公立保育園の営利化を許さない運動の到達を
力に、取り組みをさらに前進させよう
(保育リストラ闘争方針U)
2005年 5月25日
東京自治労連中央執行委員会
1.はじめに
「公立保育園の民間委託・民営化を許さない」という各自治体での取り組みは、地域から大きな運動を作り上げています。しかし、公務員攻撃の嵐と、「官は非効率、民間でこそ」の民営化万能論は、保護者・住民の考え方に大きな影響を与えています。攻撃の本質を学習宣伝することや、一致できる要求での取り組みを広げ、保護者の要求を受け止め、支える場面も生じます。保護者の活動を側面から支援し続けることで信頼を得、新たな共同の運動を作り出している例も生まれました。各自治体では、困難な中でも運動を継続させ、「子どもを守る・保育の質を守る」の一点での共同を広げ、「計画の一年延期」を勝ち取ったり、保護者のネットワークづくりが進んだりしています。
東京自治労連は、この間「保育リストラと闘う」方針を確立し、全単組での取り組みを提起し、実践してきました。この間の取り組みの到達と教訓を明らかにし、さらに運動の前進を図ります。
2.情勢の特徴
1)国は、保育のみならず自治体そのものを「市場化」しようとしています。「三位一体改革」で地方交付税の削減を図り、規制緩和・民間開放推進3カ年計画や自治体業務を民間に丸投げする市場化テスト、総務省は新たな「地方行革指針」を押しつけ、自治体に作成義務を課し、自治体業務の民営化を進めています。
政府・財界は、保育の市場化を進める最大のターゲットとして、04年には公立保育所の国庫負担金を廃止し、05年度は施設整備費や延長保育などの補助金を交付金化するとともに、幼保総合施設のモデル実施など、保育所の水準引下げを図り市場化への地ならしをしています。
2)東京都は、保育の市場化を進めるために、05年度予算でも、大幅な認証保育所増設予算をくみました。東京都福祉保健局少子社会対策部長が「認可保育所の運営は基本的に国基準で可能と考える」とまで発言していることからみて、都議選後の7月には、都加算制度の全面的な見直しの検討を開始することは必至です。
3)民営化=営利第一主義では、住民のいのちや安全が守れないことが国民の前に明らかにされ、その具体的事例は枚挙に暇がありません。三菱自動車の欠陥かくしとそれによって続発した死亡事故、電力各社の原発事故の隠蔽。そして、大惨事となったJR西日本の尼崎脱線事故は、儲けの確保のために安全対策にお金をかけない、利益優先・安全無視の会社の体質が引き起こしたと言えます。民営化=営利第一主義では、住民のいのちや安全が守れないことが目に見えるようになり、国民の間で民営化万能への疑問も生じています。公共性の確保、公共性を担う労働者の労働条件確保などの世論を拡げていくことが求められています。
3.この間の取り組みの到達と教訓
この間の取り組みの到達は、父母の会や父母連など関係団体と「民営化反対」ですぐには一致しない中で、多様な形態の取り組みを私たちが作り出していることです。
第一に、攻撃の「本質」を明らかにした学習の徹底です。
民営化・民間委託の真の理由は、「保育を福祉から商品に変える」攻撃であり、小泉政権が進める「公務の縮小、民間企業への開放、市場原理に委ねる」国の政策の一部です。保育の「市場化」にとって「公立保育園の存在がじゃまになっている」ことです。このことを徹底して明らかにすることが重要です。世田谷区職労は、一貫して「根本的にどこに向かう動きか」を学習・宣伝してきました。
繰り返し学習することで、「財政難だからしかたがない」「いい民営化なら良い」という考え方ではなく、「保育の市場化は子どもが平等に健やかに育つ権利を否定し、子どもの未来を奪うこと」が理解されてきています。攻撃の本質を掴んでこそ、闘いの確信と力が生まれています。
第二に、「保育の質」を明らかにし、保護者との手つなぎを進めていることです。
民営化・民間委託の理由は、当初は「財政難」でした。しかし、各単組の財政分析の取り組みは「財政難」のウソを明らかにしています。また、「多様な保育サービスを実施する。保育の質は変わらない」という説明に対しては、「保育の質」とは何かを明らかにし、「保育の質の確保は、保育者の経験の積み重ねと専門性」によることの理解が拡がってきています。保育の質を保護者と共有化するためには、保護者の悩みを聞き、日常の保育を語ることが重要です。文京区職労では、保護者へのビラで、文京の保育の変遷や日常保育について語る取り組みを続けています。また、江東区職労では、保護者との共同した取り組みが困難でしたが、保護者と日常の保育を語ることで、相互の信頼を高めています。世田谷区でも「保育の宝」という冊子を保護者が作って当局に届けるなど、日常の保育を検証することで、保育に対する信頼と保育者の確信を作り出しています。
