2006.5.24 | ||||||||||||||
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はじめに 役員学校シリーズ2「賃金の仕組み」を開催する目的は、労働組合活動、なかでも職場活動をすすめていくうえで必要な賃金についての基礎を学び理解を深めること、なぜ公務員賃金が悪者として攻撃されるのかなど、賃金についての率直な疑問や意見を出しあい交流することで、私たちの賃金に関心をもってもらうことです。もちろん、賃金については多くの内容があり、とても短時間で語りつくせるものではありません。十分ではなくても、今日の学習がさらに深く賃金を学び、運動をすすめていくきっかけになればと思います。(担当 賃金社会保障部) 今回のテーマ 「賃金の仕組み」 目次
1 賃金って何だ (1)ロウドウシャとはどんな人たち? みなさんは、仕事は、職業は何ですか、と聞かれたらどう答えますか。 地方公務員、自治体職員、○○県(市)職員、公務(員)労働者、自治体労働者・・・ いろいろあります。正解はこれというものはありません。みなさんは、まぎれもなくロウドウシャです、これだけはまちがいありません。 役所だけでなく、会社・事業団・団体・商店・その他どこでも、雇われて働く人、仕事をする人はみんな労働者です。そうでない人は、経営者(資本家)、会社役員、農業商工業に従事する個人事業主(自営業者)などです。 (2)労働者はどうやって生活するか みなさんは、役所から賃金(一般に給与・給料ともいう)を支払われて生活しています。このように労働者は、雇用主(経営者・資本家)から賃金を得て生活します。なぜ賃金が払われるのでしょうか。仕事をするから、労働したから、会社(役所)のためにがんばったから、住民生活に役立つから・・・理由はいろいろ考えられますね。 正解は、雇用主(使用者)のためにみなさんが労働力を提供したからです。一定の労働時間拘束され、自らの労働力を売ったことに対して、それを買った雇用主が賃金を支払ったのです。このように労働者は、雇われて自分の労働力を売ることでしか生活することはできません。生産手段つまりモノをつくり出すために必要な機械や原材料や工場を持っていないからです。 公務の職場ももちろん例外ではありません。 (3)みなさんがもつ労働力はどんなもの 資本主義社会の賃金労働者は、自分の労働力を私有しており、自由に契約して売ることができます。奴隷制や封建制の社会と違い、身分制の拘束からは解放されています。これが資本主義発展を促す大きな要因でした。しかし同時に、労働者を生産手段から解放する、自由にする=切り離すということと結びついていました。労働力を資本家に売る=資本家に雇われて働く以外、生きる道がないのです。資本主義社会では労働者の労働だけが価値と剰余価値を生み出します。 資本家は、労働者を雇いその労働力を提供させることで、剰余労働をさせ、(労働力の価値どおり賃金を支払っても)その成果を搾取します。現実の賃金は労働力の価値以下にさらに切り下げられています。 (4)賃金は働き(労働)に応じて払われる、これ本当? 賃金(給与)は労働の対価(対償)として支払われる・・・労基法、職員ハンドブックの立場 見かけ上はそのように見えますが。 ◎給与;職員の勤務に対する報酬として支給される金品。反対給付としての性格をもつ。 支給の根拠−地公法24条に基づく給与条例 規定すべき事項(同25条) 給料表、昇給基準、時間外勤務・夜間勤務・休日勤務の給与、特別地域勤務・特殊勤務・扶養の手当その他、支給方法・支給条件 給与に関する原則として、給与条例主義・平等取り扱い・情勢適応・ノーワークノーペイ・労働基準法適用(地方公務員)、支給上の原則、などがある。 地方自治法204条に支給できる給与の種類を規定 ○情勢適応原則・・・勤務条件が社会一般の情勢に適応するように適当な措置(地公法14条)。 代償措置としての勧告制度。 ○支給上の原則・・・通貨・直接・全額(地公法)、毎月1回以上・一定期日(労基法) 給与決定の基準として、職務給の原則・生計費考慮の原則・給与均衡の原則がある。 ○職務給の原則・・職務の質と責任の度合いに対応して支給。同等の職務には同一の賃金。 → しかし、その根拠となる「職階制」は人事委員会のない自治体は採用が任意、国家公務員も法律がいまだ実施されていない、にもかかわらず級別標準職務として押しつけする矛盾あり。 ○生計費考慮の原則・・職員の生活を保障し労働力の再生産を賄いうる程度のものが必要。 ○給与均衡の原則・・・地公法24条にいう5つの要素の考慮が必要。標準生計費を算出し、官(公)民給与比較し報告、勧告。 → もっとも重要な要素である生計費が無視されている。人事院の標準生計費は現実生活とかけ離れている。国家公務員準拠を押しつけ地方自治を破壊する。 ◎給料;正規の勤務時間による勤務に対する報酬、給料表に定める給料月額と調整額。諸手当は含まない。給料月額は給料表の級号給で示される。 賃金は、労働者の提供する労働力(生きた人間のみにそなわっている労働能力)の価値(価格)として支払われる・・・経済学の立場 資本主義社会では労働力も商品化されています。労働者の労働は、労働力の価値よりもはるかに大きな価値(剰余価値)を生産していますが、賃金は自分がつくりだした価値どおりには払われません。労働力の価値とは、自分の労働力の再生産・家族の生活費・労働能力向上のための費用として必要なものに見合うものです。資本家は労働者に労働力の価値(価格)として賃金を支払い、そしてしばしば価値以下に切り下げて支払い、成果=差額を剰余価値としてタダで手に入れます(搾取)。このように生産労働者は搾取され、非生産労働者である公務員労働者も民間労働者に準拠して賃金が決定されるため、同様に搾取されています。 (5)そもそも「オカネ」とは何なのでしょうか 資本主義の今の世の中で、暮らすためにはオカネが必要です。私たちが土地も工場もなく、地代や利子での生活もできなければ、労働力を売ってオカネ=賃金をもらって暮らすことになります。オカネがすべてではない、といっても大事なモノにはかわりありません。しかし、なぜがんばって働いても生活が苦しいのか、楽にならないのか、よく考えてみる必要があるのではないでしょうか。私たちの労働、働きにふさわしいオカネが本当に支払われているのでしょうか。そうであるなら、なぜ一部の大企業や大金持ちは、ますます莫大な利益をあげていくのか。労働者の生活はどんどん苦しくなっていくのか。原因はやっぱりオカネにある? 私たちの苦しみの根源を明らかにし、正していくためには、資本主義経済の本質をしっかり学ぶ必要がありそうです。 2 賃金はどうやって決めるの? (1)会社や社長が決める?相談(交渉)で決める?決める根拠は 社長の「ツルの一声」や、社員の願望や、労働組合の交渉力だけで、賃金を決めることにはなりません。以前の「管理春闘」の時期には、金属労協に対してIMF・JCによる低額一発回答が出され、その水準が一つの基準となって労働者全体の賃金相場が形成されました。もちろん公務員の賃金も「民間準拠」を押し付けられ抑制されてきました。 どういう水準でしょうか。利潤の確保と増大、会社の規模や資本力、職種・職務の違い、労働強度や労働時間の実態、年齢構成、習熟の差など、さまざまな要素がからみあい、労働者の団結やたたかい、生活実態が一定の影響を与えながら労働者の賃金を決めてきました。 「労働者は死なないように、生かさぬように、(資本家が)搾り取る・・・」よく言われてきた言葉です。 このように、資本家にとって十分な利潤が(ますます増大する方向で)保障され、しかも労働者(家族を含め)が生存でき、明日の(資本家のための)労働力を再生産できる水準に、賃金は(切り下げられる方向で)決められてきたといえます。 (2)みなさんの賃金は正しく払われていますか 当然のこととして改めて確認したいこと・・・みなさんの労働力は有償です。 したがって、働いているのに「不払い」はありえないし、絶対認められない許しがたいことです。「不払い残業」などは使用者の犯罪行為であり告発の対象です。