第3次指定管理者制度取り組み方針
…地方独立行政法人法など、他の自治体リストラツールにも触れて…
2004年10月6日 
東京自治労連中央執行委員会

  はじめに……地方自治法244条の2の改正に基づく「指定管理者制度」が施行されて1年以上が経過した。この制度は、今までの地方公共団体の管理の下で行われてきた「委託」から、民間企業を含めた団体に「使用許可」などの権限も含めて「代行」させることができるとしたものである。
 この間、東京自治労連は自治体リストラ闘争本部の下に「指定管理者制度等対策委員会」を設置し、昨年11月に「当面の方針」、本年3月に「第2次取り組み方針」を決定、「資料集」についても第4次まで発行し、取り組みを強化してきた。
 また、2月7日には福祉や医療、社会保障を中心にした「リストラ集会」、6月5日には東京自治労連として「第3回自治体リストラ反対交流集会」を開催し、学習と方針提起、交流を行ってきた。
 新設施設については法の施行以降、いつでも新制度に導入可能であり、既存の「公の施設」における経過措置もわずか3年であることから、各自治体で具体的な「条例」制定及び提案が急速にすすんでいる。
 具体的な取り組み方針については、既に「第2次方針」で示したところであるが、各自治体の動向など、情勢の変化が著しいことに加え、「自治体リストラ」攻撃の下で、住民サービス向上に向けた住民との共同が不可欠であり、広範な団体との共同及び労働組合組織の強化・拡大が重要であることが日増しに明らかとなっている。
 以下に、これらを強調し、新たな情勢の下で東京自治労連として取り組む「方針」を明らかにする。

  1.都内自治体の動向と私たちの取り組み

       (1) 東京都……第2期石原都政は昨年11月、「第2次都庁改革アクションプラン」を発表し、都政リストラを強行するための組織の再編や都政運営の手法を示した。それらにはNPMの考え方が強く表れていることは言うまでもない。その一つである「指定管理者制度」については、本年3月に「基本指針」を明らかにした。
 東京都には現在47の「東京都監理団体」(一般的に「自治体出資法人」と言われる団体のこと)があるが、旧「管理受託制度」の下で、「公の施設」を管理してきた監理団体では、「平成18年」に向けて大変な危機感を持って、新制度下でも管理を「代行」できるよう、企業イズムの徹底を図っている。
 
