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2006年7月10日 東京自治労連書記長 野村幸裕 |
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2004年3月3日、東京都目黒区の社会保険事務所に勤務する堀越明男さんが、突然逮捕されました。前年秋の総選挙に際して、休日に自宅のある中央区で「憲法守れ」「イラク戦争反対」を訴える日本共産党のビラを配布したことが、国家公務員法102条・人事院規則14−7に違反するとされた事件の判決が、6月29日、東京地裁刑事第二部(毛利晴光裁判長)において有罪の判決が言い渡されました。(罰金10万円・執行猶予2年)この判決は、まず「有罪」の結論があり、違法捜査、不当な起訴を認めました。そして実質的には罰金刑に執行猶予をつけるという異例の措置をとって、2年間何もしなければ無罪という不当な判決です。 今回の弾圧事件は異常なものでした。休日に一市民として行ったビラ配布に対し、外形上判断できない国家公務員であること口実に、総選挙から数ヶ月もたってから突然、しかも選挙違反を取り締まる刑事警察ではなく、警視庁公安部が政治活動に対して異例の大掛かりな強制捜査を行いました。裁判の中で、公安部の長期にわたる尾行、ビデオで隠し撮りなどプライバシーを侵害する違法な捜査活動が浮き彫りとなりました。本来であれば、こうした公安警察の違法な捜査活動こそが裁かれるべきです。 この判決は、1974年に最高裁が国公法の政治的行為規制を合憲とした「猿払判決」をふまえた判決となっています。しかし、「猿払事件」に対する国内外の批判もあって37年間、起訴された事例はありません。このことは、公務員といえども、国民に等しく、日本国憲法に保障された思想・信条、言論・表現の自由、政治活動の自由は当然の権利として確立してきたことを示しています。 さらに、国公法では、違反の疑いがある場合、まず行政側に通知・防止をすることを命じています。実際に公務員としての職務に弊害あるかどうかの判断は、行政側の役割となっています。官僚が選挙に立候補し、出身官庁の影響力を利用して、資金や票集めをしたり、労働組合が職場で特定政党の候補者を組織内候補として紹介するビラを回している事実が報道されています。ところが今回の判決は、警察が「行政に徹底して秘匿した捜査を行い、行政の役割を警察が担う」ことを認めた判決となっています。 この事件においては、国公法の合憲性だけでなく、国家公務員に限らず一般市民の政治的自由や活動への制限が問題となりました。法律違反の可能性を根拠に、警察はいつでも、どこでも尾行・盗撮なども可能なのかが問われました。それだけに今回の判決は、警察の活動を法の下で制約すべき裁判所(司法)のあり方=違憲立法審査権、そのものを自ら否定しています。 東京自治労連は、この堀越事件を不当弾圧事件として糾弾するとともに、この判決は公務に働くすべての労働者にかけられた不当判決であることを内外に明らかにしながら、引き続き連帯して闘っていくことを表明すると共に、罰則規定のない地方公務員の政治活動への不当な介入を許さない闘いを強化します。 |