(労働基準法違反) しかし、働いた時間分がすべて支払われていれば(労働力の価値どおり)、それでOKなのでしょうか。ここに資本主義の秘密があります。労働力の価値どおりに賃金が支払われても、労働者が生み出した価値(剰余価値)分は資本家がただで自分のものにしてしまいます(搾取)。 労働時間通り(必要労働時間)に支払われても、剰余労働時間分は奪われています。この剰余価値の搾取こそが、資本主義のもうけの源泉です。 日本の生産労働者の搾取率はおおよそ300%といわれています(計算の仕方はいろいろあり専門的です)。一日の労働時間のうち、賃金に見合う必要労働時間は2時間であり、6時間は搾取される剰余労働時間です。 生産部門でない商業労働者や公務労働者も、同じように労働力の価値あるいは価値以下にしか支払われず、剰余労働を搾取されています。 (3)たたかえば賃金は上げられるか 労働者が団結して闘わなければ、賃金はますます労働力の価値以下に際限なく切り下げられ、搾取が強まり、資本家は利潤を増やすことになります。資本主義が成熟していけば生産力が飛躍的に高まり、労働者の生み出す価値や剰余価値も増大していくからです。 生産労働者の闘いは、団結してこの生産を止めること、つまりストライキを行うことで剰余価値を生み出すことをやめ、資本家に対抗してきました。ストライキを背景に、賃金や労働条件を改善してきました。 社会情勢は大きく変化していますが、労働者の団結した闘争なしに、賃金も権利も前進することはないのではないでしょうか。労働者の団結したたたかいは、少なくとも賃金改善に必要な条件であることは間違いありません。 3 カンコクセイドとは (1)公務員の賃金の決め方は少し独特です 労働者の賃金は、対等な労働者と雇用主(使用者)との交渉によって決めるのが基本です。民間労働者の場合、労使の力関係、社会全般の状況、業界の好不況、会社の業績、労働者の生活状況、労働組合のたたかい、経営者の考え方など、さまざまな要因が賃金決定に影響しながらも、労使で自主的に決定することになっています。 公務員の場合、どんなに税収の高い富裕な自治体でも、赤字再建中の団体でも、戦闘的な組合でも、組合のない自治体でも、「勧告制度」と切り離したかたちで決めることはできません。自分たちで交渉により賃金を決められないため、第三者機関とされる国・人事院や人事委員会が「現在の公務員給与は○○だから、○○にしなさい」と勧告し、自治体の場合、これが使用者である自治体首長と議会議長に出されるのです。勧告するために民間賃金の詳しい調査が行われます。 しかし、地公法は一般職員の団体交渉による賃金交渉を保障しており(55条、登録団体が書面協定を結ぶ権利)、要求書提出と団交による決定・妥結を重視しその条件の拡大を考える必要があります。勧告が唯一絶対、ということではありません。 (2)勧告制度は果たしていいものでしょうか 公務員の賃金はこの勧告に基づいて決定する仕組みです。一見すると、中立な立場の第三者が公正な調査に基づき公平に勧告するのであり妥当ではと思いがちです。しかし、長年にわたり公務員の賃金やさまざまな要求を不当に抑制し続けてきたのが、この勧告に基づく賃金決定制度であり、そのため私たちは「人勧体制打破」と今も掲げて闘い続けています。勧告にあたり、生計費、国・他団体の給与、民間賃金、その他の事情を考慮するとしています(地方公務員法第24条)。実際には、私たちの生活実態はほとんど考慮されず、国家公務員準拠・民間準拠の方針に基づいて、全国的に賃金が抑制されてきました。 近年では、人事委員会が使用者側の立場にたって賃金や任用制度の改悪を促したり、職員の生活改善の視点が感じられない意見を出すことがきわめて多くなっています。 (3)なぜ勧告で決めるの 〜労働基本権のこと 労働基本権は、憲法で規定された労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)を中心とした、労働者に基本的に認められた権利のことです。公務員も労働者であり、基本的にもつべき権利です。 