   1) 管理者制度第1号となった東部療育センターは、「社会福祉法人」に
 こうした情勢の下、現在江東区新砂に建設中で、「平成17年度」に開業する「東部療育センター」(重症心身障害児施設)について「指定管理者制度」を導入することを、2003年12月都議会において条例化し、本年3月の第1回定例会で「社会福祉施設法人 全国重症心身障害児(者)守る会」に「代行」を決定した。直営堅持は実現しなかったが、東京都が当初より「民間業者には『代行』させない」と表明し、営利企業の参入を阻止したという意味では意義あるものである。
 自治労連都庁職衛生局支部は6月8日、東京都健康局に対して10点にわたる「東部療育センターに対する指定管理者制度についての解明要求」を行い、同月29日に回答を得た。ここでは、同制度の民主的運営を求めるとともに、職員の賃金・労働条件にも注意を払っている。当局に対し、このような解明を含めた労使協議を追求することは極めて重要である。
    2) 小山内裏公園では「公園協会」が落選、民間企業に「代行」決定
 第2号は、八王子と町田市にまたがる多摩丘陵に、本年4月完成した都立公園「小山内裏公園」である。これまで都立公園の管理を一手に引き受けてきた監理団体「東京都公園協会」は危機感を表明していたとはいえ、内心では期待感を持って選考に臨んだと思われる。しかし結果は、日比谷アメニスグループに決定、公園協会は落選した。この事件は都庁の監理団体に衝撃を与えた。しかも、都が公園協会に対して「能力では劣っていなかった」と述べる一方で、日比谷アメニス決定の理由が「民間ならではの創意工夫」としたから、なおさらである。
 選考に応募したのは17団体、単独企業はほとんどなく、NPOも6団体あったことが特色である。都の予定金額を下回った3団体が2次審査に進出したが、日比谷アメニスが最低金額とは述べていない。東京都庁における民間企業を含んだ「選考」の第1号として、他の多くの監理団体への見せしめのために、「公園協会」は「落選」の苦汁を飲まされた可能性がある。
 都は今後、64カ所の都立公園を幾つかのグループに分けた上で、指定管理者制度を導入するとしているが、公園協会が当選するという保障はない。現在公園協会は、都からの派遣職員318名、固有職員473名を抱えており、派遣職員の引き上げ、固有職員のリストラが進行する危険がある。
   (2) 23区の動向とその特徴……多くの区がNPMに基づく新たな行革方針を発表している。また、下位方針として、「江東区アウトソーシング基本方針」「板橋区における指定管理者制度について」等、指定管理者制度を始めとしたリストラツールについて詳述したものを明らかにした自治体もある。
 指定管理者制度の導入に関しては、庁内紙「都政新報」(2004年6月  日付)が「すでに23区、34の施設で導入」と報道している。
 以下に、その一部ではあるが、特徴的な事例について紹介する。
    1) 「代行」企業との癒着が懸念される足立区文化芸術劇場
 足立区では、今年オープンする文化芸術劇場に「指定管理制度」を導入することを昨年12月議会で決定、本年3月議会で特定目的の株式会社「コミュニティ・アーツ」に「代行」を決定した。
 区議会資料によれば、区からの支出は施設建設費に加え、初年度のこけら落とし費用3億5000万円、監督料、館長料、宣伝費などが別枠で1億2500万円、会社運営のために無利子で2500万円の貸し付けも行うことが明らかとなっている。
 一方で、利用料収入は「コミュニティ・アーツ」にすべて入る。さらに会社が上げた利益は株主に配当される。区の施設であるにもかかわらず、区展や区の文化祭などでは膨大な利用料を払わなければならない。区民の税金を使って、こんな理不尽なことがあるであろうか。「コミュニティ・アーツ」の株主には鈴木区長を始め、現職区議等、自民党の有力者が名を連ねており、「公の施設」の代行企業として極めて問題がある。
    2) 闘争委員会と闘争方針を確立し、地域との共同で旺盛な宣伝活動を展開する江東区職労
 江東区は5月31日、「江東区アウトソーシング基本方針」を決定し、これまで手をつけてこなかった「児童館」「保育園」などの直営福祉施設を「公設民営化」または「民営化」し、区が果たすべき「公的責任」を大幅に後退させようとしている。
 これに対し、江東区職労は闘争委員会と闘争方針を確立し、具体的な取り組みを展開している。指定管理者制度問題では、区職労としての宣伝はもちろんだが、江東区労連として、自治体の公社、社協、外郭団体で働く労働者に向けて労働組合加入促進はがき行動を実施、10月2日にはスポーツ公社職員に対して「リーフ配布行動」を行った。こうした広範な団体との共同と組織強化の闘いが今、求められている。
    3) 墨田区の保育園で「代行」決定した法人には福祉保育労の組合が
 墨田区では、あおやぎ保育園と中川児童館に指定管理者制度が導入された。この場合、区内では実績のある「厚生館」という社会福祉法人に「代行」を決定したのだが、この法人には福祉保育労に組織されている労働組合がある。
 このことは、「代行組織(業者)」で働く労働者の雇用と賃金、労働条件を考える上で決定的に重要である。自治体労働組合としては共同の受け皿があることを重く見て、今後の取り組みを強化する必要がある。
 また、墨田区職労は区当局との交渉も旺盛に展開している。例えば、区職労の要求に応えて、6月には専門委員会交渉を行っているが、課題の一つとして「指定管理者制度」を挙げ、区当局から導入予定施設などについて回答を引き出している。
    4) 中野区保育園では区民運動の高揚により、1園は法人とするなど、貴重な成果
 中野区が32ある保育園のうち、宮園、宮ノ台の2園を「指定管理者制度」により民間企業に投げ出す方針を昨年11月に正式発表を行った。
 これに対して保育園に働く非常勤・パート職員で組織する公務公共一般が立ち上がり取り組みを開始した。その努力により、提案内容を全く知らされていなかった保護者及び地域住民からも「あまりに拙速である」との声が挙がり、闘いは大きく高揚した。
 残念ながら、指定管理者制度は導入されてしまったが、当初の2園とも民間企業という提案のうち、1園については社会福祉法人とすることとなった。また、保護者を交えた運営協議会を設置することなど、一定の民主的な成果を勝ち取ることができた。
    5) 文京区では、保育園の公設民営化が1年延期に
 文京では、「新行財政改革推進計画」に基づき、「保育園のあり方検討協議会」が設置され、このほど「最終報告」がまとめられた。先に出された「中間のまとめ」では、A意見として「地方独立行政法人化」、B意見として「直営」が提起されるなど、区当局の思惑通りに「リストラ計画」はすすまず、実施時期を1年延長し、引き続き「第2次協議会」で検討することとなった。