第三に、新しい共同の取り組みが始まっています。
保護者の「保育園の民営化」に対する考えも様々であり、「いい民営化ならよい」と当局との話し合いに応じる該当園の保護者の例もあります。保護者の要求を受け止め、保護者が保育や保育園について話し合う場を設けたり、当局説明会前に相談を受けるなど、支援を続けることで、父母の会が新しく結成される例もあります。江東区では、当初「民営化に反対しない」としていた父母の会との共同の対策委員会が作られ、区当局への共同した闘いが進んでいます。また、墨田区職労は、区内に13ヵ所ある民間保育園のうち12園を訪問、懇談し、公的保育を守ることへの共通の認識が高まり、署名やカンパの協力もありました。
第四に、世論作りの大量宣伝が取り組まれています。
過去にない規模のビラの配布や、駅頭・地域宣伝行動が取り組まれています。世田谷区では、全区民宣伝ビラ(50万×4回)や週2回の駅頭宣伝、墨田区でも20万を超える全戸ビラが配布されています。「住民の過半数に知らせる」取り組みが多くの単組で取り組まれています。また、対区署名は、議会で不採択後も従来の規模をはるかに超えて進められています。
4.今後の取り組みの柱
1)職場から「本質を学ぶ」学習を
攻撃の手法は、目まぐるしく変化しています。変化のスピードも速くなっています。
(1) 職場の非常勤・臨時・パート労働者も一緒に、繰り返し「民営化の本質」を学ぶことが、保育労働者の確信を深めます。
(2) 保護者とともに、さらに学習や「保育を語るつどい」等を開き、保護者との共同を職場から追求します。
2)未組織の非常勤・臨時・パート労働者の組織化・共同の前進を
(1) 非常勤・臨時・パート労働者の要求実現のため組織化に積極的に取り組みます。非常勤・臨時・パート労働者は、地域の住民でもあり、取り組みの重要な担い手となる仲間です。懇談や共同学習を取り組みます。
(2) 非常勤・臨時・パート労働者は、民営化で雇い止め攻撃を受けます。雇い止め攻撃を打ち破り、雇用を継続させることも視野に入れ組織化することは、民営化後の保育園で労働組合を立ち上げる上でも重要です。
さらに、委託のプロポーザルの条件に、非常勤・臨時・パート労働者の雇用の継続と、労働条件の継承を入れさせることは、委託先の労働条件を向上させることにもつながり、公契約条例への前進ともなります。
3)職場から労働条件を守り、保育の質を高める要求運動を
職場では、「保育の質」が守られ高められているでしょうか。保育労働者は、退職不補充や人員増なしの事業拡大を迫られ、労働条件がきわめて厳しくなり、アンケートでは8割を超える労働者が心身ともにきつくなっているとしています。職場の状況と日常の保育の内容を検証し、配置基準の引き上げも展望しながら、必要な人員を確保する職場からの要求闘争を取り組むことが重要です。
4)保育所の増設などにより、待機児童解消のための取り組みの一層の強化を地域の要求を明らかにするため実態を把握し、保育関係団体と力をあわせ、保育所の新たな増設の取り組みを積極的に進めます。
5)保育における自治体実施責任を守るために、「都加算補助守れ」の運動を保育における自治体の実施責任を守るために、「都加算補助守れ」の運動を民間保育園とも共同して取り組みます。
5.具体的な取り組み
1)自治労連の学習リーフと東京独自の学習リーフを作成、活用し、職場・保護者との学習を深めます。
2)東京自治労連リストラ反対交流集会で、取り組みを交流し教訓を学び合います。
3)保育の市場化に拍車をかける「都加算補助」改悪を許さない共同の運動を全都及び地域から広げます。
4)公立保育園のあり方を考え、「こんな保育園をつくりたい」で保護者・民間保育園との懇談を広げます。
5)自治労連組織拡大リーフ(保育所用)を活用して、非常勤・臨時・パート労働者の組織化を早急に進めます。
6)公的福祉・保育を守る東京実行委員会や、自治体に働く保育労働者の東京集会実行委員会の取り組みを強化します。
以上