私たち公務員は、労働基本権を背景に労使の団体交渉で賃金を決めることができません。なぜなら、公務員のスト権を含む労働基本権が、占領中の1948年7月の政令201号により不当にも奪われたままになっているからです。労使で自主的に賃金を決められないため、第三者機関である人事院や人事委員会が調査し勧告することで賃金を決めています。 勧告制度は、現在私たち公務員の賃金を改善する唯一の方法です。勧告制度の抜本的な改善を要求し運動するのは当然ですが、基本的な立場は公務員の労働基本権を回復し、労使で自主的に交渉し賃金を決定することです。 労働基本権が奪われていることは、憲法違反です。全労連(日本のたたかう労働者の中央組織)の提訴に対し、国際労働機関(ILO)も日本の公務員に労働基本権を付与すべきだと3度にわたり勧告意見を出しています。 (4)人勧制度の中身 人事院は賃金決定基準に基づき、調査・研究し、毎年1回は国会・内閣に報告する。給与を100分の5以上増減するときは勧告義務あり。(人事委員会については地公法26条) → 実施義務明記なし。要求反映せず一方的決定可能。凍結や値切りも自由。 中心は民間準拠方式であり、官民比較が基本になっています。 @ 勧告の流れ 調査方針・項目決定 → 職種別民間給与実態調査(民調、5月〜6月)→ 調査分析・公民比較検討作業その他作成作業 → 労働組合の要請・要求書・署名提出 → 改定必要 → 勧告・報告 時期は、国8月上旬、道府県・政令都市9月、東京都・特別区10月上旬。 A 勧告内容 (勧告)給与改定、給料表改定、特別給(一時金)支給月数 (報告)民間賃金調査状況、比較、物価・生計費、国家公務員の給与 (意見)給与改定について、制度の研究や構築、見直し、勤務環境の整備 B 公務員賃金・勧告の影響(押さえつけ、切り下げの悪影響ということ) 財団・事業団など外郭団体職員賃金への影響、公務公共業務従事労働者への影響、民間企業労働者への影響、地場賃金への影響、福祉・保育・医療・農協労働者への影響、年金・恩給受給者への影響。直接に750万人、さらに2000万人以上の国民生活に重大な影響を及ぼします。日本の低賃金構造を支える重要な柱といえます。 C 人勧制度の果たす役割 これまで、公務員労働者の権利を抑圧し、中立機関をよそおった人事院の勧告制度を利用し、自民党政府と財界の低賃金政策を押しつける役割を果たしてきました。労働基本権を制約したまま、「公務員制度改革」をすすめることは、代償措置だとするこれまでの政府見解も形骸化させ、憲法や国際ルールを無視するものです。 (5)私たちの賃金(給与)にはどんな特徴がありますか(アットランダムに) ・交渉では決められないものも多い、勧告でだいたい決まってしまう ・ほんとうは交渉で決めるのがあたりまえ ・勧告は第三者がする、でも労働者の保護や生活向上にとって有益なものばかりではない ・勧告は使用者のためのものか、公正中立ってほんとのハナシ? ・勧告が出されないこともある、出ても値切りや実施しない、決まったあとで独自に削減も(いったどこの話、なんて理不尽、信じられなーい) ・勧告数値が本当に信頼できるのか、民間実態を恣意的にとらえている、都合良く利用している ・賃金は民間水準より値切られているみたい(一時金、住居手当、扶養手当など) ・単身の青年労働者は特に大変、なぜだろうか ・ちまたでは民間より高―い、高すぎる、恵まれてる、の声が ・福利厚生もすっかり見直されてしまいました(コーグウだ、と言われる) ・退職金や年金は賃金なのか、いろいろ言われるがどう考えたらいいの ・格差の拡大はすごいものがある、民間が総体で下がっているから公務の水準が目立ってしまう ※公務と民間の比較〜企業規模問題とは 人事院は、民間調査方式・比較方式の見直し検討を始めました。今年度の民間給与実態調査(民調)では、調査対象を企業規模100名以下に引き下げて行うとしました。 調査総数は例年の8000件から12000件に増えているようです。調査結果を勧告に反映させるかどうかは、6月初旬に判断する予定です。