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2007年7月4日 東京自治労連中央執行委員会 | |
1 訪問介護事業最大手「コムスン」の不正 訪問介護事業最大手「コムスン」の不正申請に対して、6月6日、厚生労働省は同社の全国の訪問介護事業所のみならず、すべての介護サービス事業所の新規指定及び更新を5年間認めないように都道府県等に通知しました。 介護サービス事業者は6年ごとに指定を更新する必要があり、この措置で現在2081のコムスン事業所のうち、1655の事業所が2011年度までに介護事業を継続できなくなるものです。 コムスンの不正は、厚生労働省が、「全国的な監査等において、平成19年6月5日現在、5都県8事業所において不正な手段による指定申請を行ったことが確認され、同社の全国各地の介護サービス事業所に対する監査への対応及び廃止届けの提出は、本社の関与のもと組織的に行われていたものとみられる。」としているように、訪問介護などの事業所を新設する際、勤務していない職員を常勤ヘルパーに登録するなど、虚偽書類を提出し、東京他の各県で事業所指定を受けていたものです。 このほか、都道府県の指定取り消し処分前に事業所の自主廃業を繰り返すとともに、今回の「指定不許可措置」に対して、グループ連結子会社「日本シルバーサービス」に全事業を譲渡し、事業を実質的に継続させようとするなど、極めて悪質な対応を繰り返すとともに、社内調査で事業所の申請書類の45%が紛失していることなど、ずさんな業務実態も明らかとなっています。 2 東京都内1万人への影響 都内には278箇所のコムスンの事業所が存在しますが、2011年末には30〜40箇所にまで激減し、約1万人の利用者がサービス事業者の移動を余儀なくされることになります。 都福祉保健局は6月14日、緊急介護保険区市町村説明会を開催し、「08年3月まではコムスンのサービスが継続されることをすべての利用者に周知する」よう区市町村に求めました。 厚生労働省はコムスンに対して、更新時期の08年3月までサービスの維持を指示しているものの、介護ヘルパーが事業所を離れるなど、サービスが成り立たなくなる恐れがあるとともに、コムスンが江東区内の事業所の譲渡を区内事業者へ個々に打診、新宿区では、統合計画にはない事業所が廃止されるなど、コムスンの不誠実な対応が続いており、利用者が影響を受けないように必要な介護サービスを早急に確保することが強く求められています。 3 深刻な事態に直面するコムスン労働者 不正を行う事業所で業務を担わざるを得ない状況に置かれていたコムスン労働者の状況も深刻です。 東京介護福祉労働組合は、いち早く6月15・16日に「コムスン介護労働者緊急相談ホットライン」を実施し、電話・メールによる労働相談を実施しました。50件近くの相談が寄せられましたが、「雇用不安」が最多となるなど、今後への不安が最大となっています。 さらに、登録ヘルパーにはガソリン代支給無し、労働契約無し、常勤雇用者は過重労働で年次有給休暇を1日も消化できないなど、厳しい労働実態が明らかとなっています。 また、当該労組であるUIゼンセン同盟加盟の「日本介護クラフトユニオン」に対する労組への強制加入・高額組合費などの不満も多く寄せられています。 同労組は分会大会において、会社社長があいさつするとともに労組会長が「労働組合の目的は良い会社をつくること。」とあいさつする労組であり、このような労使一体労組の存在がこうした厳しい労働実態放置の要因ともなっています。 4 行政当局による対応状況 都福祉保健局は、6月7日に各区市町村に対して、コムスン利用者数、予定している対応策の調査を開始し、14日に緊急介護保険区市町村説明会を開催していますが、事業所更新までの間は引き続きコムスンが責任を持ってサービス提供を行うように、指導・周知を図ることを基本としており、各自治体の対応もこれに準じたものとなっています。 都議会は、6月27日付で国に対して「株式会社コムスンの不正行為問題対策に関する意見書」を提出していますが、コムスンに対して、@更新時期までの間は、引き続き利用者の求めに応じた介護サービスを提供させるとともに、新たな事業者への円滑な移行が行われるよう引き続き指導すること。A速やかに適切な移譲先を決定できるよう、国の責任において指導すること。を求めるとともに、国に対しては、「指定取消処分前の廃止届の提出や同一グループ内事業譲渡は、現行介護保険法が想定しておらず、今後こうした事態を生じさせないため、不適正な事業者の徹底排除に向けた法整備を早急に行うこと。」を要請しています。 しかし、これらの対応のみでは、問題の本質を改善するものではないばかりか、行政の責務である介護を利用者に保障することもできません・ 5 利用者に対するサービス継続をはかるために 今回の問題では、利用者に対して従来どおりのサービス継続を図ることが最優先課題となります。 訪問介護事業の担い手は、区市町村直営及び社会福祉協議会や社会福祉事業団などの公的団体対応が、次々に縮小され、現在、東京都内では訪問介護事業所の約8割は営利企業が運営している実態です。 しかし、営利を目的とした企業は、営利確保が最優先とされる以上、不正行為の根本的な防止は難しく、倒産可能性を構造的に有していることから、安定・継続して提供されるべき公共サービスの担い手としては不適切であり、本来は、サービス提供を継続できなくなる万一の場合に備えて、介護保険実施主体である自治体がいつでも肩代わりできるバックアップ体制を通常から準備しておくべきです。 介護保険事業における公的責任強化、良質なサービスが安定して継続的に提供できるように大幅な改善を図ることが求められており、区市町村・公的団体による訪問介護事業の拡大へむけた検討・対応を強く求めるものです。 そして、コムスン労働者についても、国・自治体が雇用の継承・確保、賃金・退職金の支払いなどについてコムスンへの指導を強めるにとどめず、公的サービスの担い手としての雇用確保を含めた救済措置を実施すべきです。 6 最大かつ本質的問題は介護の市場化 最大手の企業でこれだけずさんな経営実態が明らかになったことは、介護保険制度そのものの信頼を損ね、同一グループ内事業譲渡問題など法制度上の不備や、不適正な事業者の徹底排除に向けた法整備を求める意見も強まっています。 同時に、法制度の根本的な問題点も鮮明となっています。 コムスンでは、社員に厳しいノルマを課し、不正を積み重ね、現場ヘルパーの多くは年収300万円未満ですが、それでも訪問介護事業は採算に乗っていませんでした。 介護事業従事労働者の賃金水準は極めて低く、月曜から土曜、朝8時から夜7時までの業務で月収10万円程度の登録ヘルパー、夜勤を月6〜7回行っても17〜18万円にしかならない特養ホーム職員が多数となっている現状です。 このことは、低すぎる介護報酬によって、介護の担い手が形成できず、介護の質を確保し得ないことを示すとともに、介護の市場化として営利企業算入を促進し、とりわけ、直接介護に限定せず、ソーシャルワーク業務を、ケアマネージャー資格を創設して営利企業で実施を許したことが今回の事件の最大要因といえます。 この点を踏まえて、介護保険制度の抜本的な改善を行うことこそが真の解決方向であることは間違いありません。 以上を踏まえて、別途、当面の要求課題と対応を示すものです。 |
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以上 |