  2.具体的な取り組み方針

 (1) 労使協議の保障
 直営堅持を大前提としながら、当局に対して労使協議の保障を求めることが重要である。指定管理者制度に関して当局がどのようなことを検討しているのか、状況を明らかにさせることも必要である。自治体の正規職員だけでなく、公社・外郭団体の固有職員、パート、非常勤職員など、すべての労働者がこの制度の下で雇用と労働条件について重大な影響を受けるため、労働組合との協議は不可欠である。
 また、社会福祉法人や民間企業に「代行」が決まった場合でも、自治体の公的責任をより発揮させることが重要であり、この点でも労働組合との協議が必要である。
   (2) 民主的条例づくり条例などについて
 やむを得ず指定管理者制度に基づく場合でも、より民主的な条例づくりに向けて取り組む必要があり、当局との協議に加え、議会への働きかけも重要である。
    1) 公的責任を保障するためには、公社などの公的セクターに指定させることも有意義である。条例にそのことを明記することも可能であるし、「複数の公募」を原則としてはいるが、法に定めているものではなく、実績を尊重して、これまでの管理委託者を引き続き指定することももちろんかまわない。
    2) また、複数公募する場合でも、条例の中で対象を限定することにより、民間企業の参入を阻止することもできる。
    3) 指定に至る経過についても、民主的な制度を担保することを条例に明記することも可能である。選定委員会を設置し、恣意的な指定にならないよう、市民参加、情報の公開などを追求することが重要である。
    4) 法では兼業禁止規定がなく、首長や議員などの関与、癒着の温床となる危険性が懸念されるが、条例の中に兼業禁止規定を盛り込むことにより首長や議員などの関与を否定することも可能である。
    5) さらに、当局の条例案をチェックする際のポイントは以下の通りである。
     ・実績や専門性、サービスの質、継続性、安定性などを明確に位置づけること。
     ・職員の身分、賃金、労働条件などが安定的に確保されること。
     ・指定管理者としてふさわしいものがいない場合は直営で行えるような規定を設けさせること。
     ・施設運営への利用者、住民参加の仕組み、管理運営のチェックシステムを設定させること。
     ・既存の個人情報保護条例の改正、協定への明確化を図ること。
     ・使用料の範囲、算定方法、上限の適正化、減免規定の設定など。
   (3) 公的セクター職員の雇用・労働条件を守る闘いと組織の拡大強化の取り組み
 指定管理者制度の導入に伴い、自治体労働者の雇用や労働条件は重大な影響を被ることとなる。以下、事例別に見てみると、
    1) 自治体出資法人(東京都では監理団体、23区では公益法人など)に代行させる場合は、自治体からの派遣職員は引き上げ、固有職員とりわけ非常勤・パート労働者等の不安定雇用労働者の増大が図られる。ここでの労働条件と雇用を守る闘いが極めて重要となる。
    2) 民間企業に代行させる場合は、それまで直営であったならば、自治体の正規職員の引き上げが当然行われる。公的セクターに委託していたならば、正規職員の引き上げ、固有職員の雇い止めが生じる。もちろん、取り組みにより、当局の責任により、代行する民間企業に雇用を継承させることも重要である。
    3) 指定管理者制度の下では、公的セクターにおける取り組みが極めて重要となる。取り組みの基本は、「自治労連『指定管理者制度と緊急にどう闘うか』(改定版)」(15ページ)によるが、労働組合がない場合は労働組合を組織し、学習を足がかりにしながら、当局との交渉など取り組みを強化することとなる。
 労働組合がある場合は、当局との交渉、未組織労働者の組織化などの取り組みにより、雇用と労働条件を守る闘いを展開することが肝要である。
   (4) 訪問活動など大規模な宣伝活動により、広範な団体・個人との共同を
 拡大リストラ闘争本部を開催し、本部及び各単組において外郭団体を中心として広範な団体・個人に対する訪問活動を行う。
    1) 公の施設の管理を行っている団体に対して訪問活動を行う。
    2) そこで働く労働者に対して、宣伝活動を展開する。
    3) 都内の労働組合、民主団体に対して要請行動を行う。
    4) 都議会及び市区議会各会派に対して要請を行う。
    5) 「公の施設」利用者となる保護者、利用者、住民など、広範な団体・個人に対して宣伝活動を行う。
    6) 以上の行動のために必要な具体的な手だてについては、別途提起する。