勧告に反映させないための取り組みを強める必要があります。 自民党は(武部幹事長)企業規模を50人にするべきだと繰り返し強調しています。 総務省の「地方公務員の給与のあり方研究会」は、3月27日の最終報告で、地域の民間賃金に準拠させるためとして、人事院同様に企業規模100名以下に引き下げを打ち出しています。 私たちは、比較企業規模の問題では、1000人以上の規模の企業との比較をすべき、当面500名以上で比較をと要求しています。日本の民間企業は大企業と中小、零細の賃金格差が大きく、しかも格差は年々増大しています。民調で調査対象の企業規模を下げることは、必ず比較対象の民間賃金水準の低下につながり、新たな公務の賃下げを恣意的に狙う以外の何ものでもありません。 4 「給与構造改革」で賃金はどうなるの? 小泉「構造改革」の賃金制度改悪としての現れが「給与構造改革」です。勧告制度のなかで、国の制度改悪が直接地方自治体に影響を及ぼしています。昨年のたたかいでは、自治体に対して、「賃金制度は国公準拠、しかし賃金水準は地場賃金準拠(当該の地域の民間企業賃金水準をより重視する均衡の原則)」という攻撃が行われ、総務省研究会の報告でも言及するなど、今後も同様に繰り返されます。全国の自治体では、「給与構造改革」攻撃とたたかいさまざまな到達状況をつくっています。国に準じて早期導入・実施などの攻撃をはね返し、政令指定都市など導入を阻止している自治体も多くあります(2市で導入)。そのため総務省研究会の報告は、「給与構造改革」の徹底や地方人事委員会の機能強化をうたっています。 また同時に、賃金決定原則として地方公務員法第24条3項は要素として考慮することはおおむね妥当ともしています。まず第一に、生計費(生活費)、そして国、他団体、民間賃金、その他の事情です(均衡の原則)。そして、「国公準拠」の考え方は再考すべき時期にきている、としています。 私たちは、賃金や労働条件の改善を求めてさまざまな要求運動、交渉などを行います。公務員の賃金や労働条件は、法定主義(条例主義)が原則であり、国会・議会で承認されることが必要です。このことは今後の運動をすすめるうえで踏まえる必要があります。 (1)国・人事院の制度 2005年勧告により、06年4月1日から国家公務員の給与制度は大きく変更されました。50年ぶりの賃金制度全般にわたる改定です。 主な変更点 @ 俸給表水準を平均4.8%減額、地域手当の新設(異動保障有り)・調整手当廃止 A 号俸の4分割(査定昇給による格差付けのため)、カーブのフラット化(30歳以降で最大7%引き下げ)、級の統合(1・2級、4・5級)と新設(10級) B 表切り替えによる減額は、切り替え前後の額の差額を「現給」保障する C 号俸の足伸ばし(枠外在職者のため) D 昇格方式の変更(昇格メリットの維持) E 普通昇給・特別昇給を廃止し査定昇給を導入、55歳昇給停止の廃止(抑制措置2分の1) 5段階相対評価(DEは絶対評価)、1月1日〜12月31日で判定、昇給は1月1日 2010年1月までは経過措置あり 各評定の配分比率 F 勤務成績の判定基準(新たな評価制度が確立されるまで当面の措置) G 枠外昇給廃止 H 勤勉手当成績率の強化(引き上げ分のうち0.03月を査定原資とする) I 退職手当に調整額を加算(格差の拡大を反映させる) (2)東京都の賃金制度 国・人事院、財界あげての攻撃が強まるなか、石原都政の特異性もあって、突出した厳しい状況のなかで、賃金闘争をたたかってきました。 調整手当の名称を変更し地域手当(12%) 4分割給料表に切り替え、1・2級の統合、全体を9級制とする 枠外昇給廃止により4〜12号給足伸ばし 勤務成績に基づく「新たな昇給制度」の導入、普通昇給・特別昇給を一本化 55歳以下;6号・5号・4号・3号、55歳以上;3号・2号・1号・なし 55歳以上は2006年度については経過措置あり 判定期間は前年1月1日〜12月31日 付与率は1〜3級;最上位5%以内、最上位・上位30%以内 4〜5級;最上位10%以内、最上位・上位30%以内 昇任時特別昇給は定額加算方式とする 2008年3月31日をもって級格付基準の廃止、既格付者には適用しない 職務段階別加算の割合を変更改悪(2年の経過措置あり) 勤勉手当減額率の拡大 (3)特別区の賃金制度 賃金闘争では、国からの攻撃、東京都の圧力・影響を直接間接に受けながら、独自性を発揮するため工夫したたかっています。 