規採用しないことを前提にした強圧的態度に終始しています。これは地方自治法への乱暴な干渉・介入攻撃であり、極めて違法な行為だと言えます。また、現業賃金について、給与水準は、「最低、国公行(二)水準の導入、国並み適用への切り下げが必要である」と攻撃を強めています。
 これは、協約締結権をもつ現業職員とのこれまで築いてきた賃金・労働条件の決定に関する労使自治に不当に干渉・介入するものです。
 今回の総務省の高圧的な指導に自治体当局が従うことなく、地方自治の自主性を持つとともに、現業職員のこれまで果たして来た役割と今後も必要とされる職場・職種であることを明らかにしながら、自治体当局は、総務省に毅然とした対応をするように求めていくことが急務となっています。
3) 「取組方針」のホームページ掲載
 現業賃金等の見直しについての「取組方針」が、すでにいくつかの自治体で策定されホームページに公表・掲載されはじめています。
 新規採用者の抑制をすでに行っていること、退職不補充により現業職員は今後削減の方向にあること、臨時職員を活用すること、民間委託などにより事務事業を見直すこと、給与についても行(二)表の導入がすでに行われていること、民間の給与との均衡や国、県の同種の職員給与を参考に、適正な給与制度・運用をめざすとして削減をさらに推し進めることが共通の内容となっています。労使の話し合いを必ず求め、一方的な策定と公表をさせないなど単組での取組が必要です。

4.当面の闘いの具体化
1) 一方的な策定・公表は労使自治を破壊
 この間、交渉・協議などで具体的な問題点の追求を行った自治体では、当局自身問題点を認めざるを得ず、「見直し計画」の策定や公表に関しては「労使協議なしの公表は行わない」「慎重に対応する」との見解が表明されています。
 現業職員の賃金は公務員賃金の一環として、地公法57条、地方公営企業法37条から39条などの規定により、平等・公平の原則、生活費原則、同一労働同一賃金などをふまえて、労使の自主的な交渉により決定されるべきものです。労使合意もなしに、不合理な資料を使って一方的に比較・公表することは、住民の誤解を招くものであり、労使自治を破壊するものです。
 しかし、「給与情報の民間比較を加えた開示」については、「総務省の調査様式は変更されており、対応せざるをえない」「改悪の意図はないが、公表はせざるをえない」とする自治体当局もあり、3月年度末にむけたいっそうの取組強化が求められています。
2) 08年3月末までの対応について
@ 各単組は、要求書(要求書モデル参照)の提出を行い、労使交渉を強化しましょう。
A 交渉では、「見直し計画の策定と公表」は、労使交渉事項で労使合意が必要であり、一方的に策定・公表することは認められないことを明確にしましょう。
B 次項の「交渉時における追及ポイント」を参考に交渉を行いましょう。
C 「取組方針」の策定や公表について避けられない場合は、賃金制度、人員確保、業務運営のあり方など、基本的に合意しうる内容にとどめ、今後も引き続き労使合意を追求し交渉を継続しましょう。
3) 交渉時における追及のポイント
 「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」データは、官・民給与の比較データとしては、問題点が多く、不合理な比較となり、住民の理解と納得が得られるものではありません。
 賃金センサスは都道府県内のデータであり、調査方法・サンプル数など、市町村ごとの正確な比較は困難です。それを根拠にすることは問題であり、総務省の民間データは都道府県単位となっています。さらに、清掃・用務では全国データしかなく、比較対象の根拠に乏しい内容です。
@ 企業・事業所規模の問題
 人事院の民間給与実態調査は企業規模50人以上の事業所を対象としていますが、賃金センサス は10人以上規模が対象であり、自治体の規模との比較自体に不合理さがあります。
A 雇用形態の問題
 人事院の公務員給与調査では臨時・非常勤職員は除外されていて、賃金センサスではパートやアルバイトも含まれています。(日々または1ヵ月以内の期間を定めて雇われている労働者のうち、4月及び5月にそれぞれ18日以上雇用された期間工や臨時職員も含まれています)これを正規の現業職員と比較することに合理性はありません。
B 勤続年数・経験年数比較について
 公務員の場合は住民への公共サービスとの関係で、長期勤続の場合が多く、民間では必ずしも長期勤続が保障されていないため、勤続年数・経験年数の差が給与の差となっています。年齢での給与比較では合理的比較とは言えません。
 技能労務職員全体の経験年数平均は25.5年(総務省06年4月給与実態調査) ですが、民間7職種では8.3年から13.7 年です。勤続年数・経験年数が同じでなければ比較できません。
C 職務・仕事内容及び責任について
 自治体における現業職場の仕事では、住民の切実な願いに応える立場から、その内容の拡充や公務としての専門性発揮などの取組が不断に進められています。こうした中で、「類似職種」として賃金を単純比較することは、公務の専門性や技術の熟練、それを進めてきた現業労働者のがんばりを否定するものです。
4) 春闘期の闘い
 08春闘は貧困を撲滅させる闘いです。公務職場に差別と分断を持ち込む現業職員等の給与見直しは、職員の賃金削減にとどまらず、公務職場の民間委託化の推進により官製ワーキングプアを作り出すことにつながります。退職・欠員不補充を打ち破り、新規採用職員の必要性を認めさせ、計画的・継続的な現業職員の採用を勝ち取るとともに、自治体における現業職場の役割を明確にさせることが求められています。
 現業職員の賃金は公務員賃金の一環として、平等・公平の原則、生活費原則、同一労働同一賃金などをふまえて、労使の自主的な交渉により決定されるべきものです。不合理な資料を使って一方的に比較・公表することは、住民の誤解を招くものであり、労使自治を破壊するものです。単組は自治体との交渉を配置し、労働組合との合意なしに一方的に公表することがないよう申し入れ、合意の上で対応することを確認していきましょう。
 08春闘での要求闘争と結合して運動を進めましょう。
5) 職場学習を推進し闘争体制の確立・継続を
@ 現業職場を先頭に、すべての支部・分会単位で学習会を行うとともに、決起集会や職場オルグなどをすすめましょう。
A 最前線で住民への公共サービスを推進する、公務としての現業労働の意義、役割と専門性、継続性が求められる日常の仕事について、集会、駅頭宣伝など多様な取組を通じて地域・住民の理解と支持を広げましょう。

 東京自治労連は、不当な現業賃金削減攻撃を許さず、職場の団結を力に、3月末までの当面の闘い、さらに公務における現業労働を守り発展させる長期的な闘いで奮闘していきます。
以 上