調整手当の名称を変更し地域手当(12%) 4分割給料表の適用と枠外昇給廃止により号給の足伸ばし 勤務成績に基づく「新たな昇給制度」の導入(A〜Eの5段階)、普通昇給・特別昇給を統合 23区統一して2008年4月から実施、評定期間は前年1月1日〜12月31日 評価制度の給与処遇への反映は各区労使合意がはかられたうえで行う 評定区分における分布率は労使協議・合意を前提に各区で定める、D・Eは設けない A・Bは各区で定める(2006・2007年度はA・Bの面積率40%、D・Eはゼロ) 昇給幅はA:8号上限、B:各区、C:4号、D:3〜1号、E:昇給なし (2006・2007年度はA:8号上限、C:4号) 期末勤勉手当;一般職員への成績率導入 (分布率は各区で定める、本則は2008年6月期、実施は評価制度充実が前提) 一律拠出;係長職以上 上限1%、主任主事職以下 当面ゼロ% 下位区分拠出;上限2.5% 最下位区分拠出;上限5% ((2006・2007年度はすべてゼロ%) 一時金勤勉手当比率の拡大(21.3%、0.95月で東京都並に)、 級格付基準の廃止(行政系は07年度、現業系は11年度をもって廃止、既格付者には適用しない) 5 成果主義、評価制度は当たり前ですか? (1)公務員の年功序列賃金はおかしい、時代遅れか 最近のある公務職場では・・・ ○パソコンを駆使して膨大な仕事をこなす20代のA青年は、最近こう感じています。 年中操作方法を聞いてくる隣のBさん、忙しいのに何回も同じこと聞いてくる、なんかうざい、毎日同じこと教えてるのにいいかげん覚えてよ、仕事たまっても定時で帰る、自分は毎日残ってるのに、これで年収は自分の3倍ももらってる、年功序列じゃやってらんないね、公務員の給料も早く成績で決めるようにしてほしい・・・ ○ベテラン職員のBさんは慣れないマウスをぎこちなく動かしながらこう思っています。 昔は若い人にもずいぶん仕事のやりかたを聞かれたし、職場でも頼りにされた。今では仕事の中身がすっかり変わり、一日中パソコンとにらめっこして数字を入力している、やりがいも喜びも感じられないし、本当に住民の役に立っているのかな、忙しそうだしつい遠慮して聞かないから余計間違えて遅れてしまう・・・ よくみられそうなこの風景、みなさんはどう思いますか。 (2)賃金は「能力・業績・実績・成果」で決めよう、ん? 私たちの賃金や人事制度に重要な役割を果たす人事委員会や人事院、直接の使用者である知事や区・市長、教育長などの当局、公務員制度や公務員の勤務条件にかかわる審議会・研究会、民間の企業や団体、新聞・週刊誌などのマスコミ、これらすべてが公務にも成果主義を導入せよ、の大合唱をしています。民間同様の能力・業績・実績・成果主義を公務員にも全面的に適用させよう、公務職場にとりいれよう、が今大きな流れになっています。公務能率の向上、効率的な行政に、というわけです。 でもちょっと待って、「効率的に」は当然だし否定しないけど、たしか地方自治法には同時に民主的な行政というのもあったよね。そういう点ではこの流れはどうなのだろう。 (3)民間大企業の成果主義の実態は がんばって達成しても賃金下がるだけじゃん・・・ 民間では、社員を成績で評価しボーナスや昇給などに反映させる「成果主義」が90年代後半から導入されてきました(上場企業の9割にも)。成果主義賃金の目的は、総額人件費を削減することです。昇任しないかぎり、多くの会社が30歳〜35歳で頭打ちになります。 目標を100%達成しても賃金は「並」でしかなく、およそ8割の人は達成できず賃下げが押し付けられます。当初は一時金が対象でしたが、現在は本給が引き下げられるため生活は深刻です。それだけでなく、この導入で労働者は果てしない長時間過密労働を強いられ、しかも不払い残業がまん延しています。裁量労働制とセットで導入された職場は深刻です。労働者への個別の管理が強まり、競争にかり立てられ、その結果いのちと健康が脅かされ、またメンタルヘルス問題が急速に広がっています。 民間企業も個人成績が明確になる営業部門、チームで共同して製品開発を行う部門など、さまざまな職場があります。成果主義になり、社員同士が疑心暗鬼になったり、目先の成果ばかりを追い新しいことに挑戦しなくなったり、会社の業績が低迷しても目標を達成したからと高い評価をされたり、あいまいな基準でむりやりに格差をつけたり、さまざまな矛盾が広がっています。そのため、結果を出すプロセスで発揮された能力を評価する(トヨタ自動車)、チームのためにどれだけ動いたか、努力と成果そのものを評価、成績評価を昇格に利用しない(富士通)、など、民間では、成果主義の見直しは大きな流れになりつつあります。 その背景には、大企業労働者の深刻な実態と要求、勇気ある果敢なたたかいがあります。 (4)公務職場の成果主義は〜 はたして仕事はどうなるの 公務の職場は住民のために職員がチームワークで働く職場だ、会社の儲けのため一部の利益のためにやるわけじゃない、個人の成果や成績ですべて計られたんではたまらない、の声。 住民のための施策を充実するには税収をあげないと、成果主義でやったほうがいい。給付を増やせばいいというものではない、厳しく査定して減らすことが効率的な運用につながって結局は住民のためになる、の声。どうでしょうか。 成果主義が全面的に入った公務職場、はたして仕事は、人間関係は、そしてなによりも住民はどういう状態になるのか、想像してみてください。 保育園の民営化や福祉の切捨てなど、住民のくらしに直結する分野でリストラを進めるほど評価が高くなるという例があります。教員では、子どもに向き合うことが困難になり、上司をみて仕事をする、教員間の共同意識が弱くなり競争が強まる、などの弊害が出ています。 公務職場でも、批判や反対の声がおこり、試行をやっても導入を見送る例も出ています。 (5)成果主義や評価制度のゆくえは・・・ 民間企業ではたしかに見直しの動きはありますが、すぐになくなる状況にはありません。成果主義を導入している企業は、1,000人以上の企業の約7割に達し、2年以内に導入予定を含めると9割を超えるといわれています。制度を導入することそのものが目的になっているともいえます。 成果主義は「業績」の評価がつきものですが、公正無比で客観的、完璧な評価が期待できるのか。評価システムや評価者の問題もあります。評価の方法や過程、結果が本人に開示されるのか、評価に対しクレームがつけられるのか、苦情を審査・処理する信頼できる機関があるのか・・・。仕事ができてまじめに働く人でも、ポストにつけなければ賃金が大きく減収してしまう、これが民間企業の職務給です。職務給導入の目的は、労働者同士を競争させ団結をこわすことで賃金を下げ搾取を強化することです。考課査定は本来資本の立場からのものであり恣意的で不当なものです。賃金は査定ではなく生計費(生活費)に基づいてきめるべきもの、仕事の面からいえば同一労働・同一賃金の原則に基づいて決定すべきものです。 どんな仕事も、成果だけで評価することはできないはずです。効率がすべてでもありません。能率第一、もうけ一辺倒が、本来の仕事の目的を失わせ、取り返しのつかない事態を引き起こす例は数え上げればきりがありません。痛ましい事故を二度と繰り返さないためにも、また、住民の生活や健康を守るためにも、はたして成果主義の導入で民主制を犠牲にすることにならないのか、公務労働者と労働組合に問われています。 6 私たちがめざす賃金はどのようなもの・・・ (1)人間らしく暮らし続けることができる賃金 憲法25条は国民の生存権を規定しています。「すべて国民は」「健康で」「文化的な」「最低限度の生活を営む」「権利を有する」一つ一つが大変な重さを伴って私たちに迫ってくるような言葉ではないでしょうか。私たちの賃金も、この規定にふさわしい水準が保障されるべきです。人間らしく生きられる、生活できる賃金にしていきましょう。 (2)家族とゆたかに生活できる賃金 給料が安くて結婚できない、子どもが育てられない。青年労働者の一番の悩みではないでしょうか。家族が楽しく暮らせるための賃金に改善させなくてはいけません。ぜいたくはできなくてもゆたかな気持ちで生活できる、家族をもつことが保障できる水準が確保されるべきです。 (3)自分の力を高められる賃金 労働者は誰もが寄りよく生きたい、よりすばらしい生活をしたい、より社会に貢献できる仕事がしたい、こうした向上心をもっているのではないでしょうか。仕事の技術を高めたいということもあります(スキルアップ)。有給で講習や研修を保障されることも大事なことです。それがよりよい生活や社会をつくることにつながります。経済学では「養成費」といいます。 (4)生きがいや明日への希望を持ち続けられる賃金 経済が発展し社会全体の富が増大することと反比例して、労働者の生きがいや希望が奪われ、ないがしろにされているのが、いまの日本社会のありようではないでしょうか。「働けど働けどわがくらし楽にならざり じっと手をみる」と啄木は詠いました。資本主義経済が高度に発展したこの日本で、100年前と変わらない、いやむしろもっとひどい状態に私たち労働者はおかれているのではないでしょうか。働くことの喜び、労働の楽しさを感じられる賃金にしなければなりません。 (5)搾取のない賃金をめざして 労働者が働くこと(労働力の提供)で生み出したもの(剰余価値)を、資本家に搾取される、これがいまの資本主義社会の本質です。 私たち労働者がつくりだしたものは、本来私たちが受け取るべきではないでしょうか。よりゆたかで人間らしいくらしをする、人間性が全面的に発揮できる、そのためにふさわしい賃金が支払われるような社会の仕組みに変えていくことが、根本的な解決のために必要なことです。 労働者として、労働力に見合った賃金をめざして、社会を変革する展望と確信をもって、仕事も生活もがんばってやっていきましょう。 おまけ 「標準生計費」と「最低賃金」 ○標準生計費ってなんでしょう? 世帯人員別に、食料費・住居関係費・被服履物費・雑費T・雑費Uの額を算出し合計したものです。 ○低賃金に押さえ込むしかけ 毎年の人事院勧告で「標準生計費」が示されます。中身は生活実態とはかけ離れたものです。賃金は、家族を含めて健康で文化的な生活が営める水準のものでなければなりません。民間春闘結果を考慮すればいいとし、平均世帯水準に比べきわめて低い水準であり、預貯金・保健支出・住宅ローンも認めないという問題があります。しかも公的機関が算出する唯一のものとして、最低賃金・生活保護基準・課税最低限・労働災害補償などに基準として用いられ、基準抑制の役割を果たしています。さらに民間企業労働者の賃金決定にも大きな影響を与えています。 ○これで生活できる?私たち人間だよ 現在、家計調査の結果を「並数階層」の水準に置き換えるという恣意的なやり方で実態生計費を算定しています。あるべき生活水準を示すものではなく、現在のように家計が苦しく消費を切りつめれば、その結果標準生計費もそれだけ縮小することになります。家計調査以外のデータも活用し、消費傾向を正しく反映したものにするべきです。 ○「最低賃金」というのもよく聞くけど・・・ 地域最低賃金の水準は、標準生計費よりさらに低いものです。全国一高い額とはいえ東京の最低時間給は、なんと713円です。パート労働者が1ヶ月にフルに働いても、13万円にしかなりません(713円×8時間×23日=131,192円)。これが労働者がまともに生活できない低賃金のベースになっているのです。金額の改善はもちろんですが、制度の抜本的な改正が求められています。 最低賃金を少しでも改善するために、ぜひ力をお貸しください。 |
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